2015 3.5 控訴に憤りを覚えます
どこからか沈丁花の香りが漂ってくる季節になりました。
沈丁花の香りをかぐと、何故だか「赤頭巾ちゃん気をつけて」が心の中に蘇ってきます。絵本の赤ずきんちゃんではなく、庄司薫さんの芥川賞をとった作品で
す。大学紛争が激しかったころ、東大がブロックアウトされて入試ができなかったことがありました。その当時のことを作者の心を通して描かれた作品で、何故
だかわかりませんが、春の陽気と夜の静けさのなかで、沈丁花とあの作品が思い出されるのです。
2月23日(月)に「教員採用不当解雇の取り消し」を求める裁判の判決が大分地方裁判所で行われました。
午後1時30分からの判決言い渡しでしたが、小法廷だったので35人しか傍聴席がありません。裁判所前には、寒さの中にもかかわらず、100人近い人が列を作っていました。
抽選がありましたが、やはり私は当たりませんでした。気がかりだったのは、原告のお母さんが、その日は一人でいらしていたことでした。心細い思いをしている彼女を一人にさせることが不安でした。
運がいいことに「平岩さんが傍聴したほうがいいでしょう。」と高田の方が私に傍聴券を譲ってくれ、私は、感謝しながら小法廷の席に着きました。
原告側の弁護士が入廷し、裁判長も入ってこられ、写真撮影がありました。その間、2分間は動いてはなりません。被告側の弁護士は、その時は入廷していませんでした。
石橋蓮司に似たその裁判長が、判決を読み上げました。
「処分を取り消すことを取り消す。」すなわち、採用取り消しを取り消す。ということです。原告の勝利です。
お母さんが、私に「わからない!意味が分からない!」と泣きながら訴えました。いつも不安と闘い、最悪のことを覚悟してきたから、そう思うのだと感じま
した。私も泣きながら「だから教育委員会の採用取り消しが、違法であって、6年前、採用になった時の状態に戻しなさい。と言っているんですよ。私たちが
勝ったんです。」と説明しました。
判決は、県教委に反省を求めるものだったと思います。倫理的な誤りを犯してはならないということだと思います。
喜びの後に訪れたのは、こんな当たり前のことを勝ち取るまでに、6年半かかったことに対する怒りでした。多くの時間と労力とお金をかけ、裁判を支えてきました。原告の置かれた不安定で安らぎのない生活を想うとき、怒りは倍増していきました。
しかし、翌日の新聞に書かれた教育長のコメントに唖然としました。「免許を持っているのならくじびきでもいいのか!」といったコメントは、行政のトップの言葉か。と情けなくなります。
2008年4月1日に教員として採用され、中学校1年生の担任として希望に燃えて仕事をしていました。8月30日、突然に県教委の幹部がやってきて「あ
なたは不正な加点があったから、自主退職か、採用取り消しを選んでください。期日は9月4日までです。」と告げられました。
奈落の底へ突き落されたようだったでしょう。「このまま、生徒の前に立ってもいいのか?」「家族の誰かが口利きをしたのか?」疑心難儀の日々を過ごし、「何も悪いことはしていない。採用取り消しは受け入れられない。」と考え、大分地方裁判所に提訴しました。
この一連のことを私はHPに「教育公務員の在り方は」と題して、以前に綴っています。
3月2日の教育委員会で、今回の判決を不服として、県教育委員会は、福岡高裁に控訴を決定しました。
行政の手続き上、控訴は考えられることです。それからは、逃げることはできません。
しかし、県教委は、判決内容をどう総括しているのかでしょうか。教育委員会ではどんな話し合いをしたのでしょうか。
県は、不正な加点をしているけれど、その背景は全く明らかにしていません。点数操作をした人は、特定していますが、何故そんなことをしたのか。誰がそれ
をさせたのか。更に、本人を含めて家族の口利きの有無も調査していません。もちろん、本人も家族も親族もそんな依頼をしていません。
教員採用試験は、地公法15条に沿って競争試験ではありません。能力実証主義です。仮に加点があったとしても、採用取り消しをしてはならない。と判決は
述べています。原告は、免許を持ち、長年臨時講師を続け、勤務にも本人の資質にも何も問題を指摘されず、仕事に取り組んできました。生徒と向き合い、とも
に笑い、喜び、涙を流しながら生徒に寄り添って、学校生活を過ごしてきました。
判決文には、原告に瑕疵は認められず、間違っていたのは、県教育委員会だと書かれています。採用取り消しが違法だと多面的に判断しています。いろいろな角度から県教委の間違いを指摘する内容です。
残念なことに、控訴は、県教委の権限で行われることで、議会の議決は求められません。今議会で議題になるのは、判決理由で示された国家賠償額(33万
円)の支払い命令が不服であるので、大分県が請求の棄却を訴える部分だけです。私たちは、会派で十分話し合い、この議案に反対することを決めました。
どうして、将来のある若者が、こんないびつな事件で翻弄されなければならないのでしょうか。
県教委が、2008年時点の背景や経緯を明らかにし、取り消し処分の違法性を認めるよう求めていきます。
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