この2週間せきが止まりません。
「絶対におかしい。病院に行くべきだ!」とつれあいからは叱られっぱなしですが、小心者の私は忙しさを口実に怖くて病院に行けません。
やっと県政報告(わたげ)を書き終えました。議会終了から22日も経っていました。書き始めると早いのですがどうしてこんなに時間がかかったのかしら?と考えてみました。県政報告は、字数にすると5000字くらいでまとめなければなりません。情報が多すぎるのです。欧州の写真は600枚もありました。要領よく必要なことを端的にまとめる。それがいかに大事かを思い知らされています。
2009.10.8 欧州旅行報告記A
競争やめたら世界一(フィンランドの教育を訪ねて)
訪れたのはラハティ市のティースマー公立学校です。小・中・高等学校が敷地内にあります。校長先生は、長身で髪を後ろで束ねとてもハンサムな方でした。団長としての挨拶を考えていましたがこの国では形式的な挨拶は必要とされていませんでした。
はじめに歴史の部屋で日本語でのVTRを使っての学校紹介にはびっくり。いかに日本からの視察団が多いかがわかります。神戸の武庫川女子高と姉妹校で交換留学生制度があるそうです。校長も3年前武庫川に行った時に、教室に40もの机が並んでいるのにびっくりしたそうです。
・教室は狭く25席が並んでいました
・小学校は、すべて英語で授業
・高校のクラス制度を廃止し、学生は200項目の中からカリキュラムを選ぶ
・高校の授業は6〜7時間、宿題はたくさん出る
・高校入試はなく中学の成績により自分で判断して入学を決める
・本は高いが図書館が無料なので家庭での読み聞かせが多く行われている
・ハンディキャップのある子には必ずサポートする人がつく
・落ちこぼれても落胆しない。その分手厚い教育をしてもらえるから
・最近は、大学よりも職業系に進むことに誇りを持つ生徒が増えた。その後、大学にも進学できる
 (机の数は25席)
 (教室表示は英語圏の国名)
 (休み時間は外に出される)
・給食は民営化されていて、1000人分を6名の調理員でまかなう
・献立は、パンとマーガリン、キャベツの刻んだもの、ちょっとしたミンチやマカロニなど半分出来上がったものを温めたり切ったりして並べる
・給食費は無料
・教員のモチベーションは高い
・採用されたら異動はない
・給料は少しずつ上がっていく。20年したらそこが最高
・できの悪い教師はいないが、もしいたら校長権限で勉強に行かせる
・初任者の給料は月に3000ユーロ(約40万5千円)
・職員会議は7週間に1度
 (給食室のカウンター)
 (職員室は休憩室)
国家教育委員会では、レオ・パプキンさんから2時間休みなく話を聞きました。レオさんは、大学で数学を教えていたそうです。ここで働く職員は300人。教育現場を知る必要性から元教員が多いそうです。レオさんのフィンランド語を通訳のゆうこさんが聞いて日本語で伝えるという作業はとても時間がかかりました。お聞きした内容は、すべて本で学んだことと同じでした。ですから質問の時間をセットしたかったのですが、遠く離れた国と事前の連絡はうまく取れず、バスの運転手さんの勤務時間の関係などから打ち切らざるをえませんでした。
・国家教育委員会は、教育省の下に位置している
・3年に一度、教育省と話し合う(質・理念・システム・自治体との関わり・教師を選ぶ基準など)
・学校の質については、抽出した学校の調査で調べる。全体の6%のみの調査
・それで満足する結果が出ているのでこれ以上やるつもりはない
・フィンランドの学校は平均150名の在籍
・1%の私立学校
・基本は家に近い所に通う(家から5km以上だとタクシーを用意する)
・できる子を育てるのではなく、できない子も同じように育てる
・おちこぼれをつくらない
・学校が中心になって細かいことは決める。教育委員会は口を出さない
・校長の権限は大きく、教員の採用は、校長が決める
・6歳児の修学前入学は、99、8%。遊び中心で、子どものできないところを見つける
・低学年は、一日4時間しか授業をしない
・夏休みは、2ヶ月間
・学校の運営費は、自治体が43%。国が57%。(地方税を払っているので運営できる)
 (国家教育委員会のロビー)
 (説明するレオさん)
等など、日本の教育との違いをまざまざと見せつけられました。エネルギー資源が乏しく森林ばかりの国だから「人」が資源なのです。それは、日本も同じ状況ですが、フィンランドの人口は550万人です。できない子の底上げをすることの重要性とそれができる環境を羨ましく思いました。
「テストをしない。そしてランキングリストも発表しない。それは、いい学校を発表すると、親は行かせたくなって差が開きすぎるから。教師もいい学校に行きたがるようになるから。」「これまで、それで成功してきたのだからこれからもそうやって行く。」「平等=貧富の差、男女の差をつくらないこと。だから学力によるクラス分けはしないのです。」と言われました。
人は国をかたちづくる財産だと捉え、30年やってきた結果、フィンランドは世界一の教育水準を持つ国になりました。
子どもたちに生きる力をつけさせたいとの願いは、日本もフィンランドも同じです。しかし、そこに近づくアプローチの仕方は、まったく異なっていることに気づきます。
最後にこんな質問をしてみました。
「教育する上で怒ったり悲しんだりすることがありますか?」
レオさんはこう答えました。
「もちろん悔しがったりしますが、30年という長い年月かけてやってきました。時代も変わって、学生も変わってその変化についていけないので、苦しんでいる先生もいます。教師は、自分の給料に満足はしていません。先生が、一番嬉しいのは、子どものわかった顔を見ることです。」
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