2012.5.12 デンマークの報告A
車に乗ると、エアコンが必要なくらい暑い日が続いていましたが、今日は風が爽やか過ぎてなんだか風邪をひきそうな感じです。
先週から学校回りをしています。大分市内の中学校は、5月19日の体育祭に向けて練習が始まっていました。全体練習が砂埃の舞う運動場で行われています。係会議のために生徒が放課後慌ただしく移動していました。
小学校でも、耐震工事や秋の研究発表のために5月末から6月初めに運動会をするところは、学年ごとの練習が始まっていました。「台風の目」や「組み体操」をやっているのですが、子どもたちはまだ課題が受け止められていなくて時間がかかりそうです。でも、これが2週間、3週間経つうちに形作られていきます。子どもたちの持つ底知れないパワーとそれを引き出し支えていく教師集団の力があるからです。
ある小学校に伺ったら、昼休みにサッカーをしていた1年生に優しい声で「こんにちは」と声をかけられました。ある中学校では、門を開けようと車を止めたら、急いで走って来た女子生徒が笑顔で門を開けてくれました。そんなことを経験しながら私の心は癒される気がしました。
今日は「教育研究組織者集会」がありました。子どもの実態から出発し、仲間と一緒に研究し、子どもたちに還していくという教研は教職員に与えられた権利です。たくさんの仲間に会えて私は元気をもらいました。
――――デンマークの高齢者福祉――――
○「施設」依存でもなく「在宅」偏重でもない高齢者福祉
○地域で最後まで住み続けるということ
○高福祉高負担を選んだ国
デンマークの高齢者福祉制度は、100年に及ぶ長い歴史の中で改善が繰り返されてきました。戦後の経済成長を背景に日本で言う「特別養護老人ホーム」がたくさん建設されました。しかし、1987年にその建設は凍結されました。その理由は、過剰なケアの中で高齢者は、自らの生活力を剥がれ、「ミニ病院」「死の待合室」のようになったとの反省からだそうです。施設でケアサービスを行う介護施設から、住居と必要なサービスを合わせた介護住宅に変わっています。それによって生活を基盤にした自立支援型の住宅政策が進んでいます。
高齢者センター(特養と高齢者専用住宅、デイサービスセンターの集合体)を訪問しました。所長のアナグレーテさんは、体格の良い、気さくな方でした。案内された部屋には林檎ケーキとお茶が用意されていて、「さあ、まず召し上がれ」と誘われました。デンマークでは、どこに伺ってもテーブルにはパンや飲み物、果物、ケーキが置かれていて驚きです。
・特養相当部分:入居者56人。ひとりに対し約40平方メートルの住居スペース(トイレ・シャワー付)
・高齢者専用住宅:100戸 約65平方メートルの専用住居スペース(2間、トイレ・シャワー・テラス付)
・デイセンター 利用者40人
・職員は約100人。介護現場では社会保健介護士(SSA)と社会福祉ヘルパー(SSH)が殆ど。
・入居の手続きは入所者のことを知っている審査官が審査委員会の中で行って結果を出します。所長には決定権がありません。
・住宅には死ぬまで住むことができ、SOS装置が付いています。
・介護にかかる費用は無料ですが、生活するための費用は自分で払います。住宅援助費用があります。
・入居者は生活面、経済面に満足しているので遠慮せずに自分の意見を言います。
・日本のような職員不足はありません。フルタイムが週37時間。日本のようなローテーションはなく、日勤のみ。夜勤のみと分かれています。組合がしっかり機能しています。
・「高齢者虐待は?」と尋ねたら「ない!」と一言。そんなことがあったらすぐクビだそうです。
・認知症の人も出てくるけれど後見人制度があるのでしっかり見守ることができます。
・介護福祉士の給料は18万クローネ(約36万円)その中から税金を40%ひかれます。
・福祉予算は削られていますが、利用者からの不満は出ていないそうです。
 「センターの食堂」 |
 「職員の仮眠室」 |
 「介護者が腰を痛めないように配慮された機器」 |
 「特養部分に入居するおじいちゃんたちは午後の語らい」 |
 「一人で住むノアさん(86歳)と」 |
 「ノアさんの部屋はビューティフル」 |
施設や高齢者住居に入居しない自宅に住む高齢者も大勢います。その人たちを支えているのは、家族ではなく、24時間体制のヘルパーです。サービスは質の高いものでなければなりません。そのためにそれぞれの自治体には60歳以上の人で構成される「高齢者委員会」があります。この人たちが行政と高齢者本人との橋渡しをしています。
高齢者福祉と同じように障がい者福祉も進んでいます。保護される立場ではなく支援を受けながら生活する人という位置づけです。
施設に入所するという形ではなく、親からも自立して生活しています。デンマークでは、何らかの事情で働くことができなくなった人に、早期年金制度があります。日本でいう民生委員の立場の人が2000人に一人の割合で支援の必要な人のケアを行っていますが、必要でない人には誰がその仕事を担っているかはわかりません。後見人制度がきちんとしているので、早期年金をもらいながら自立しています。通訳してくれた銭本さんのお隣にも知的障がい者が住んでいるということでした。
デンマークの高福祉を維持しているのは、高い税負担です。消費税は25%。国民負担の税率は73、8%(日本は38、4%)
私はこれまで「高福祉低負担」ではなく、「高福祉応分負担」を願って来ました。デンマークの「高福祉高負担」を目の当たりにして考え続けています。
次回は、デンマークの国民小学校を紹介します。
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