1979年は、ちょっとしたギリシャ(エーゲ海)ブームだった。
池田満寿夫監督、脚本の映画『エーゲ海に捧ぐ』が話題となり、ジュディ・オングが歌う『魅せられて』が流行した。テレビのスイッチを入れれば、「Wind
is blowing from the Aegean 女は海 〜 ♪ 」という印象深い歌詞とともに、鳥の翼を広げたような白いドレスで歌う彼女を目にすることが多かった。
翌々年の夏、私はエーゲ海の青い海と島々に立ち並ぶ白い建物に憧れて、ギリシャに旅立った。当時は若気の至りというか、怖いもの知らずで、1泊1,000円くらいの安いホステル(相部屋でシャワー、トイレが共用)を泊まり歩いた。たまには、タベルナ(レストラン)でワインを飲みながらのギリシャ料理と、濃厚なグリーク・コーヒを味わいながら、リッチな気分を楽しんでいた。
ギリシャには夏休みを過ごすため、ヨーロッパ各地から老若男女が訪れ、富裕層やそうでもない人も、それぞれに応じたバカンスを楽しんでいた。彼らの休暇の過ごし方を目の当たりにして、「果して、日本人は、彼らのような楽しみ方が出来るだろうか・・・?」と思った。当時、高度成長期の日本では長時間労働があたりまえで、世界中から「働きアリ」、「エコノミックアニマル」と呼ばれていた。
余談であるが、水で割ると白く濁る不思議なギリシャの酒「Ouzo(ウゾー)」は、未だに封を切らずに我が家の棚に飾られている。