チャレンジ!祖母傾連峰完全縦走 
                    
                                     2005.10.9 尾平越より祖母主稜

その4  どうしても継ぎたい! 三ツ尾から坊主ルート、傾、尾平越へ
                     高瀬正人

○順走、逆走について 名称についてのあれこれ
 狭間兄が今回の祖母傾完全縦走をこれほど思いをこめかつセンセーショナルに取り上げるとは思ってもみなかった。彼の思い、そして彼からの「祖母、傾連峰の縦走を経験せずば大分の岳人に非ず」の言、挑発された私も、相棒として重い筆を取らねばならぬことになった。完全縦走の定義についてはその1で解説されているが、ここで述べられていないことは、順走、逆走についてである。この事については当然、祖母側から登り始め傾に至る経路を順走、反対に傾側から登り始める方を逆走とした。

 この縦走についてはほとんどの人が祖母、傾縦走と祖母を先に言う。これは当然この山域の盟主が祖母山でありかつ北に位置していてアプローチとしても竹田側の神原からが最も良く登られ、親しまれているからだろう。この順走、逆走については特に異論はないと思われる。

 しかし、「祖母、傾連峰完全縦走」・・・この名称で残念なことは、障子尾根の存在が希薄であることだ。「祖母、傾馬蹄形縦走」・・・岳人ならルートは理解できるが、一般の人には無理だ。この縦走で順、逆を問わず、最も重要なポイントとしての前障子、大障子の存在がない。なんとかうまいネーミングはないものか、考えてみたのだが?

 「障、祖、傾完全縦走」、「奥岳、尾平回廊縦走」、「障子、祖母、傾連峰縦走」どうもしっくりこない。やはり「祖母、傾連峰完全縦走」に落ち着くのか???要検討。

◯第1回チャレンジ9/23〜24敗退の悔しさ
 私としてはかなり気合を入れてチャレンジしたつもりであったが、残念ながら、第1回目は栗秋の予想が見事に的中、50%にて敗退した。断念したくだりについて狭間は「有元ヲ見捨テル二忍ビズ」のこころと書いたが、実は私もかなりバテバテの状態であった。トレーニングが十分でないのに、気力だけが先行、空回り状態、予想を超える暑さで古祖母を下る急坂では、ふくらはぎ、大腿がつりかけていたのだ。強力高瀬どころか、「とてもじゃないが、無理だよ1泊2日で完全縦走なんて」、「俺たちゃーは還暦間近だ、孫もいるし無理、無理」、「早くバテテヨ、狭間リーダー」・・・弱気の虫が伝染していた。

 しかしながら翌日奥嶽川で沐浴し静かに今回の山行を振り返るころには早くも次回への雪辱の気持ちがみなぎってきた。「今回は狭間リーダーがバテタのだ。俺ではない、もし俺1人だったら?」人の心は移ろい易すく、身勝手なものだ。

◯自分の力を試してみよう
 前回の不完全燃焼登山に、その後日々祖母、傾の稜線が頭の中から離れず、悶々としていた。激しい登下降に、延々とつらなる40kmの変化に富む山並みに心を奪われていた。厳しさ故にやりがいのある、充実した山行を求めるのだ。

 狭間とは連絡をとらず、今回は単独で現在の力を試し、如いては目指す日帰り完全縦走の可能性を探ろうともくろむ。さらに前回の続きでは面白くない。未知なる部分も少しは遺しておきたい。ということで、本谷〜尾平間のブナ林水場の確認を主目的に逆コースを辿ることとした。今回はほんとに偵察、単独で気は楽だ。

                 
                           早朝の傾坊主稜線

〇予想以上に快調 豊栄鉱山登山口〜傾山
 折からの連休で登山口は県外ナンバーの車多し。6時頃ではあるが既に数パーテイが準備中。掲示板に三ツ尾からの水場ルートは倒木で通行不可とある。しょうがない今日は坊主ルートだ。観音滝を左に見て枯葉の小道を急ぐ。「観音滝にこだわる」狭間の弁によると私はいつも歩を急ぎ情緒のない奴だと書かれている。少しそのきらいはあるのは自分も認める。私は登高会に入るまで、ほとんど単独で行動していた。単独の場合その不安感からどうしても目的地優先になりがちでありまた、スピード=安全につながると考えていた。その癖がなかなか抜けないのかもしれない。更に狭間岳兄ほどの感受性に乏しいのかもしれない。目的のために多少の犠牲はやむを得ぬ。楽しむ登山はもう少し先に。今は自分の力を試すときだ。そう思っている。

 先行する2パーテイを追い越し木々の間より、岩峰三つ坊主を右手に見るころ程なく三ツ尾の稜線に出た。ここまで所要時間1時間30分。コースタイムでは2時間20分。今日の私はこのタイムを気にしている。いかに無理せず早く登り、早く下るか、これが日帰り完全縦走を可能にする。

  
        三ツ尾 大白谷合流点                      吉作坊主

 程なく、水場ルートとの別れに出た。躊躇なく右手、坊主ルートを辿る。この道を行くのは何年ぶりだろう?確か登高会に入り、松尾谷から吉作カンテを経て傾本峰に登った32年前か?思い出せない。狭間のアルツハイマー予備軍に負けず劣らず、この私も最近物忘れが激しくなってきた。前回のチャレンジで尾平越よりトンネル口への下降で日没となり、途中で、朝出がけに間違いなく入れたヘッドランプを探すがみつからない。とうとう狭間のライトひとつで厳しい下降を強いられた。後でテントで見直すとなんと違うチャック口を開け、そこしかないと思い込んでいた。ライトはあった。年をとると思い込みが激しくなる。何事も冷静にと思うのだが、これもご愛嬌で許して狭間先輩。

 台風の影響での倒木が行く手を遮る。幾たびか迂回し、或いは股越し、2級程度の岩稜を登下降し、快適な坊主ルートをゆく。傾本峰着。ここまで3時間10分。坊主ルートでの標準コースタイムは4時間50分。天空は晴天。祖母への稜線が見えた。今まで傾へ何度も登ったが今日は違う。視線がおのずと祖母への稜線の先に向く。あの右手に遠く連なる障子尾根まで。何たる距離か、何たるギザギザか。果たして1日でこの今立っている足元の頂までこれるのか?「悪い冗談だよな。狭間さん」・・・しばしため息、大休止。

                
                     九折越、笠松、本谷、古祖母の稜線

                
                         後傾より祖母方面

○ついでに行ってしまえ尾平越まで
 傾本峰より九折からの登山者とすれ違いながら、九折越へ。ここは快適だ。まだ緑の残るふかふかの野芝の上にドンと腰を下ろし、秋色濃い二ツ坊主、三ツ坊主の岩峰群を眺める。

 まだ岩登りがやりたい。日本のクラッシックコース、剣の八ツ峰、前穂の北尾根、ぜひ体力の健在なうちにと想いを馳せながら、しばし垂壁を追う。

 今日は疲れていない。よし尾平越まで行こう。

                
                       九折越から傾稜線

 笠松、更に本谷山は特に厳しい登りもなく余裕をもって通過、程なくブナ林の水場に出た。

 ここは前回、テントを張る予定だった所。周囲はゆるやかな稜線上のブナ林に囲まれルートより30mほど下ったところに、黒い直径5センチ位のホースに導かれた冷水がほとばしっている。ここではテント5〜6張りは可能だ。何よりも周囲のブナ林が気持ち良く、ここで対面の障子尾根を眺め、新緑と頬を撫でる薫風さらに三つ葉ツツジのほの赤い群落を想像する。絶対春にまたここで。

 本谷山からは少しの急な下降はあるが総じて、緩やかな下り、何より祖母の主稜線と障子尾根の眺望が良い快適な下りだ。最後の急坂を下ると尾平越だ。

  
           ブナ林の水場                       ブナ林広場

○もしかすると、いけるかも
 ここまで所要時間7時間丁度。今回の偵察では日帰り完全縦走の可能性を探ることであった。ちなみに前年5月に完全縦走を達成したピナクル山の会はここまで6時間36分で通過している。彼らは、傾の登りは水場ルートを取っているので、今回私は、ほぼ同じペースで来ている。さて残りの体力はどうか、下肢の疲れはあまり感じない。気力も十分。

 これからのトレーニングで念願の日帰り完全縦走は十分可能だ!

 狭間さん、いけまっせこれは!

                 
                       尾平越より大障子の稜線

○さて、帰りが大変だ
 前回、暗闇の中、ランプひとつで疲れた体にむちうち、悪戦苦闘しながら下った悪路(このルートは危険だ。転落の可能性が縦走路より高い)を慎重に下る。トンネルより尾平のバス停まで近道を行けば40分。これから車を駐車した豊栄鉱山登山口まで歩かねばと思うと疲れがどっと出た。幸い10分ほど歩いたところで車を捕まえ、上畑まで乗車できた。

 今回の偵察山行は、十分な成果を得た。おそらく来年春4〜5月に再度チャレンジすることになるだろうが、勝算は十分にあり、請うご期待!おゆぴにすと諸兄!(つづく) (その3に戻る)

                 
                          尾平バス停時刻表


(コースタイム)九折登山口6:30→三ツ尾8:00→坊主ルート→傾山9:40

→九折越10:40→笠松山11:30→本谷山12:20→尾平越13:30→尾平バス停

14:30→上畑(ヒッチハイク)14:50→九折登山口15:35

チャレンジ!祖母傾連峰完全縦走 その1 祖母傾への熱き想い
チャレンジ!祖母傾連峰完全縦走 その2 遠かった傾山
チャレンジ!祖母傾連峰完全縦走 その3 2005秋、傾山&山手本谷再訪
チャレンジ!祖母傾連峰完全縦走 その4  どうしても継ぎたい! 三ツ尾から坊主ルート、傾、尾平越へ
チャレンジ!祖母傾連峰完全縦走 その5 大分登高会の末裔ついに完全縦走なる!
チャレンジ!祖母傾連峰完全縦走 その6 遠かった祖母山
チャレンジ!祖母傾連峰完全縦走 その7 リベンジ成る

               おゆぴにすとトップページへ     大分の山目次へ