2006年10月 南アルプス、甲斐駒黒戸尾根、仙丈、鳳凰三山縦走報告
その5 高瀬正人
2006年 10月6〜10日
○甲斐駒山頂、雷鳥の歓迎あれど、視界なし
七丈第一小屋を過ぎ、森林限界を越えた。とたんに、北側黄連谷より烈風が襲う。思わず、よろけ踏ん張る。ヤバイ。これは引き返せという、サインか?
躊躇していると、後方より、例の京都のペアーが同じようによろけながら登ってくる。
これより彼らの後ろにつき、ともすれば弱気になる気持ちにカツを入れながら、少しずつ高度を稼ぐ。七合目の御来光場の石の鳥居跡を過ぎ、彼らは、私の登ってくるのを待ってくれ、声をかけてくれた。彼らは赤石沢ダイヤモンドAフランケの取り付きへ下りるのだ。
更にすぐ後ろに単独のクライマーが続いて下りていった。何も見えず、ただ黄蓮谷からの烈風に戸惑っている私は少し惨めな気分であった。気を取り直し山頂を目指す。
急傾斜の鎖場を幾度か越えたが、1箇所だけは非常にきびしい乗り越えがあった。岩場は雨で滑り易く、背中のザックの重さに思わず、必死でくさりにしがみついた。
まもなく、稜線に氷のかたまりがみえた。気温はかなり下がっている。とその横に雷鳥を発見。私を歓迎してくれた。さらに登りつめるとガスの中から人の声が聞こえ、わらじのぶらさがった山頂の祠が見えた。甲斐駒ケ岳2966m烈風と深いガスの中、ついに黒戸尾根を登り終えた。13時15分、所要8時間15分、予定より45分早い頂だった。

山頂わらじの祠 ガスの中甲斐駒ガ岳山頂
○烈風は止まず、雨の中、駒津はまだか
花崗岩の白砂を敷き詰めた、日本アルプスで一番美しいと深田久弥に言わしめた山頂は残念ながら、味わえることなく、落胆の気持ちで下降、駒津峰へ、さらに予定の双児山経由を変更し、仙水小屋を目指す。
山頂を降りる頃より雨、この頃より9時間の行動時間と黒戸を越えた安堵感からか、雨衣で更に行動を制限され、足取りは重い。六方石から稜線に戻り、今度は、烈風と雨、滑り易い岩場が連続する。小さなギヤップの連続だが、疲れた体にボデイブロウのようにこたえる。駒津はまだか!晴れていれば指呼の間のこの稜線が地獄の稜線に思えてきた。
苦闘の1時間、ようやく駒津峰2740mに到着。ようやく今日のメドがついた。駒津峰からの下降はすべりやすい。数人のパーテイを追い越し、待望の仙水峠だ。ここは早川尾根の登り口となる。晴天なら、甲斐駒摩利支天の絶好の展望台だ。
これより歩きづらい岩道を仙水小屋へ。樹林帯に入り、ようやく烈風が収まり、安堵する。
仙水小屋は小さな小屋だ。残念ながら今日は満員。雨のなか、ツエルトを張る気になれず、駒仙小屋へ更に、もうひとふん張りする。雨で増水した北沢の渓谷を見ながら、ようやく駒仙小屋到着。どうやら空きがありそうである。16時30分、初日の行動時間11時間30分。厳しい条件の中であったがほぼ予定どおりの行動であった。
コースタイム
尾白登山口5:00〜五合目小屋9:40〜七丈小屋10:45〜甲斐駒ケ岳山頂13:15〜駒津峰14:45〜仙水峠15:35〜駒仙小屋16:30 (行動時間11時間30分)
(つづく)
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