2006年10月 南アルプス、甲斐駒黒戸尾根、仙丈、鳳凰三山縦走報告
                        その2
   高瀬正人

                                2006年 10月6〜10日

 甲斐駒なら黒戸尾根を行くぞ
 甲斐駒山頂だけを対象にすれば北沢峠から入ると当然楽に登れ時間も節約できる。しかし、それでは黄蓮谷へのアプローチが見えない。Aフランケへの取っ付きもわからないではないか。

もし今度、おゆぴにすとで赤蜘蛛ルートを登る時に困るぞ!ましてや、かつて南アルプス北部への登竜門といわれ、幾多の先輩岳人を育てた黒戸尾根。日本アルプスの三大急登(他にブナ立尾根、赤岩尾根)であり、標高差2200メートル。深田久弥は日本百名山のなかで、曰く「日本アルプスで一番つらい登りは、この甲斐駒ヶ岳の表参道かもしれない」。
  
            
                       甲斐駒ヶ岳黒戸尾根

 この長大な厳しい登りのため最近はめっきり登山者が少なくなったらしい。白旗史朗曰く「甲斐駒の表登山道として、この黒戸尾根を登って頂上に立ったということが、まず南アルプス登山を立派に成し遂げたことにも通ずるのだ」。

 厳しさ、苦しさの後に得られる充実感・・・黒戸尾根はおゆぴにすとが標榜するクラシックでロマンチシズムにあふれる登山道の一つなのである。ここを登らずしてどこを行くのだ。今の自分の力を試すには絶好の舞台ぞ。その日本一つらいとやらの登りをじっくり味わってみよう。そう決めた。

○あとは黒戸次第の仙丈、鳳凰三山(今ならいける、今しか行けない)
 甲斐駒への想い、特に黒戸尾根への思い入れが深く、計画段階で後の行程はすべて黒戸尾根次第となる。もしスムーズに黒戸が登れたら次はカールで有名な仙丈岳を目指す。次に仙水峠まで戻り、甲斐駒の赤石沢(A、Bフランケ)摩利支天の岩壁の展望と白鳳三山の展望に優れている早川尾根、鳳凰三山を経て夜叉神峠を下る。15年前の狭間兄のルートをちょうど逆走するかたちとなる。

 
対正面に対峙する北岳バットレスはどんな感じで望見できるのか?ウエストンが初登攀した地蔵岳のオベリスクとは?観音岳周辺の白砂青松に紅葉の彩りとは?夜叉神からの白鳳三山は?さまざまな思いを馳せながら、今一度、おゆぴにすと6号に掲載された、その記録を辿ってみた。今なら、行ける。今しか行けない。その記録を読むたびに私はそう確信していた。(つづく)(その1に戻る)

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