形成外科
再建術の詳細
①背中を使う手術:広背筋皮弁乳房再建についてご説明します
せなかを使う手術(広背筋皮弁)
この方法は、背中の筋肉と皮膚、脂肪をつかって、乳房の高まりをつくります。
背中の筋肉と皮膚、脂肪を薄くはがし方向を変えて脇の下を通して乳房部に移動させます。
一般にはこれだけではボリュームが足りず、同時にシリコンインプラントを併用しますが、当科では脂肪をうまくたくさん持ってくるのでシリコンを使わずに乳房を再建しています!
この手術では筋肉が血液の流れに重要な役割を果たします。よって筋肉を鍛えておく必要があります。日常的に体操やスポーツをされることをお勧めします。
太りすぎの脂肪やトレーニングされていない筋肉は血行がわるく、筋肉と脂肪を移動させたのちに脂肪とろけてしまう場合があります。
利点
自分の肉をつかって乳房をつくります。当院では同時に人工乳房のシリコンを併用することなく乳房を再建するので人工乳房に関する問題がおきません。
背中を使うので、手術ののち妊娠や出産を希望されている方に適しています。
背中の筋肉は他にもあるので、術後、日常生活に支障がでることもありません。水泳やゴルフ、テニスも可能です。
欠点
背中に傷痕ができます。すこし腰が細くなりますが、かえってこれが喜ばれることもあります。
もともとの乳房がかなり大きく垂れ下がっている場合は、後に乳輪と乳頭を作成する時に、もともとの残された乳房を形よく縮小することで十分再建することが可能です。
手術では入院を必要とします。
治療のながれ
手術当日の2日前に入院をしていただき、再建する乳房の正確な設計図をつくります。
↓
背中の筋肉をつかって乳房の高まりを作成する手術をおこないます。(約6時間くらいの全身麻酔の手術:必ず入院が必要)
↓
背中の筋肉をもらったところに浸出液(体の水分)がたまらないようドレーン(細い管)を留置し続けます。(約3週間程度の入院)
多くの方は手術翌日より歩行を行っていただいております。
↓
外来で定期診察を行います。
約1年程度経過したところで、つくった乳房の傷が安定したら、乳輪や乳頭の再建を行うことができます。
↓
傷が安定すれば半年から1年に1回程度、外来にて経過の診察を行います。
再建術の詳細
②人工物を使う手術:ティッシューエキスパンダ‐とシリコンインプラントについてご説明します
人工物を使う手術:人工乳房(ティッシューエキスパンダーとコヒーシブ・シリコンインプラント)
この方法は、最終的にはシリコンの人工物(こんにゃくのようなもの)を入れることによって乳房の再建を行います。
人工物を入れるにあたり、その入れる位置の皮膚に引き伸ばされる力がかかります。乳がんの手術を受けられた患者様は、手術の傷あとや放射線治療により皮膚にダメージを強く受けていることがあり、無理に人工物を入れると、傷んだ風船をふくらませると破裂してしまうように、人工物が飛び出てしまう可能性もあります。
よって、この再建方法はある程度、胸の皮膚や脂肪が厚く残っている方に向いています。
利点
乳房切除の傷跡を利用して再建を行うことができるので新たな傷跡ができることが少ないという利点があります。
もし乳がんのしこりが再発したとしても、人工物は乳房よりもずっと深い層に埋め込むため、しこりは乳房の高まりの表面など、人工物以外の部位に見つけられます。
欠点
入れる人工物(シリコンインプラント)は10~20年で劣化する、といわれており、その頃に入れ替えを必要とする可能性もあります。
異物を体内に入れる再建術のため感染に注意をする必要があります。
体質によっては、入れた人工物によりアレルギー反応を起こすことがあります。また、アレルギーとは性質が異なりますが、シリコンインプラントの周囲にカプセルと呼ばれる硬い膜が形成され、この膜が高度に形成されると変形をきたす可能性があります。
ティッシューエキスパンダーを挿入中には、ティッシューエキスパンダーに金属のパーツが使われているので、その間MRIの検査を行うことができません。
治療のながれ
ティッシューエキスパンダーと呼ばれる袋を乳房を再建場所に挿入する手術を行います。(1時間ほどの全身麻酔の手術:日帰り、もしくは入院)
↓
その後、約2~4週間ごとに通院していただき、すこしづつティッシューエキスパンダーに水を入れて皮膚を膨らませます。
↓
十分に膨らませたのち、3~6か月待って安定したところで水の入っているティッシューエキスパンダーをインプラントに入れ替えます。(このとき同時に乳輪乳頭を作成することができます)
(2~3時間の全身麻酔の手術:日帰り手術)
↓
傷が安定すれば半年から1年に1回程度の診察(定期診察)を行います。
↑このページのはじめに戻る