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2007年12月1日 わが青春のロック黄金狂時代

70年代を振り返ってみると・・・東郷かおる子「わが青春のロック黄金狂時代」

音楽雑誌、「ミュージック・ライフ」は、70年代から80年代にかけて、洋楽の情報を知る数少ない手段の一つでした。

その、「ミュージック・ライフ」の元編集長の東郷かおる子さんが、自らインタビューしたミュージシャン達の印象や、自身の仕事について書かれたのが本書です。

私は、ディープ・パープルやレインボウで活躍した、リッチー・ブラックモアについて書かれていたからこそ、購入を決めたのですが、その他のミュージシャンについても、楽しく読むことができました。

スコットランド訛りでほとんど意味が取れなかったロッド・スチュワートのインタビューや、自信なげなエリック・クラプトンなど、驚きと納得の連続です。

ページ数の都合もあり、一人ひとりのミュージシャンへ割かれるページは、ごく少ないものだし、各ミュージシャンの近くで仕事をしていた人物による文章の方が、より細かな情報を知ることができるのでしょうが、個人的には、これだけのボリュームでも、十分に楽しめました。

それと、ミュージシャンについてだけでなく、70年代の、音楽全般や出版社の状況も感じられ、それも、面白く感じました。

いつの間にか廃刊になっていた「ミュージック・ライフ」でしたが、現在の音楽シーンへの一つの通過点として重要な役割を果たしたことは、間違いないでしょう。

2007年11月1日 人間は動物である。ただし・・・・・・

爆笑問題のニッポンの教養・・・爆笑問題+山岸俊男「人間は動物である。ただし・・・・・・」

日本は、今まで安心社会であったと言う事は、確かにそうなのだろうと感じます。

社会全体が監視する社会、お互いをよく知ったもの同士で成り立つ社会と言い直すこともできます。

それに対し、アメリカが、信頼社会であったと言う事も、同様にそうなのだろうと感じます。

さまざまな民族から成り立つゆえに、信頼というキーワードが人々の結びつきを強めるのです。

そういわれて納得するとはいえ、日本の安心社会の「安心」は、「信頼」とは相反するものであると言われて、「あれっ」と思います。安心しているということは、他の人たちを信頼しているということになるのではないのか?そのような疑問に陥ります。

この「安心」と「信頼」との違いを理解する事がこの書物を理解する核心になりそうです。

また、日本の安心社会やアメリカの信頼社会が成立したのが、民族性によるものというよりも、社会のあり方の影響の方が大きいのではという主張も興味深く感じます。

この書籍は、NHKで放送されている、お笑いコンビの爆笑問題と大学の研究者との対談を活字化したものです。したがって、この本に登場する山岸さんの考えをより深く知るためには、山岸さん御自身の著書を読まれることをお勧めします。

それにしても、爆笑問題のお二人の突っ込みも面白いが、なんといっても、今までの価値観を覆すような面白い研究が行われているということを知ることができて、この本を手にして本当によかったと思います。

また、大学は、決して、無駄な存在ではなく、研究機関として、今まさに生きている存在なのだとも感じます。

2007年9月1日 スティーブ・ジョブズ神の交渉術

または、悪魔の交渉術・・・竹内 一正「スティーブ・ジョブズ神の交渉術」

「アメリカ人でも引いてしまうほど規格外」なスティーブ・ジョブズのビジネス交渉術についてまとめた書籍です。

スティーブ・ジョブズは、マッキントッシュやiPodなどを開発・販売しているアップル社のCEOです。

彼は、これまで、マックやiPodなどの革新的な製品の開発にかかわり、それらを成功させています。その成功には、日本人の常識では考えられない、非人間的とも言える交渉術が大きく影響しているということですが、実現した事の大きさ、困難さから想像しても、それは恐らくその通りでしょう。

様々な書籍で、スティーブ・ジョブズのことについては語られていますが、このように、一まとめにされると、余りの凄まじさに、あきれるばかりです。「アメリカ人でも引いてしまうほど規格外」と言われても、アメリカ人に知り合いがいないので、イメージは出来ませんが、少なくとも、一般的な日本人の感覚からは、かなりかけ離れている事がうかがわれます。

そういった意味では、役に立つビジネス書というよりは、読んで面白い書籍という事になるでしょう。

著者の竹内 一正さんは、日本のアップル・コンピュータ社にも務めていたこともあり、今回のような伝聞をまとめた書籍よりも、竹内さんの実体験に基づいた「松下で呆れアップルで仰天したこと」の方が、面白いようにも思います。

また、アップル社に関しては、様々な関係者の書籍が出ているので、そちらの方がより詳細で、面白く、感動的だとも思います。正直な所、どんなドラマより、美しく、驚きに満ちています。

そう言うと、この書籍の価値が低くなりますが、スティーブ・ジョブズという特異な個性に、しかも、その交渉術に的を絞ったという点で、切り口の上手さというのは感じます。もちろん、アップル社の社風を知っているからこそ書けることもあるのかもしれません。

2007年8月1日 フューチャリスト宣言

まずは、前向きに捉えよう・・・梅田 望夫、茂木 健一郎「フューチャリスト宣言」

リアル社会に対し、Web社会をどの様に捉えるのかは、人それぞれです。でも、Web社会を便利に利用しつつも、マイナス面へスポットライトが当たることが多いようにも感じます。

例えば、学校裏サイトにしてもそうですし、ネット社会には、問題になることが多いようです。でもそれは、人間の負の側面が現れたに過ぎません。

それでは、人間に正の側面がないかといえば、そうではありません。それは、知に対する欲求です。

いままで、それは、学校が担う事になっていました。けれども、学校は、その機能を上手く果たす事ができなかったのではないでしょうか。ネット社会は、その知への欲求を満たすメディアとしての役割を担いつつあるように思います。

このような正の側面にスポットライトをあてたのが、本書の内容です。

実際には、それ以外に、様々な内容が取り上げられていて、興味深く読むことが出来ました。この本のすばらしい点は、読んでいて、色々な発想が生まれてくることです。そういった本こそ、読む価値がある、そのように感じます。

ただ、Web社会に対し、あまりに楽天的にすら感じるので、また異なる視点からの検討も必要なようにも感じます。

2007年5月1日 緊急版 年収120万円時代

夢のもてない時代に・・・森永 卓郎「緊急版 年収120万円時代-生き抜くための知恵と工夫」

この本に書かれているように、消費税は引き上げなくても大丈夫、日本のデフレは政府によって作られたものであるという主張が正しいのかどうかを判断することは、私には出来ません。

ただ、実感として、本書にもあるように、金持ちが優遇され、そうでない人が虐げられる社会になりつつあると感じていますし、国の財政を立て直したいのなら、金持ちの税を上げれば良いという意見には賛同します。

今の日本に夢がもてないのは、貧しい人が安心して暮らしていける社会ではないという事です。このまま行けば、さらに貧しい人は増えるし、それに伴い、犯罪も増えていくように思います。

以前にも書いたように、アメリカの富豪が行うボランティア活動は、お金の分配の偏りが一つの原因だと感じています。それなら、最初から、ある程度のお金の分配を上手く考えればいいのです。それをやれるのは、国というものの本来の働きではないでしょうか。

この本の中でなかなか面白かったのは、アメリカ流のお金こそ全てという人たちは、東京などの大都市に特区を作って集めれば良いという意見です。

そうして、それ以外の都市に、特区から取った税を分配していくというのです。

それなら、金儲けこそ人生の目標という人たちも満足だし、そうでない人たちも、安心して暮らせます。アメリカ流の生き方は、そっちで勝手にやってくれるのですから、こちらが相手にあわせる必要はありません。

まあ、仮定の話ですから、現実的ではありませんが。

2007年1月1日 古武術に学ぶ身体操法

古武術という異世界・・・甲野 善紀 「古武術に学ぶ身体操法」

著者の事は、テレビで見て、不思議な技を持った人がいるものだと思っていました。まるで、魔法を見せられているようなと言えばいいのでしょうか。

ちょっとした動きで、相手をねじ伏せてしまうその技は、打ち合わせでもしてやっているようにも感じます。ちょっと肩を触れただけで相手が床に倒れこむのですから、「本当なのか」と思わざるを得ません。

そして、その不思議な感覚は、本を読んだ後でも、変わりはありません。つまり、目にしても本を読んでも分からないという事です。

そういう不思議な現象の元になる、著者の言う「捻らない、ねじらない、ためない」という動きは、かつて、日本人(武士)が行っていた動きという事ですが、西洋流の体の動かし方が主流となると共に、日本人に忘れられていったものだそうです。

つまり、かつては出来ていた人がいたのに、今では殆どその動きが出来る人がいないために、理解しようにも理解できないのだと思います。もちろん、西洋流の考え方が、その理解を妨げているのも確かでしょう。

興味深いのは、この本の内容が本当なら、史実に忠実に作ると、時代劇などの登場人物の動きが、かなり異なるものになるだろうという事です。まだ、見た事のない世界がかつて存在していた、そう思うだけでも楽しいのではないかと思います。

2007年7月15日追記:こうしなければならないという命令に従うのではなく、自分自身の要求に向かい、結論に向けて自ら苦しむ。そういった指摘は、大いに参考になります。意味もない苦労を自慢するのではなく、何かを生み出す上での苦労こそ大切なのだと思います。