わさだ工務店在籍時に設計
近年、ほぼ毎日様々な媒体で高気密、高断熱、高性能、IoT、AIと言う言葉を耳にします。確かに1年中一定の温度、湿度を保ててしかもその操作はセンサーやAIがしてくれるのですから、私たちは何もしなくてもこの快適な室内環境を1年中手に入れることができるのです。それでも何か大切なものを見失っているような気がするのです。私たちの住む地域ではまだ多くの自然が残っています。晴れた日の朝は窓を開けて外の空気を取り込みませんか。そうすれば風の香り土のにおい、木々のにおいだって感じれるはずです。夏の夕暮れにふと通り抜けるあの風を心地よいと思うはずです。冬の朝の凛とした冷たい風で家の中の空気を入れ替えたあの爽快感はやはりそれも心地よいと言えるのではないでしょうか。私たちが深呼吸するように家も呼吸する。その当たり前の住まいを私たちは提案したいと考えています。
日本の住宅に「縁」という空間がありますが、これは内部と外部の中間的な空間であり、そこに室内と庭との自由な交流(遊び、ゆとり)が生まれます。この曖昧な「間」のお陰で季節の移り変わりは室内に緩やかに反映され、住人はその場所の季節を五感で感じることができるのだと思います。私たちは過剰な設備による高気密、高断熱住宅を目指すのではなく、四季の変化を受け止めながら、自然の風の心地よさや、陽の温もりを感じられる空間を追求し、ご提案します。
玄関は住人の日々の出入り口であると同時に客人、友人を一番初めに迎えるおもてなしとしての空間でもあります。家の威厳を示す場所ではなく、しかしゆとりのあるおもてなし空間として、おもてなしとは想像力ですから、来客を想像しながら迎える見送ると言うことも日々の楽しみの一つとしてみてはいかがでしょうか。
私たちの住んでいる日本の長年にわたって風土と文化によって培われてきた様々な建築から学ぶことが必要なのだとあらためて感じています。それと同時に夏は通気性が良く、冬は気密性と断熱性の高い家。家の構造で暑さ寒さを取り除き、季節を感じながら快適に暮らしていく豊かな生活のための家づくりは十分可能だと考えています。