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開演前

どのようなコンサートになるのかが分からなかったというのが、正直な所でした。そして、その思いは、このコンサートに足を運んだ殆ど全ての人に当てはまっていたのではないでしょうか。なぜなら、今回のツアーが、ブラックモアズ・ナイトとしての初めてのコンサートとなるからです。

ブラックモアズ・ナイトのCDの発売、それに伴う雑誌へのインタビュー、そして、リッチーとキャンディスへのインタヴューとビデオ・クリップを収めたビデオの発売等、ヒントとなる情報源は多かったものの、それを元にした予想は、ものの見事に外れてしまうことになるのです。

さて、私の座席は、ステージに向かって、左側、会場全体からすると真ん中程の所でした。(右斜め後ろの、割合と近い場所に、演奏のミキシングをしている人がいました。)

コンサート開始前、会場は小さいのに、空席が見られ(開始時にはちゃんと埋まっていましたが)、大丈夫なのかなと不安になりました。来ている客層に関しては、意外というかやはりというか、女性の姿も多く見られました。それと、二十代後半から3・40代の男性、そして、背広姿の男性も見られました。度胆を抜かれたのは、黒いルーズソックスを履いた女の子がいたこと。う~ん。

前座

「前座なんていらないのに。」という声の聞かれる中、前座の演奏が始まりました。

彼等は、テレビ・ドラマの主題歌を歌っているという事でした。もっとも、私は、ドラマを見ないので、さっぱり分かりませんでしたが。それでも、彼等の熱演もあり、演奏も後半に差し掛かる頃には結構盛り上がっていました。

いよいよコンサート

ダス・ガイヤー・シュワッサー・ハウフェン(ルネサンス時代の音楽を奏でるミュージシャン達)による演奏がテープで流れ、コンサートのスタートが告げられました。最初にその演奏を聞いた時には、シンセによる演奏を収録したものかと思ったのですが、後に、雑誌の記事によって、彼等による演奏である事が確認されました。途中、「スモーク・オン・ザ・ウォーター」と「ブラック・ナイト」のリフの部分をミックスした様なメロディーが折り込まれ、会場の笑いを誘っていました。

コンサートスタート

キャンディスが、リッチーの奏でるギターをバックに、静かに歌い始めます。2人による短い前奏が終了すると、バンドも加わり、オープニング・ナンバー、「シャドー・オブ・ザ・ムーン」がスタートしました。因に、曲の最初に使われた部分は、後に、ブラックモアズ・ナイト3枚目のアルバム、「ファイアーズ・アット・ミッドナイト」に収録されたものとほぼ同じです。

コンサートが開始する直前、会場前席の男性から、「エレキを持っている」という声が上がりました。

けれども、その奏でる音は、紛れもなくアコースティック・ギターのサウンドであり、どうやら、テレキャスターと同じデザインのエレアコをエレクトリック・ギターと勘違いしたのでしょう。

ビデオの映像では、椅子に座って演奏していたので、てっきり同じ様なスタイルで演奏するのかと思いきや、メンバー全員立って演奏していました。(勿論、ドラマーは除きます。)

ステージ左から、キーボーディストのジョー・ジェイムズ、ベーシストのミック・カルヴィーノ、アコースティック・ギターとバックアップ・ヴォーカルのジェシー・ヘインズ、ドラムスのジョン・オーライリー、そして、キャンディス、リッチーと並んでいました。

1曲目の終了

曲が終了してから、「イエー」という声が、最前列から聞こえました。これも、後から知ったことなのですが、なんと、この声の主は、リッチー自身だったのです。(バンドに喝を入れる為だと言う事なのだが・・・)

更に驚きがもうひとつ。リッチーが演奏終了とともに片膝をつき、右手を会場に差し出したのです。最初、観客は余りの意外な行動にどうすればいいのか判断に困っていましたが、ちょっとの間をおいて、最前列にいた男性が駆け寄り、握手をしていました。

新曲の披露

アルバム、「シャドー・オブ・ザ・ムーン」自体がバラード中心だった訳ですが、会場を盛り上げる意味もあってか、アップ・テンポな新曲、「アンダー・ア・ヴァイオレット・ムーン」が披露されました。

最初は、静かな演奏で始まりましたが、途中からドラムが加わり、さらに、曲の最後では、観客に「ヘイ!」と言わせて大盛り上がりです。でも、初のツアーにもかかわらず、新曲が披露されるということに、リッチーのやる気が伝わって来ました。曲の出来もよく、次のアルバムの方向性や出来に期待出来るものを感じました。

リクエスト

突然、リッチーから「Your request !」(多分)との声が客席にかかりました。しかも、マイクを通さずに。これには、驚きです。

会場自体が小さいので、時々、リッチーとキャンディスの2人の会話が、マイクを通す事なく聞こえていたのですが、いきなりのリクエストを求めるお言葉。

即座に、「キャッチ・ザ・レインボー」(レインボーの代表的バラード・ナンバーの一つ)の声が上がりましたが、なぜかこれは無視して、次の曲へと移って行きました。(あまり静かな曲ばかりを演奏したくないという意図があったらしい・・・)

レインボーのナンバー

コンサートも半ば頃に、キャンディスから、レインボーの曲を演奏する事が告げられました。

その曲とは、レインボーのデビュー・アルバムに収録されていた、「王様の神殿」と、「16世紀のグリーンスリーヴス」でした。会場から、暖かい拍手が起こったのは当然として、その演奏も、ブラックモアズ・ナイト仕様になっていて、とても素晴らしいものでした。

コンサートの終了

コンサートの最後は、「ザ・クロック・ティックス・オン」でした。バンドの演奏も一体となり、大いに盛り上がりました。まさに、コンサートの最後を飾るのに最適な楽曲だと言えるでしょう。

アンコール

アンコールを求める声の中、会場に、いきなりストラトキャスターの音が鳴り響きました。

そして演奏されたのが、レインボーのレパートリーとしても有名な「スティル・アイム・サッド」(再結成レインボーヴァージョン)でした。

前の方の席にいた女の子が、飛び上がって喜んでいます。会場のボルテージは一気に上がり、後ろの座席にいた観客もステージに駆け寄ります。

リッチーも、近年になく動きがよく、プレー、アクションともに申し分ありません。

コンサート・ツアーの名前が、「アコースティック・エレクトリック・ツアー」となってはいたのですが、まさか、レインボーのナンバーを演奏するとは・・・。

その他、「ライティング・オン・ザ・ウォール」なども演奏されましたが、何と言ってもアンコールのハイライトは、「マン・オン・ザ・シルバー・マウンテン(銀嶺の覇者)」でしょう。

ステージからメンバーが去り、再びアンコールを求める声の中、リッチーだけが現れて「マン・オン・ザ・シルヴァー・マウンテン」のリフを弾き始めたのです。他のメンバーは、慌ててステージのそでから自分のポジションに駆け付け演奏を始めます。レインボーを象徴するであろうこの曲をこのコンサートで聴けるとは、夢にも思っていなかったので、感動もひとしおです。コンサート自体は、レインボーの「ストリート・オブ・ドリームズ」で終り、私は、主催者側の、すぐに退席する様にとの声に促されて、会場を後にしました。

演奏曲目

  • Shadow Of The Moon
  • Be Mine Tonight
  • Play Minstrel Play
  • St.Teresa
  • Minstrel Hall
  • Under A Violet Moon
  • The Temple Of The King
  • 16th Century Greensleeves
  • Memmingen
  • Greensleeves
  • Renaissance Fair
  • Mond Tanz
  • No Second Chance
  • The Clock Ticks On
  • Still I'm Sad(アンコール)
  • Difficult To Cure
  • Writing On The Wall
  • Man On The Silver Mountain
  • Street Of Dreams

酒井康氏

このコンサートに関し、「炎」1998年1月号に興味深い記事がのっていました。

それは、この広島公演の直前に、リッチーがコンサート・ツアーに同行していた記者(酒井康氏)に、それまでのコンサートについて、意見を求めていたということです。

彼が指摘したのは、ディープ・パープルを象徴する作品、「スモーク・オン・ザ・ウォーター」の演奏をしない方がいいという事、アンコールの曲順を「スティル・アイム・サッド~ディフィカルト・トゥ-・キュア~キーボード・ソロ~ライティング・オン・ザ・ウォール」にした方がいいという事、そして、「16世紀のグリーンスリーヴス」の演奏に関してです(リフ中心の楽曲の為、ブラックモアズ・ナイトには相応しくないのでは、でも、外してしまうのも惜しいというのが、酒井氏の意見)。リッチーは、それらの意見を受けて、コンサートの構成を手直ししたという事です。

曲数という事でいえば、初日の公演の方が多いのですが、選曲やアレンジ等の完成度からいえば、酒井氏の意見を反映した広島公演の方がよかったのではないでしょうか。

会場の空席について

他の会場では、割合と観客の入りが悪かったと聞いています。その事について、よく解釈すれば、コアなリッチー・ファンが集まったという事で、これは、私も同意見です。同雑誌には、「リッチーのファンだ、彼のギター・プレイが大好きだと言っていた連中の半分が嘘のファンだった」と怒っていたファンもいたことが書かれていました。確かに、分からないでもない発言です。

アンコールについて

アンコールに関しては、嬉しい誤算とも言えるのですが、この編成でレインボーの楽曲をやるのはな~というのが、私の感想です。やっぱり、ブラックモアズ・ナイトの楽曲を聞きに来ているのであって、レインボーの楽曲をそのままのアレンジで演奏するのは意図が異なるのではと思うのです。キャンディスのボーカルも、必ずしもはまっているとは思えませんし・・・。でも、観客の盛り上がり方を見ると、この時点での観客の多くが求めている音楽が、レインボーの楽曲であるのは事実であると思うのです。