大鋸、小鋸から夏木へ

 前回の九重・岩井川岳もそうだが、まだほかにも気になる未踏査のルートがいろいろな山域にある。夏木山から犬流越の間の大鋸小鋸がその一つ。ほかにも地元大分で気になる山やコースは沢山あるが、体力など考えると最優先するコース。高瀬と登る約束はいったんは無期延期かと思っていたのだが、「別院での岩登りにお付き合いいただきたい。が、その前に懸案の大鋸小鋸を片付けないと」と、思いがけずも、今回実現の運びとなった。

11月12日 曇りのち晴れ
 午前7時前に明野で高瀬を拾って藤河内渓谷の駐車場に着いたのが8時20分すぎ。いきなり反省点になるが、今回は下調べなしとか他人任せとか、危機管理の甘さとか、過去の反省がちっとも活かされないことが多かった。

 まずその一つとして、想定外なことに藤河内橋の真ん中に「路面流出の為通行止 大分森林管理署」とありロープが張られていて、登山口までの約5kmを1時間以上もかけて歩く破目になったこと。加えてもう一つ、高瀬との久しぶりの山行とあって林道を歩いている間、話がはずみ気が付いたら犬流越への登山口を素通りしてしまったこと。結局犬流越への登山口を登り始めたのが11時近くになっていた。高瀬:「注意はしてたけど経験者が居るので安心してた」、私:「この計画の言い出しっぺに任せっきり、単独行ならそれなりに下調べもし注意力を集中させたのに」

         
             通行止めにガックリ                クマ注意の警告も

 さて、林道から登山道に入るといきなり急登が始まる。「体調不良に付き云々・・・」とか言ってたくせに、ザイルやツェルトの入った大きなザックを背負ったわりには高瀬はどんどん登っていく。離されるのも癪なのでかなり無理して追随したため、のっけから相当脚力を消耗した。この時期、頂稜部はすでに落葉しているのは承知していたものの稜線に至る登山道は紅葉の真っ盛りと期待していたのに、時期が外れたのか今年の特徴なのか、今一つぱっとせず残念。

       
          紅葉は今一つ                            犬流越までは急登の連続

 犬流越からの、待望の岩稜は、加藤さんによるとハシゴが落ちているとか。万一に備えて今回高瀬がザイルを持参した。大小4つほどのピーク越えの間、二人とも10kg程のザックで気は抜けないものの、技術的にさほどの難しい個所はなかった。が、アップダウンは予想以上で犬流越までの急登を飛ばした疲労がたたり、それに相変わらずの高瀬の早いペースもあり結構堪えた。「何が体調が今一つすぐれず、じゃ!『昨年の笠ヶ岳以来未だ本調子にならず云々』などとよう言うたもんじゃ」と吐き捨てる私。

      

 それでも各ピークでは束の間の休息を得、檜山や、傾山から祖母山、木山内岳、桑原山などの展望にひと時の安らぎを得ることができた。ここのところ近場では九重、宝満山など賑わった山が多かっただけに、森羅万象の不可思議に触れる悦びとでも言おうか、深山幽谷に我々二人だけが身を置き共有することのできる感覚を味わった。

            
               鋸尾根のピークから最奥に祖母、天狗、烏帽子などを望む

 そして、犬流越から約2時間弱の所要で夏木登山口からの登山道に合流。この稜線最後、大鋸の、まさに鋸のようなリッジではちょっと真顔になりました、少なくとも私は。高瀬はせっかく持参したザイルを使わずじまいに終わることにちょっぴり残念そう。想定外に多くの時間を食わなければ、ここら辺りで、昔取った杵柄、“華麗なザイルワーク”で遊びたかったろうに。

 夏木山の静かな山頂で、狭間家特製の雑煮に下鼓を打ちながら、小一時間ほどのんびり過ごす。今日は林道の通行止めに加えて登山口を通り過ぎるなどで、当初予定より3時間以上下がっているが、いつもの単独行と違い頼もしいパートナーが居るので暗くなる前に林道まで下りられれば良しとしようと、既に傾き沈みかけた太陽、時間が大して気にならない。「やっぱ独りより仲間内同士の登山がええ」としみじみ思う。

       
               夏木山山頂にて(雑煮をつくる狭間、くつろぐ高瀬)

 午後3時を少し回ったところで下山開始。急坂を膝に気を使いながら1時間20分ほどで林道に出、1時間15分ほど薄暗い林道を歩いて藤河内渓谷駐車場着。全行程9時間17分。久々に良く歩いた。

それにしても、祖母傾から大崩などこの一帯は相変わらず山深い。九重があれだけの喧騒なのに、夏木から木山内一帯は我々を含め本日わずか2パーティの入山。山の深さにおいて明らかに格段上だ。妙にベテランぶって油断すると途端に大きなしっぺ返しを食うかもしれない。もちろん、ツェルト、炊事用具など含めこの時期のこの山に入るにあたっての備えには必要以上に怠りないつもりではあったが。仲間が居ることの安心感から今回気が緩んだことは確かである。反省点多々ありの山行であった。

 さて、次回高瀬との山行は「高崎山別院 失われた岩壁 第二次RCCじゃなかった大分登高会の青春群像を求めて」乞うご期待(2011.11.13,狭間記)

(コースタイム)
藤河内渓谷駐車場8:37→夏木山登山口9:50→犬流越登山口10:51→犬流越12:00→夏木山山頂14:15〜15:03→夏木登山口16:28→藤河内渓谷駐車場17:50

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