おおいた日本酒文化研究会 第87回きき酒例会

〜 純米吟醸バラエティと、復活の米大分三井で醸す酒 〜


お酒研第87回例会は久しぶり大分県産酒3銘柄 

日 時 2014年5月10日(土)18時30分 開会
会 場 いかや 大分市中央町4-2-27 097−540−5402 
会 費 6000円 
テーマ 純米吟醸バラエティと、復活の米大分三井で醸す酒 
参加者 25人 


お酒研の「例会」は、原則として春夏秋冬と年4回の開催を目標にしていますが、春は新酒のシーズンと言いながら意外と選定が難しく、考えているうちに時期を逸することもあります。今回はおよそ10年ぶりに幹事を担当したM氏の選酒で、「純米吟醸のあれこれ」と「大分三井」という米を使ったお酒を中心に楽しもうと言うことになりました。       

いちおう「お酒研の例会」でもありますから、ただ飲むのでは無くやはり少しは「お勉強」しようというわけで、今回もM幹事が資料を作ってくれました。毎回の事ながら日本酒に詳しい方からまったくの初心者までいるわけで、資料もどのあたりのレベルを想定するか意外と大変なのです。 特に今回は「大分三井」というあまり一般的で無い米がテーマになっていることもあって、初心者には少しわかりづらい説明になったかもしれません。
その、お勉強の資料はM氏作成によるこちらのPDFファイルを使用しました。興味のある方はご覧下さい。
というわけで、今回はM幹事が駆け回って11銘柄を揃えました。
すべて大分・別府市内の酒販店で入手です。
今回も壮観です。


開運 鍋島 豊潤 鷹来屋 三井の寿 伊予賀儀屋 玉川 杉勇 阿櫻 東鶴 ちえびじん

今回のお酒の詳細一覧

   銘柄 特定名称 使用米・精米歩合 その他
開運 伝 波瀬正吉 24BY 純米大吟醸 山田錦40/35% 土井酒造場 静岡  
鍋島 25BY 純米大吟醸 山田錦45% 富久千代酒造 佐賀 火入れ
豊潤 大分三井 辛口 特別純米 大分三井60% 小松酒造場 大分  
鷹来屋 大分三井 純米吟醸 山田錦55/大分三井50% 浜嶋酒造 大分  
三井の寿 大分三井 純米吟醸 大分三井60% 井上合名 福岡  
伊予賀儀屋 松山三井 純米吟醸 松山三井50% 成龍酒造 愛媛 火入れ
玉川 玉龍 山廃生原酒 純米大吟醸 山田錦50% 木下酒造 京都  
杉勇 雄町 生もと原酒生 純米吟醸 雄町50% 蕨岡酒造場 山形 山形酵母
阿櫻 無濾過生原酒 純米吟醸 美郷錦50% 阿櫻酒造 秋田 秋田酵母
10 東鶴 生 荒走り 純米吟醸 山田錦55% 東鶴酒造 佐賀  
11 ちえびじん 生 純米吟醸 山田錦55% 中野酒造 大分  
今回の中で初顔は「伊予賀儀屋(いよかぎや)」と「阿櫻(あざくら)」の2銘柄。

最初に乾杯を「開運」でして、あとは上記の順番・・のはずでしたが、「豊潤」の到着が遅れて若干前後したものの、大きな問題では無いので表は予定通りの順番としてあります。なおお燗用の湯煎鍋の用意はしていましたが、全員に燗酒をまわす事はせず、好きな人が勝手につけて飲んで下さい・・というスタンスでした。けっこう皆さんそれぞれグループで燗するなどして楽しんでいました。

なお、上記項目のうち「使用米・精米歩合」で40/35%となっているのは、麹米40%・掛米35%の意味です。

お酒研第87回きき酒例会リポート

( 「お酒研」としては第2回となりますが、過去の記録からの連続性を考慮して87回としてあります )

会場は去年の忘年会に続いて「いかや」です

会場は大分市中心部の竹町通りの西出口すぐ、「いか料理専門店」のいかやさんで12月に続いて2回目の開催となりました。

毎回の悩みは「会場」で、お酒持ち込みではあるし、卓上に持参のマイグラスを広げるだけのスペースも欲しいしで、特に参加者が20人を超すとなると、どこにするか頭を痛めるところです。
その点ここ「いかや」は2階に広い座敷があるので、写真のようにゆったりと座れました。ここでの開催が多くなりそうです。

「いかや」は当然ながらいか料理専門店

今回の会場の「いかや」はその名の通りいか料理の専門店(もちろんいか以外の料理もできますが)なので、この写真のようにいか刺しのいかは透明でまだ生きています。

足?の部分を箸でつつくと、うねうねっと動くのですよ。すごいです。

料理はこのほかシマアジの刺身やいかすみクリームコロッケなどで、量的には十分。日本酒にも良く合う。

やはりさすがの「波瀬正吉」

波瀬正吉杜氏はもう5年ほど前に亡くなったが、そのチームが波瀬杜氏の指導を受け継いで作り続けているという「伝 波瀬正吉」、さすがでした。

「鍋島」も良かったのですが、「伝波瀬正吉」のあとではちと旗色が悪い。価格差以上に引き離された印象。「鍋島」はむしろ純米クラスの方がC/Pが良いような気がしますね。

「豊潤」プラス12という辛口ながら、スペックほどの辛口には感じませんでしたが、まだ少し若すぎるのか私の好みとは方向が異なるという印象。

「大分三井」「松山三井」やっぱり似ている

実際には「鷹来屋」が「鍋島」のあとになったのですが、すっきりしたバランスの良い吟醸で決して「鍋島」に負けてないなと思いました。ただ、私はもう少ししっかり味のある方が好みなので・・・・。

「三井の寿」は味の傾向としては「豊潤」と同傾向で、日本酒度的にはすごい違いなのに舌の上ではそう変わらない印象というのが不思議。度数がやや低いせいか味コクともに乏しい感じで手が伸びませんでした。

「伊予賀儀屋」も同じような印象。飲みやすいのは飲みやすいがおとなしくてあまり個性が感じられないという印象で物足りない。

力強さは負けない「玉川」「杉勇」良い勝負

日本酒はそれぞれ個性の主張があってこそ面白いと思っているもので、「玉川」は毎回楽しみではあるのです。今回も、冷やで良し燗つけて良しの重量級大吟醸ですが、燗つけても重たくなくするっと飲めるのです。

「杉勇」はしっかり「雄町」でした。生酒なのに燗つけて旨かった。ただし多少パンチの効いた重たい酒質なので量は飲めないですね。

「阿櫻」初登場ですがけっこう好評でした。そこそこ香りがありきれいな味でしかもふくらみがある、いかにも秋田の酒と言うべきですか。

県産酒「ちえびじん」に人気

佐賀の「東鶴」は造りが100石と言いますから、今回の中では最小の蔵でしょうね。それでやっていけるのか心配になるほどです。味の方は古き良き佐賀の味・・という感じでやや甘口ながらベタつかずすっきりしています。

「ちえびじん」はこのところ急速に人気が出ているようですが、予期した以上に良かったです。程良い甘口でしっかり酸もあって、度数がやや高めのせいか味のふくらみもあるバランスの良い味吟醸です。もしかして今回一番手が伸びたかも。

うわばみ組の密談

この会では、お酒をひとりで抱え込まないこと・・・を原則にしていて、ひと回りしたら展示用テーブルに戻して並べておくこと・・にしています。
だから2杯目が要るならお酒のところまで行って注いで戻る・・というのが基本なのですが、お酒の前に座り込んで飲むという・・・なるほどその手があったかということですね。

最近女性の参加者が増えているのですが、それに従って消費量も増えていることは確かです。つまり・・・うわばみが多い。


では例によって、それぞれのお酒についての私の独断的・個人的感想をひとことだけ
(後半は単なるヨッパライになって、いささか記憶の混乱もあるかもしれません)


銘柄 わたしのひとこと
開運 柔らかな芳香がふわっと広がり乾杯が待ち遠しかった、味はさすがというほかない
鍋島 開運のあとで損したが、すっきりきれいな大吟醸、ただ鍋島らしさはあまり無い感じ
豊潤 かなり辛口ですがそこそこ味もあるので飲みやすいものの、まだ若すぎるという印象
鷹来屋 いかにもすっきりきれいな純米吟醸という感じで、米のせいか豊潤にも似ている
三井の寿 これも豊潤と同傾向の酒と感じたが、コクや味のふくらみが無くあまり手が出なかった
伊予賀儀屋 バランスは悪くなく飲みやすいが、いささか穏やかすぎて個性に乏しい感じがある
玉川 いかにも玉川・・だが山廃のわりにすっきり軽快感もあり、燗つけるとなかなか旨い
杉勇 生もとというよりしっかり雄町の味がするのが個性か、これも燗つけると実に旨い
阿櫻 香りよくバランス良し、やや甘口に感じましたが酸もしっかりある感じで燗も良さそう
東鶴 生酒のせいかかなり甘口に感じましたがいかにも佐賀の酒という印象、けっこう好みの味
ちえびじん ひらがなちえびじんは最近県外では人気銘柄とか、やや甘口ながらバランス良く好み

まとめとして・・・今回はM幹事の選酒でしたが良く考えられていて、もとよりいわゆる「ハズレ」はありませんでした。

「伝・波瀬正吉」はさすが!と言うべきクリア感と力強さのバランス、間違いなくこの中で頭ひとつ抜けていましたね。

今回も順番をつけるのは難しいですが、やはり「波瀬正吉」のきれいさ、うまさのバランスの良さは強く印象に残っていますし、次いで「杉勇」「玉川」、そして「東鶴」「阿櫻」というあたりが好ましいと思いました。
特に燗をつけてみると、やはり「杉勇」「玉川」の濃淳な旨みがぐっと広がって力強く、どちらも私好みでした。

また、「ちえびじん」はほどほどの甘口でしっかり酸もあり、以前に飲んだよりもずっとバランスが良くなった印象で、今回の県産酒3銘柄の中では一番の好みでしたし、全体でも中位以上には位置すると感じました。今後に期待です。

「大分三井」または「松山三井」を使った「豊潤」など4銘柄は、スペック的にはかなりの違いがあるのですが感覚的にはよく似ているという印象を持ちました。全体にやや辛口でキレの良い仕上がり・・・と思いましたが、いずれも味の奥行きが乏しいと感じたのはまだ若すぎるのかもしれません。「豊潤」も燗をつけるとまあまあだったので、秋以降にまた飲んでみましょう。

(補足)

資料にもありますが、「大分三井」という米はもともと福岡県三井郡に由来し先祖は「神力」の系統です。このため、「三井の寿」が「大分三井」を使っているのは「里帰り」とも言えます。これが愛媛に渡って「松山三井」になるわけですが、その「松山三井」の一方の親にあたる「近畿25号」ですが、これも実は「神力」の系統だそうで、つまり父方も母方も「神力」系ということになるわけです。ただ、「神力」は現在熊本や兵庫、福井などで少量生産されていますが、同じ「神力」という名前ながら別々に系統化されてほとんど別物だとか。
「雄町」にしろ「神力」にしろ、もともとは飯米として広がったものなんですけどね。閑話休題

実は、今回もっともアルコール度数が高かったのは「玉川」と「杉勇」の17度〜18度。ついで「東鶴」16.5度、「開運」と「阿櫻」が16度〜17度でした。
もっとも低かったのは「三井の寿」の15度ついで「伊予賀儀屋」の15度〜16度でしたが、私の好みの上下関係はほぼアルコール度数の高低と一致しています。面白いと思いました。

なお私は昔から、日本酒のアルコール度数は最低でも16度以上、17度ぐらいが望ましいと主張しているところです。
ただし18度以上になると、それだけだと飲み詰まるかもしれませんが・・。

加水して飲み競べるとわかるのですが、0.5度の違いでもけっこう味の差が出ます。





前回は2次会で飲み過ぎて完全ヨッパライになりデジカメに残っている自らの醜態にしばし硬直したので、
今回は飲み過ぎないようひたすら自律し、ちゃんと「100円バス」で無事帰りました・・・。
しかし、そうなるとそれはそれで物足りない・・・のは当然といえば当然か。

さて次は、毎年恒例になった「真夏の燗酒大会」8月29日開催




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