第37回きき酒会 2000年5月11日(木)


会場 ろばた焼はしもと

大分市中央町 2−6−24
Tel 097−536−4597

会費 6000円
開会 19時00分

テーマ・「同じ蔵のランク違い・米違い飲みくらべ」
参加者 19人


第37回・きき酒対象酒

  銘柄 種別 蔵名・所在 入手価格 備考
1 鷹来屋 大吟醸 浜嶋酒造・大分県緒方町 500ml 提供品 出品同等酒  
2 鷹来屋 特別純米  1800ml \2500 生原酒
3 醴泉・蘭奢待 大吟醸 岐阜県・玉泉堂酒造 1800ml \7800 生原酒 
4 醴泉・酒無垢 純米吟醸   1800ml \2700 生原酒  
5 飛露喜 特別純米・山廃 福島県・広木酒造 1800ml \2500 無濾過生原酒
6 飛露喜 特別純米・山廃(亀の尾) 1800ml \3630 無濾過生原酒
7 福の宮・夢醸 純米 石川県・宮本酒造店 1800ml \3000 無濾過生原酒
8 米鶴・F1 大吟醸 山形県・米鶴酒造 720ml 差入品 (\2400)
東洋美人 純米 山口県・澄川酒造場 1800ml 差入品 (\2500)
 ほんとうは、こういうお酒の価格は掲載するべきではないのかも・・・・。

 価格があると、どうしてもそれが先入観になります。でも、根本的には「おいしい」かどうかであって、決して価格で決まるわけではないのですが、どうしても私自身も、価格になんとなく左右されるのはたしかで・・・。

 なお、会場では原則として価格を発表しないようにしていますので、知っている人以外は、比較的価格に影響されないと思います。

「私のお気に入りアンケート」結果一覧

 今回は、順位をつけての人気アンケートはしませんでした。かわりに、「一番お気に入りのお酒」ということで、ひとつだけ記入してもらったのですが、最終的にメーリングリストでの公表をあわせ、結局19人中16人のアンケートを集約できました。その結果は下記の通りです。
1・飛露喜・山廃特別純米(亀の尾) −6 
2・鷹来屋・大吟醸入賞同等酒    −5
3・醴泉・醴泉大吟醸          −2
4・鷹来屋・特別純米          −2
5・飛露喜・山廃特別純米       −1

 つまり、お気に入りの酒としては、「飛露喜」と「鷹来屋」が同数の支持を得たわけです。私も、このどちらとするか、本当に悩みましたから、この結果はナットクというところです。

 当日提出してもらったアンケートの中から、その一部をご紹介します。
 質問項目は、1・今日一番のお気に入りは?  2・その理由は?  3・次回飲みたい酒


  
蘭奢待 スッキリ系が好きなので 新潟の麒麟山
鷹来屋大吟醸 コクがある 義侠
飛露喜 味わい・飲み口全てよし 亀の翁
鷹来屋大吟醸 一番飲みやすかった 萬寿鏡
鷹来屋特別純米 味わい深くバランスOK 義侠
飛露喜 コクがあっておいしい 神亀の初亀
鷹来屋特別純米 すっきり飲めた、飲みやすさで選んだ
飛露喜 どっしりして飲みごたえがある、CPが高い 醸し人九平次
飛露喜 主張のある味、複雑で微妙なバランス 越の景虎
※飛露喜は2種類ありますが、同一としてまとめています。外に1例だけ(亀の尾でない方)とありました。
※東洋美人については、スケジュール外の差し入れ品であり、アンケート外としました。


「私のきき酒リポート」

 では、実際のきき酒の順に私の感想です。

1・鷹来屋・大吟醸 入賞同等酒 

 浜嶋さん提供の入賞酒と同等の大吟醸で乾杯です。まず香りは強くはありませんが、口にする前からふわっとやわらかな吟醸香が香ります。口に含むと、本来はいわゆる淡麗傾向の鷹来屋なのに、主張のあるしっかりした濃いめの味わいを感じます。ああ、これはいいなと、思わずつぶやきました。


2・醴泉・蘭奢待 大吟醸生原酒 山田錦35% アルプス酵母

 ぱっと華やかな香りが広がります。これがアルプス酵母の香りですね。含むとさわりなくすっきりしてなおふくらみがあり、喉ごしのいい酒です。鷹来屋よりもやや淡麗で、きれいな酒という感じ。これはこれでよくできた大吟醸です。度数は16〜17度の生原酒ですが、透明感のあるやわらかく飲みやすい酒です。


3・米鶴・F1 大吟醸 美山錦45%

 昭和49年に初めて市販吟醸として世に出したということで、名前だけは知っていました。45%と、価格的にもスペック的にも前2者といささか差がある通りで、味の方もちょっと分が悪かったです。江藤さんどうもありがとう。

 ここまで、大吟醸3銘柄では、鷹来屋と醴泉はほぼ互角という感じ、私の好みからいうと、鷹来屋が頭ひとつ上というところですが、恐らく全国の土俵では逆の評価でしょう。


4・鷹来屋・特別純米生原酒 山田錦ほか55%

 これも悪くないです。津田さんが選んだだけあって、実にC/Pの高い酒と感じます。度数が15〜16度とやや低いために、大吟醸にくらべると少し穏やかで地味な印象ですが、この酒はどんな料理にもあうし、燗をつけてもうまい、オールマイティでしょう。前のF1よりもいいかもしれないと思いました。


5・醴泉・酒無垢 純米吟醸生原酒 

 少し香りが控えめですが、全体としては蘭奢待とよく似ています。すっきりした淡麗系でありながら、けっこうしっかり味わいがあって、飲みあきない酒という印象です。価格差を考えると蘭奢待との内容差は接近します。鷹来屋との比較でいうと、ほぼ互角であとは好みの問題でしょうが、私は鷹来屋の方をとりたい。


6・福の宮・夢醸 純米生原酒

 鷹来屋・醴泉と比較すると、やや濃淳傾向の味の乗りという印象ですが、キレよくすっきりしています。いい意味での雑味があって、それなりに奥深さを感じます。ただ、もう少し主張が欲しい感じで、このクラスとしては、鷹来屋の方がむしろまとまりがあるように感じました。
 


 鷹来屋、醴泉と同じ蔵のランク違いを比較してみましたが、やはりそれぞれよく似ていますね。しかも、下位ランクの酒のレベルの高さにもびっくり。これもそれぞれ同じでしたね。で、ここでは、いつも飲む晩酌用なら、鷹来屋特別純米がお奨め。福の宮・夢醸は、少し変わった傾向の酒として比較してみたわけですが、これはこれでキレも味もあってなかなかいい酒です。

 さて、次は「飛露喜」です。

 なぜこの酒を入れたかというと、浜嶋さんは浜嶋酒造の専務で、自ら杜氏となって自家醸造を復活させ、意欲的に取り組む若き酒造家ですが、広木酒造の広木社長も同じ30代、自ら杜氏として恐るべき酒を送り出しているところから、選んでみました。

7・飛露喜 山廃仕込み特別純米 

 前回人気だった「飛露喜」の、これは山廃仕込みの米違い2種です。最初の山廃は、私は去年味わっていますが、去年と同じレベルかそれ以上、実にしっかりした山廃仕込みと感じました。濃淳で、酸味がきいた独特の主張のある味で力強さがあり、酒好きならこれはうまい、とついうなるだろう酒です。酒としては次の亀の尾の方が上ですが、いつも飲むならC/Pを考慮してこちらです。


8・飛露喜 山廃仕込み特別純米(亀の尾)

 この酒がまわっていくと、あちこちでため息のようなかすかなざわめきがありました。私のつぶやき、「あ、まいったねこれは」。前の山廃も十分に主張のある酒でしたが、これはもう、「亀の尾の山廃はこうあるべきだ」とでもいうような、昂然とした高みを感じます。独特の風味は米によるものでしょうか。口の中で、舌にまつわりつくように味わいの渦を感じます。喉を通って降りていきながら、まだうま味が残る酒です。


 結論としては、「飛露喜」の驚くべき酒質の高さ・・です。

 ただ、飛露喜を支持した人の中にも、「ずっと飲むなら別の酒」という意見のあったことも事実で、たしかに私自身、特に飛露喜の「亀の尾・山廃」については、飲み方の難しい酒だという印象もあります。現実に、いつも飲むなら「亀の尾」でない方が飲みあきないかも・・という気もします。
 
 しかし、この酒(飛露喜特別純米山廃・亀の尾)は人によっては重たく感じられ、料理を選ぶ酒かも知れませんが、このような重厚な主張のある酒が市民権を回復して欲しいと思う、私です。

 この酒は、日本酒本来の米のうま味をとことん追求した上で、酸味・苦味といったさまざまな味の成分をバランスよく醸し出した、現代酒造技術の粋ではないかという気がします。

 市販の商品としてどのような存在になるかわかりませんが、このような主張のある酒が増えて欲しいと願うのは、私だけではないと確信します。

 ああ、おいしかった。
 おいしい酒ばかりで、それぞれの蔵のみなさまに、感謝、です。


※ 会の写真入りリポートは37回ビジュアル版をご覧下さい。



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