南部美人ライブツァーinOITA

〜 岩手県・久慈酒造5代目 久慈浩介氏を迎えて 〜


 2001年6月1日、大分市内の「ばじ」にはるばる岩手の「南部美人」蔵元、久慈浩介氏をお迎えして、「南部美人ライブツアー」と銘打ったきき酒会が開かれました。

写真中央、立っているのが久慈浩介氏
 この日、「ばじ」に集まったのはいつものIZAKAYAきき酒会の常連メンバー15人。
 それと、たまたま大分の酒の取材に来ていたカメラマン名智氏(右側背中だけ)も同席。

 造り酒屋ひとりと酒販店3人という、業界メンバーも多い中身の濃い会でした。

 「南部美人」というと、私の昔の記憶としては全体にいわゆる「淡麗」傾向で、香りはあるが味わいにやや欠けるという典型的な吟醸蔵という印象があった。久慈浩介氏によれば、近年はまったく異なる傾向に切り替えて、昔のイメージを払拭しようと努力しているところだという。
 
 実際に飲んでみた感想としては、なるほど昔の印象とはずいぶん違う。香りほどほどでしっかり味わいもあって、むしろ濃淳といってもいいほどの味吟醸と感じた。きれいにしっかりまとまっている。

 今回蔵から直送していただいたお酒の数々・・・・。

 これらは大分ではまずお目にかかれない素晴らしいお酒ばかり。

 「古酒」や「全麹」など、ユニークなお酒も味わうことができて、みんな満足マンゾク・・・。

商品名 分類 原料米 精米歩合 酵母 日本酒度 度数 酸度
しぼりたて生 本醸造生原酒 トヨニシキ 55% 9号系 3 18.5 1.5
純米吟醸生 純米吟醸生酒 美山錦   麹50掛55 9号系 2 15.8 1.5
吟ぎんが 純米吟醸  吟ぎんが 50% 岩手2号 1 15.9 1.5
大吟醸純米仕込 純米大吟醸  山田錦 40%  9号系 1 16.8 1.5
大吟醸初ばしり 限定大吟醸生 山田錦 35% 9号系 4 17.8 1.4
斗瓶囲い雫酒 限定大吟醸生(出品酒) 山田錦 35% 9号系 4 17.8 1.4
純米古酒1995 純米古酒    かけはし 60% 9号系 1 18.5 1.5
All Koji 2001 全麹純米 トヨニシキ  65% 岩手2号 -20  15.9 3.5

 上記8種類の南部美人を飲んでみた印象としては、全般にレベルの高い酒質と感じました。ほどよくまとまった味ですが、きちんとした個性の違いがあります。そのへんも計算の上の酒質設計なのでしょう。

 私の好みとしては、まず一番は上のリストで4番目の「大吟醸純米仕込」です。柔らかくキレよく深みあり、キレイで旨味の奥行きがあります。バランスの良さはモンクなしです。

 その次は、やはり「純米古酒1995」です。実に上手に熟成させているなあという印象です。これで価格が4合瓶1460円? ウソでしょー!でした。

 金賞受賞酒については、なるほどナルホドという感じです。たしかに素晴らしい酒だと思いますが、ちょっと好みではないです。1回飲んで喜んだら、もういいなという感じ。計算して造った味という印象で、飲み疲れます。これって、贅沢なモンクですね。すみません。

 しかし、受賞するための酒をきちんと造れる、そういう力のある蔵なのだなあと、実感しました。

 実は、南部美人は「全国新酒鑑評会」で「金賞」を受賞したのです。いやーおめでたい。
 そればかりか、今年は岩手県新酒鑑評会で「県知事賞」、南部杜氏自醸清酒鑑評会で「首席第一位」、最後の全国新酒鑑評会で「金賞」と、全ての鑑評会でパーフェク トとなる「三冠王」だったんですね。
 だから、この「南部美人ライブツアー in OITA」は、金賞受賞後、全国でも初の「消費者によるお祝い会」を兼ねたわけです。  
 写真は酒の説明などエネルギー一杯の久慈浩介氏。なにごとにも全力投球の人という印象でした。
 大吟醸3種類。

 左から「大吟醸初ばしり・限定大吟醸生」「大吟醸純米仕込」「大吟醸斗瓶囲い雫酒・限定大吟醸生」ですが、右の「斗瓶囲い」は鑑評会出品酒で市販のものではありません。今回のために出していただいたもので、これはまさしく貴重な体験であるわけです。

 どれも実に旨かったのですが、今回のメンバーはほとんどが一致して、中央の「大吟純米」が好みと言っています。これは面白い傾向と思います。
 他の「大吟醸」については、アル添がはっきりし過ぎるのが気になるという意見もありました。

 今回はやや特殊な会ということで会場の定員も少な目。また募集もイレギュラーだったせいか女性の参加者は3人とやや少なかったのですが、それでも常連の皆さんでおおいに楽しんだようです。

 で、私のいつもの「両手に酒」ポーズを替わってやっていただきました、というわけ。
 右側、「吟ぎんが」という名の純米吟醸ですが、これはソフトでなかなか味わいもよく、日本酒入門者にも好まれそうです。ただ私としては、もう少し度数が高いとキリッとした味になるのに・・と思った。 
 お酒のほかに、「仕込水」もありました。これがまたなかなかよかったのですね。私はお酒と半々で飲んでいたように思いますが、そのせいか飲んだ量のわりに二日酔いというほどにはなりませんでした。

 で、この仕込水、かすかな渋味というか苦味のようなものを感じたのですが、というか、あとで二次会で飲んだミネラルウォーター?と比較してのことですが、カルシュウムかマグネシュウムの味かなと思いました。これがポイントなのでしょうか。
 中央左側が「全麹純米」、中央右側が「純米古酒」。
 「全麹」というのは、すべて麹で仕込んだという意味で、日本酒度マイナス20というように甘いのですが、それが実に品のいい甘さで、練乳かけイチゴにもよくあうと評判でした。

 右側「純米古酒」は、1995のタイトル通り5年古酒なわけですが、実に上手に長期熟成させたという感じで、ヒネた感じはほとんど無く、「義侠」の「えにし」にも通ずる日本酒の長期貯蔵技術の粋という印象でした。
 二次会で・・・なんかすごいポーズつけてます。
 前列、久慈浩介氏を挟んで左は大分市の大平酒店大平氏、右はカメラマン名智氏、後列左が今回の企画者中坪氏、中央は最近東京でも人気という「鷹来屋」の5代目浜嶋氏、右端が私という、なんか壮絶なメンメンが残っての写真です。

 この酒だと秋上がりがよさそうですね、また秋にやりましょうということになりました。楽しみですねー。

 以上、やたら楽しい酒の会リポートでした。

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