'14厳冬鶴見岳北谷 豪雪の滝ノ谷
                                       2014年2月15日
                                       メンバー: 狭間、一色、O女史



                           厳冬の別府アルプス(鶴見連峰)

 地獄谷を終えて興奮冷めやらぬ、わずか2日後、再びというか今冬4度目となる鶴見岳北谷。何しろこれまでの累積降雪からして“豪雪”という表現か的を射てないわけではないほどの厳冬が期待できる千載一遇の機会訪れたのだから。

  この千載一遇の機会の鶴見岳北谷に“挑む”以上、気合が入らないわけはない。パイル、ザイル、ハーネス、ヘルメットなどの登攀具とともに一色リーダーの特別な指示で輪かんじきをも用意した。輪かんじきは、“豪雪”ならば当然と言えば当然なのだが、どうも九州の山で使うことに抵抗がなかったわけではないのだが…。

  鶴見岳滝ノ谷(境川第二支渓)取り付きまでは境川林道入り口から約4km弱、時間にして通常ならば1時間の歩程のはずだ。しかし、今日は、数日来の降雪により林道入り口からすでに20cmほどの積雪だ。

 境川砂防堤工事車両もここ数日行き交った気配がほとんどない。雪道を鶴見岳北谷側に回り込んで行くにつれ積雪量がしだいに増してくる。ゲート付近で約30cm、桜谷(境川第一支渓)付近で50cmを超えた。つまり手に持つピッケルやパイルがすっぽりと隠れてしまうのだ。リーダーの一色さんが「輪カンを付けよう」と言う。一応持つにはもってきてはいるが厳冬の石鎚以来20数年着けたことのない輪かんじきを自己流で装着。付近の急斜面からは小さなデブリが林道を処々で埋めている。

  普段の2倍半以上・2時間36分を要して、滝ノ谷取り付きに立つ。9時35分。積雪80cm。合計4つあるうちの2つの堰堤は左側斜面を捲くが、多量の積雪と急斜面、それに地吹雪に悪戦苦闘。

 トップを頻繁に交替しながら、遅々として進まない歩程に苛立ちはじめる。第三堰堤、第四堰堤は大きなデブリで埋め尽くされており、急斜面の側面よりかはもしかしたら突破しやすいのでは、とコースを中央突破に変更。

 雪崩のデブリなどというものの本質を知らない九州の岳人にとって収穫だったこと・・・デブリの盛り上がりの中央は意外にも固く締まっていて(いつもそうなのかは知らないが少なくとも今日は)輪かんじきがまったく埋まらない。

  これに気を良くして中央突破で、今日のような“豪雪”の滝ノ谷下部では思いもよらないほど短時間で涸滝F1に到着。11時15分。標高約950m・滝ノ谷取り付きからの高低差250m。

 それにしても早朝からここまで4時間16分の所要…あまりに時間がかかりすぎた。すでに時計は11時を回った。F1突破から核心部は相当な時間が予想され、しかもロープウエイは運転休止なのだから…ということで「今日はここまで」ということになった。

 そうと決まれば、往路の急斜面を登山靴踵のエッジを小気味よく効かして、下りは足早だ。しかし途中、「これだけの得難い積雪条件下なので、このまま下るだけではもったいない。積雪下のビバーク訓練をしましょう」と一色リーダーの提案があった。

 急峻な雪面の中に、上部からの落石や雪崩を避けられそうなわずかな場所を見つけ、ピッケルで雪を削り足で踏み固めわずかな雪棚をこしらえ、ツェルトを張る。いや、張るというよりかは、ほんの小さな狭いスペースだが3人が頭上からすっぽりと被る、と言う感じだ。肩を寄せ合うようにして、コンロで暖をとりながら思い思いに行動食にパクつく。冬山を体感・実感する、幸せなひと時だ。

 さて、小一時間ほどのビバーク訓練を終えると、あとは再び足早に往路を下って行くだけだ。特筆すべきは、滝ノ谷林道出合を過ぎてすぐ、桜谷側の林道が、高さ2mあまりのデブリにより行く手を塞がれていたことだ。往路にはなかったから、我々パーティが今朝方通過して以後に生じたことになる。これほどの積雪量になると、鶴見岳北谷の急峻な上部では多量の降雪を支えきれないだろうから、雪崩は当然と言えば当然のことだ。九州の山でも時に雪崩を現実のものと受け止めておく必要性を実感した。

 なお、ちなみに、かつて由布岳北面大崩で別府市内の某山岳会パーティが雪崩に遭遇し九死に一生を得たことが地元紙に報じられたことがあるから、積雪量と気象条件次第では、雪崩は他人事ではないことを肝に銘じておくことが肝要だ。 

(コースタイム)
林道入口6:59⇒滝ノ谷(境川第二支渓)入口9:35⇒涸滝F1下部11:15⇒ツェルトビバーク訓練&昼食タイム11:48-12:40⇒林道デブリ12:57⇒林道入口14:42


【参考】
真冬の鶴見岳北谷

鶴見岳北谷滝ノ谷
'14厳冬鶴見岳北谷地獄谷
 
   早朝の境川林道を行く

 
   桜谷出合を過ぎるころから悪戦苦闘

 
   鶴見岳北谷滝ノ谷(境川第二支渓)厳冬

 
   激しい地吹雪に、ラッセルする身体も思わず伏せる

 
   滝ノ谷下部を埋め尽くす巨大なデブリ

 
   滝ノ谷上部を目指して

 
   涸滝F1・・・今日はここまで

 
   ツェルトビヴァーク訓練…中は意外と暖かい

 
   林道を埋め尽くすデブリ・・・往路にはなかった。