短歌36
秋風の頭かしら撫づるが厭はしく帽子を深く被る晩年(旧作微訂正) 2015.9.9
川風の俄に涼し土手の道なびく草葉に秋はきてをり(追加)
梅雨明けしことの確かさ見上ぐれば飛行機雲の伸びてゆく空(拾遺)
七月や街を見やればビルの上入道雲の姿整ふ(拾遺)
いつしかに秋の流れと川なりて立つ白鷺の影のさやけし(拾遺)
秋もはや深みたるらしベンチにて飲む缶珈琲も熱きがよろし 2015.9.10
さくさくと落ち葉踏み行く森の径まこと思はる独りゆく道 2015.9.14
誰それと知るも知らぬも人の死を聞く侘しさや秋の深まる 2015.9.16
傘の中独りと思ふ秋の雨そぼ降る巷ちまた彷徨ひをれば 2015.9.17
連れなくば吾が影と行く土手の道独りまた好し明月の夜 2015.9.19
花供へ線香焚けども虚しかりただ掌を合はす父母の墓(彼岸) 2015.9.23
天体の一つと知るも今日の月古人いにしへびとの心もて観る(スーパームーン)2015.9.28
秋雨のフロントガラスのぼやけるに涙をぬぐうごときワイパー(Mを送る) 2015.9.30
秋晴れの由布こそ良けれその姿豊後の国の富士と見をれば(窓) 2015.10.4
日ひと日眺め暮らせし豊後富士夕焼け雲を纏ひ暮れゆく
阿蘇遙か誰が名づけしか野菊晴れ車を止めて憩ふ峠路(やまなみハイウエー) 2015.10.7
行く前を蝗跳ね飛ぶ土手の道秋も命は盛んなるかな 2015.10.9
登りきて見遣れば母校遠く見えチャイム聞こゆるコスモスの丘(帰郷) 2015.10.14
サクサクと落ち葉踏む音耳につきいつしか独り道を行きをり 2015.10.15
秋深く飲むコーヒーに長話老ひの時間の豊かなるかな(T君と) 2015.10.25
縹渺として波高き秋の海己が心のごとく眺むる(田ノ浦) 2015.10.26
窓に見て出でて眺むる由布が峰ねの纏へる雲も冬に近づく 2015.10.30
ゆく秋のなびくススキの道遙か阿蘇を目指して握るハンドル 2015.10.31
日の本の今日晴れ渡る文化の日旗のためとて風すこしあり(旧作) 2015.11.3
窓の由布昨日と今日と変はらねどふと羨まし変はらぬ由布が 2015.11.11
持ち古りし傘頼もしく差しゆけど心を濡らす秋の雨かな(旧作) ?
亡き友の前行くごとし銀杏散る並木の道を洋杖つゑつき行けば 2015.11.15
この秋の終はりを告げて散る銀杏吹き上げられて黄金を散らす 2015.11.17
老ひの目を楽しませんと散る紅葉舞ひを競ひて着地を決める 2015.11.21
水影の己が姿に見入るごと白き鷺立つ川中の石 2015.11.23
散り込める落ち葉次々水に乗り冬を急げるごとく流るる 2015.11.25
(散り込みし落ち葉一枚瀬を早み冬を急げるごとく流るる)
窓に見て出でて眺むる由布が峰の今年はさても早き初雪(初冠雪/寒波)2015.11.27
訪ね来し七瀬の森の夕紅葉老ひの眼に燃ゆるがごとし 2015.12.1
故もなく落ち葉一枚拾ひ持つわが七十の命をかしも
今日の由布いかにと窓に寄り見れば雲の上なる頂きの雪 2015.12.5
珈琲を飲むひとときの安らぎに豊後の富士を見やるしあわせ 2015.12.13
庭先の実を落ち尽くすモチの木に鳥も来ずなり枝の淋しき 2015.12.16
疲れたる目を休めんと冬夜長灯りを消せば窓の三日月 2015.12.18
(書に倦みて目を休めんと秋夜長灯りを消せば窓の満月)
戦無き御世を讃へて翻る今は平和の旗ぞ日の丸(天皇誕生日) 2015.12.23
一年ひととせの心の垢も落とさんと長く浸かれる大晦日の湯(旧作) 2015.12.31
ゆく年をなほ捨てがたき老いらくの心の闇に響く鐘の音
移りゆく人の世のこと思ひつつ一人酒酌み除夜の鐘聴く(追加)
晴れわたる年の初めの目出度さを祝ひ尾を振り凧のあがれる 2016.1.1.
冬晴れの空の青さのよろしさに今日の散歩は帽子被らず 2016.1.4
暖冬の故にやあらん今年やや減りしと思ふ川淀の鴨 2016.1.7
鴨の顔どれもあひ似て面白し憂さ晴らさんと眺めてをれば
人の世は年々歳々移ろへど歳々年々川淀の鴨
暮れてゆく由布美しき事もなく今日もひと日を終ふる安けさ 2016.1.10