短歌35
春風に吹かれつつ行く土手の道すみれタンポポ名も知らぬ花 2015.4.1
花の下浮かれ心は変わらねど花見る人の顔はみな老ゆ 2015.4.2
花の雨そぼ降る中を帰りきて傘を畳めば落つる花びら 2015.4.6
通るたびこころ騒げり落ち椿数を増しゆく藪蔭の径 2015.4.7
また元の通りとなりてネクタイを翻しゆく葉桜の道 2015.4.11
上着脱ぎ土手の斜面に寝転べば雲雀の声は空に満ち満つ 2015.4.13
タンポポの絮飛ばさんと吹きをればふと思はるる故里の空 2015.4.15
藤の房垂れて気怠き昼下がり蜜吸う蜂の羽音かそけき 2015.4.17
藤の房垂れたる下を谷川の夏を急げるごとく流るる(七瀬公園の吊り橋にて) 2015.4.18
ゆく春のみ寺の縁に腰かけて眼まなこ瞑れば百鳥の声 2015.4.1
里若葉屋根より高き鯉幟風を孕みて強く尾をふる(子どもの日) 2015.5.5.
タンポポの絮飛ばさんと吹きをればふと思はるる人の行く末 2015.5.6
わが前を黒き蝶々の誘へる森の中なる泉への径(青少年の森) 2015.5.8
薔薇の花血潮のごとく赤ければワイングラスに君は飾るも(旧作訂正) 2015.5.13
草若葉運動靴を履き行けば白き蝶々の前を飛びゆく(旧作訂正)
溪若葉清き流れに沿ひ行けば夏鶯の声のあちこち(七瀬川上流)
(里若葉天つ光のみなぎりて夏鶯の声のあちこち)
庭の薔薇剪りきて壺に妻活けて窓辺に飾る朝の明るさ 2015.5.20
五月尽土手の径行く楽しさよ蝶々舞ひ寄り燕飛び来る 2015.5.28
雨の日も好しと見をれば窓の外頷くごとし紫陽花の花 2015.6.8
持ち古りし傘頼もしく差しゆけば雨また楽し紫陽花の径
この頃の吾の憂ひを流すごと溢れ流るる五月雨の河 2015・6・11
晴れて好し雨もまた好し花菖蒲相合傘で観るはなほ好し(恋) 2015.6.15
目覚むればすでに来ている屋根雀梅雨の晴れ間の朝を囀る 2015.6.16
傘持たず梅雨の晴れ間を出でくれば低く蝶とぶ草土手の径
摘み溜めて妻が手に持つクローバの一つだになき四葉なるかな 2015.6.22.
ふり向けばいつしか歩み独りにて夢幻のごとき来し方(宮崎行きの列車の中で)2015.6.27
梅雨深く独り茶を飲む寂しさよ豊後の富士も窓に見えねば(妻旅行) 2015.7.5
紫陽花の葉陰に這へる蝸牛角突き出して威嚇愛らし 2015.7.6
傘畳み雨の逃げ行く方見れば街を跨いで大き虹たつ(旧作訂正)
連れ立ちて傘さし行けど傘の下各々独り紫陽花の寺 2015.7.7
空やがて晴るると思ふ雨の中飛ぶ蝶のあり草土手の径 2015.7.12
蝶一頭墜ちて浮かべる水溜り雷雨の後の空を映せる(旧作)
雑草は我も憎めど雑草のごとく生きよと吾子を思へり(庭) 2015.7.14
人や知る我には分る子の苦悩諭す言葉の見つからぬかも(秀晃誕生日) 2015.7.19
梅雨明けて青く広がる大空に子等はボールを高く蹴上ぐる 2015.7.20
梅雨明けて空の映れる玻璃窓にあはれ飛びきて鳥のぶつかる(出来事)
(梅雨明けて空の映れるガラス戸に舞ひ来て蝶のまたもぶつかる)
雨上がり蝶の付き来る傘のあり相合傘は畳まずにゆく(図書館の窓) 2015.7.21
道のべに枝張る樟の濃き木陰鞄投げ出し憩ひしことも(樹齢**年) 2015.7.27
朝曇り今日の暑さの思はるる何処かで鳩のくぐもりの声 2015.8.1
目覚むれば朝より繁き蝉の声子の夏休み吾が夏休み(懐古)
終戦の日より数へて七十年戦なき世の蝉の声かな 2015.8.15
来し方の道異なれどおのおのの額に刻む皺は似るかな(古稀同窓会) 2015.8.19
川風の涼しくもあるか土手の道なびく草葉に暑さ残れど 2015.8.28
晩夏光纏ひ出で航く連絡船見えなくなりて汽笛を鳴らす(旧作微訂正)
風急に吹き飛ばされてゆく蝶のすなはち知れぬ行方なるかな 2015.9.8