短歌34
大年の寒き夜空を見上ぐればまた加はりし星の輝く 2014.12.31
初日さす空の高みをジェット機雲より出でて光つつ飛ぶ 2015.1.1
変わりなき景色なれどもビルの窓年新しき空を映せる
降る雪を窓に眺めて日ひと日炬燵で過ごす老ひの春かな
カーテンを開けて見やれば西窓や久住の山の雪の曙 2015.1.3
太陽に向かふがごとく昇りゆく凧に読まるる龍の文字かな
初晴れの空見上ぐれば凧一つ高きところにあっりて尾を振る
服着たる犬と連れ立ち来る女ひとと会釈交せり初春の路地
冬の川しばし眺めて石一つ投げて戻れり春遠からず 2015.1.7
冬晴れを遠く見やれば山並のそのまた奥に雪の山並 2015.1.12
冬晴れの空の高さを計るごと揚れる凧の長く糸曳く(凧揚げ大会) 2015.1.17
電柱のうえにとまれる寒鴉雪になるかと空を見上ぐる 2015.1.20
世をしばし逃れんと来し山の池浮世は知らず鴨の泳げる 2015.1.27
枯れ侘びし園の景色は変はらねど莟みつけたる紅梅の枝 2015.1.31
春はまだ名のみと思ふ裸木に凧のかかりて強く尾を振る
春来るは嬉しけれども哀しけれ日々に減りゆく川淀の鴨(旧作訂正) 2015.2.3
春立つとしかと思へり吾が宿の軒端の梅の莟みほころぶ(故郷懐古) 2015.2.4
春浅き遠山並を見渡せば霞の奥に光る雪嶺(久住連山) 2015.2.5
春浅く足の向くまま出でゆけば見つけて嬉しタンポポの花 2015.2.6
今来たと告ぐるがごとく燕つばくろめ近づきて去る土手の道かな(初燕) 2015.2.7
この景色常にもがもな日の丸に風少しある祝建国日 2015.2.11
暮れなづむ光の中に子どもらは長き影連れ遊び止まずも(公園) 2015.2.13
日脚伸ぶことの確かさグランドの大き時計の針の垂直
日脚伸ぶことの確かさ公園の芝に延びたる銅像の影
梅咲くや鼻近づけて香を嗅げば古いにしへ人の心伝はる 2015.2.15
梅二月待ち侘びゐたる鶯の初音聞きたり目覚めの床で 2015.2.20
春風の心地のよさよ風車子の手に持たせ乳母車ゆく 2015.2.23
誰それと知るも知らぬも人の死を聞く寂しさやいとど身に沁む
冬去りしことの確かさ柔らかく白き雲浮く鉄塔の上 2015.2.27
二羽の鴨群れを離れて泳ぎをり夫婦善哉水温む池(高尾池) 2015.3.1
初蝶を今年も見たるこの辺りそぞろ歩きの草土手の道 2015.3.4
初蝶を見し昂ぶりや帰りなば妻に知らせん子のも語らん
また遇ひてまたまた遇へる蝶々かなそぞろ歩きの草土手の道(旧作訂正)
連絡船霞の奥に消えゆきて汽笛を鳴らす午後の海かな(田ノ浦ビーチ) 2015.3.13
春の海ひねもす高き波もなしこの安けさを世にも望めり(旧作改訂)
祝はるることも寂びしき誕生日残る蝋燭の数は知られず(69歳) 2015.3.16
ふと老ひの闘志の湧けり揚げ雲雀空中高く囀るを聞き(初雲雀) 2015.3.17
春風に吹かれ自転車漕ぎ行けば覚えず至る友の家かな
(春風に吹かれ吹かれて行き行けば覚えず至る友の家かな)
これよりは豊後に下る峠道しばし憩えば鶯の声 2015.3.19
上着脱ぎ雲を眺めてやや長く草に寝転ぶ土手の春かな(七瀬) 2015.3.20
古里の峠に近き父母の墓洗ひてをれば鶯の声(春分の日) 2015.3.21
諍へることもありしが鶯の声の長閑けき父母ちちははの墓
掌を合わせ黙祷すれば鶯の声の大きく父母の墓
古里もすでに異郷や他人ひと住めばわが家の址も寄らず過ぎ行く
上着脱ぎ手をポケットに行き行けば若き吾あり春風の土手 2015.3.26
豊の海や眺めて居れば霞より南蛮船の現るるかと(田ノ浦) 2015.3.27
来て見れば久住高原春浅く末黒野すぐるのに立つ阿蘇の噴煙 2015.3.28
咲き初めてはや嘆かるる桜花老ひの眼に散りゆくが見え 2015.3.29
咲き満ちて早や嘆かるる桜花落花一片手のひらの上 2015.4.1
(咲き満ちて早や嘆かるる桜花落花一片目の前に舞ふ)
電線に音符のごとく留まりゐて小鳥らは歌ふ惜春の譜を(旧作訂正)