春の日の落ちゆくまでを窓に見て今日の一日を思い出すかな(拾遺)
これよりは下りとなれる峠道若葉の上に豊後富士見ゆ 2014.5.6
日一日雲を纏はず豊後富士暮れてゆくなり夕焼けのなか
暮れてゆく姿麗し由布の嶺夕焼け雲を一刷毛残し
花茨咲きて変はらぬこの道や心に刺さる思ひ出もあり(故郷) 2014.5.22
現身は気付かざりしも身罷りてまこと仏と知るや父母(家屋敷売却遺品整理)
天平の反りを伝ふる大き屋根青葉若葉の隙に見ゆるも(歴史資料館) 2014.5.25
初夏の青葦原を渡る風立つ白鷺の冠羽を吹ける(夏羽) 2014.5.28
誰にやる花とはなしに折り持てば若き吾あり一輪の薔薇(庭の薔薇) 2014.5.31
あやめ池雨を湛へて静かなりアメンボの居て乱す花影 2014.6.3
暮れてなほあやめの里の水車止まず巡るを月の照らせる(緒方町) *?
不如帰しば鳴く声を聴きをれば思ひ出すなりふる里のこと(家屋敷売却) 2014.6.4
不如帰しば鳴く声の耳につき眠りかねつもふる里の家
父母の墓に参りて耐へがたし去らんとすれば啼くホトトギス(旧作)
誰にやるものとはなしに摘み溜めて児らが手にもつクローバの花 2014.6.5
不如帰啼くや故郷は田植え時田ごとの月の眼に見ゆる(望郷) 2014.6.15
あやめ池雨を湛へてゆたかなり月を浮かべて花影清し 2014.6.16
遠く虹かかり雨脚逃げてゆく紫陽花の道傘回しゆく(ちょっとよいことあって) 2014.6.19
雨上がり早や現はれし揚羽蝶案内のごとし紫陽花の路
パクパクと口開く鯉のおかしさよ落花散り込むお濠巡れば(拾遺)
目覚むればすでに来てゐる屋根雀二羽ゐるらしき声の弾める 2014.7.12
屋根雀声の弾めるあかときの目覚めに思ふ今日の一日
手放せる庭ゆ剪りきて父母の墓に供へし紫陽花の花
跳び越えて返り見すれば潦にはたづみ梅雨の晴れ間の青空映す 2014.7.15
蝶一羽逸れて飛びゆく方見ればビルのガラスに映る青空 2014.7.19
梅雨明けて青く広がる空の色即ち想ふ海の色かな
梅雨明けて青く広がる空の果て見ゆるがごとし白き帆の航く
子が巣立ち空きになりたる部屋の窓開くれば見ゆる高く飛ぶ鳥(秀晃誕生日)2014.7.19
(子が巣立ち空きになりたる部屋の窓開くれば見ゆる去りてゆく鳥)
豊後富士在りしところにしかとあり梅雨明けたりと窓を開くれば 2014.7.21
己が名をポチとは知るや拾はわれし犬の呼ばれていとど尾を振る 2014.7.30
目覚むればいよいよ繁き蝉の声今日の一日の暑さ思へる 2014.7.31
雨上がり燕飛び交ふ土手道を園児ら帰る傘回しつつ 2014.8.1
蝉鳴くやまた巡りきし平和祭平和の声か苛立つ声か 2014.8.6
歓喜ともやがては死ぬる命とも耳に沁みつく蝉の声かな(少林寺・隠寮) 2014.8.10
歓喜ともやがては果つる命とも欄に凭れて蝉の声聞く
夏の威は空にまだある様さまなれど青田の上を飛ぶ赤とんぼ 2014.8.14
終戦の日よりおよそ七十年戦無き世の蝉の声かな 2014.8.15
英霊に捧ぐ言葉は違はねど平和の誓ひ願ひになれる
朝曇り今日の暑さの想はるる鳩の発するくぐもりの声 2014.8.16
雨上がり青空映る水溜り小鳥降り来て水を浴びをり 2014.8.19
(雨上がり青空映る水溜まり小鳥降り来て沐浴ゆあみをしをり)
一雷雨過ぎたる後の水溜り鏡のごとく映す空かな 2014.8.22
見渡せば由布の高嶺は晴れ初めて麓に下る夕立の雲(記憶より) ??
秋風の吹き込む窓を早も閉め思ひをるかな次に来る風(急に秋) 2014.8.28
(秋風を厭ひて閉むる窓なれや次に来る風早も思はる)
秋風に飛ばされゆくか乗りゆくか蝶々一羽谷間を渡る(訂正) 2014.9.1
ひらひらと落ち葉舞ひ落つ窓の外今年の秋も去秋に似たり 2014.9.3
天体の一つと知るも月愛づる古いにしへ人と心変はらず(中秋名月) 2014.9.8
電線を潜りて上る満月を肩寄せて観るアパートの窓(回顧)