白き船水平線を越えゆくを夏を見送るごとく見るかな(田ノ浦) 2013.8.20
晩夏光浴びて出で航く連絡船見えなくなりて汽笛を鳴らす
ある時の吾が純情をふと思ふ白百合の花飾るテーブル 2013.8.21
街はまだまだまだ暑きさまなれどビル屋上の風は涼しき 2013.8.29
夏終ると思もへど光の強ければ白き帽子を被り直せり
風立ちて冠羽吹かるる白き鷺晩夏の光あびて飛び立つ
夕風に吹かれて土手の道ゆけば暑を忘れよと靡く草の葉
潮騒や晩夏の浜に人もなく波弄ぶビーチサンダル 2013.9.11
壁にかけ被らずなりし夏帽子眺めてをれば時は戻れる 2013.9.17
秋晴れや窓に収まる豊後富士姿よろしく名をぞ肯ふ
見上げれば雲一つなき秋空に見つけてうれし一羽とぶ鳩
君無くて何ぞ月見が楽しかろただ酔ふためぞ今宵の宴は(牧を忍んで) 2013.9.19
いつしかに歩み独りとなりぬれば吾が影と行く名月の道
名月や池を巡りて夜もすがら古人と心通はす(高尾池)
名月を眺めてをれば傍にきて声もかけずに妻もまた観る
曼珠沙華誰が供えしかふる道の峠に近き父母の墓(秋分) 2013.9.23
千切りたるごとく雲浮く今日の窓今年も半ば過ぎにけるかな 2013.9.26
吹き込みて暦をめくる秋の風残り少なき日数となりし
吾少し熱くなりたる両国の相撲も終はり秋の深まる(旧作)
曼珠沙華咲けば目に見ゆふるさとの夕日の中の段々畑 2013.9.29
吹かれ来てまた吹かれ行く秋の蝶即ち知れぬ行方なるかな 2013.10.1
いつしかに秋の流れと川なりて落ち葉を追ふて落ち葉流るる(七瀬の吊り橋)
秋の雨そぼ降る中を帰りきて傘を畳めば落つるもみじ葉 2013.10.7
持ち古りし傘頼もしくさしゆけど心を濡らす秋の雨かな 2013.10.8
分け入れば落ち葉次第に深くなるこの森なかの径の静けさ 2013.10.9
秋深く窓を過ぎ行く雲を見て遠き異国を思ひをるかな 2013.10.12
晩夏光浴びて飛び行くヘリコプター遠くなりゆくほどに輝く 2013.10.17
日一日雲を纏はず豊後富士暮れてゆくなり夕焼けのなか 2013.10.21
風急に翼広ぐる白鷺の広げし羽に秋の日の濃き
阿蘇遥か肥後と豊後の国境風に吹かるるコスモスの花(久住花公園) 2013.10.22
秋晴れの岡に上りて見渡せばあらぬところに人の家あり 2013.10.23
窓の外由布の高峰の纏ふ雲いよよ厚しと思ふこのごろ 2013.10.27
蝶高くビルの方へと飛びゆける窓のガラスに映る青空 2013.10.29
窓の外大方散りし庭の木の梢に残る葉をいとほしむ(立冬) 2013.11.7
見上ぐれば日に日に散りし木々の葉は数ふるほどになりにけるかな
秋の湖青く湛へて波もなしあまりに寂しこぐ舟あらな(志高湖) 2013.11.8
秋の湖空を映して波もなし豊後の富士を映す位置かな
(水澄みて鏡のごとき水面かな豊後の富士の映る湖)
由布の峰現はれ出たり隠れたり紅葉愛でつつ下る山道(城島高原)
豊後富士今日はいかにと出で見れば薄ら纏へる峰の白雪(初冠雪) 2013.11.19
豊後富士凛とあるなり重なりて姿整ふ山々の上(故郷)
朝夕に愛で眺めたる豊後富士見えぬところや父母の墓
花よりも嘆かるるかな桜木の梢に残る葉の散りゆくは(庭) 2013.11.24
カラカラと声立て落ち葉駆けゆくに心急かるる師走となれる 2012.12.1