短歌29

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目に若葉心に聞ゆ笛太鼓ふる里遠くなりにけるかな(春祭り)         2013.4.23
落ち椿芥とともに流れゆく春の遺物の混じれるごとく                     
写真撮る作り笑顔のふと寂し若きと巡るチューリップ園(花公園)            4.25
目に若葉季節の巡り定かなり蒲公英の絮風に乗り行く       
風わたる空の深さに眼ぞ吸はる蒲公英の絮吹きて飛ばせば 
車止めしばし安らぐ国境肥後も豊後も若葉変はらず                   4.27
万緑や大観峰といふところ日本一の景色肯う
肥後街道肥後に別れを告ぐるときふりさけ見れば阿蘇の夕焼け
(肥後街道肥後に別れを告ぐるときふり向き見れば阿蘇の夕焼け)
風渡る木々の緑の目にぞ染む養老院の窓より見れば(叔母)              5.3
風わたる五月の晴れし空払ひ元気よきかな鯉幟の尾                  5.4
手をつなぐ二人の前を飛ぶ蝶の妖精めくやチューリップの園              5.5
チューリプ咲けば杖曳く公園のベンチの憩ひやや長きかな                   
里若葉牡丹の寺の道問へば指さす方に大き屋根見ゆ(英雄寺)             5.7
牡丹花を撮らんとカメラ構へれば飛び来て止まる蝶のあるかな
目に収めカメラに収め筆とりて歌にも読むや緋牡丹の花            
風渡る青葉若葉の渓深くところ定めず鳴く時鳥(久住大吊り橋)              5.15
父母のともに仏となりたまひまこと仏と思うふこの頃                   5.21
髪薄き頭かき撫で少女らの長き髪吹く初夏の風      
初夏の青海原を傷つけてモーターボート沖へ出で航く(旧作)
裏窓を開けば青き空と海接するところ白き帆の航く(別府湾)
写真撮る作り笑いのふと寂しわが誕生日祝はるれども(追加)
上り来てしばし安らぐ峠かな雲雀の声の下しもに聞ゆる(芭蕉の句より)         5.22
あやめ池雨を湛へて静かなり蛙飛び込み乱す花影                    5.30
大友の手塩薄れし豊国の要の城の蓮の花咲く牧 典功 高校時代の歌)
ゆく春のお濠を巡りまたもとの位置に戻れば涙流るる(故人を偲びて)          6.1
あやめ池花を映して静かなり含みそめたる水の夕影                   6.9
曇る日は水面の影も空しくてはや花閉ざす睡蓮の池
田植ゑ終へ泥に汚れし衣干す農家の庭の紫陽花の花
雨上がり傘畳まずに通りゆく路地裏の路紫陽花の花
雨上がり紫陽花の葉に置く露のどの一粒も宿す太陽(華厳)
雨上がり雨のまだ干ぬ紫陽花の葉裏を這へる蝸牛かな
雨傘を日傘に替へてゆく妻の前を蝶飛ぶ白き蝶飛ぶ(花菖蒲苑)             6.15
帰るべき里の無ければ不如帰しば鳴く声をあだに聞くかな(時鳥がよく鳴くので)     6.25
この頃の吾の悩みも流すなり溢れ渦まく五月雨の川                   6.26
尋ね来し街の姿は異なれど古里人の心変はらず(宮崎)                  6.29
差す傘に雨の響きはまだあれど心晴れゆく紫陽花の路                  7.1
蓮の花心空しく観てをれば西方浄土遠くて近し(仏の里)                  7.10
蓮の葉に乗りて泰けし雨蛙浮世眺めてケロケロと鳴く(旧作)
梅雨明けしことの確かさ太陽としかと向き合ふ向日葵の花                7.15
梅雨明けて物の纏へる日の光最も纏ふ向日葵の花(訂正)
梅雨明けしことの確かさ空高く飛行機雲の白く延びゆく
花火終へ元の夜空となりにけり雲間に出でし円き月影(七瀬・花火大会)         7.28
花火終へしばし虚しき夜の空にまた現はれし星と月かな(旧作)
この願ひ届けと児らが鳩放つヒロシマの空今年も暑し                   8.6
汗を拭きまた汗を拭くこの暑さこの遣る方のなき憤り(11時2分)             8.9
終戦かはた敗戦か英霊に黙祷すれば蝉喧し                        8.15
あの時の吾が純情を思ふかな湖畔に咲きし白百合の花(志高湖)            8.17