短歌28
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西行の歌の軽さがこのごろは好きになりたり齢なるかな        13.1.25
子が去りて空きになりたる部屋にまで妻は飾れり水仙の花       
腰掛けて帽子を脱ぎてややながく空を仰げり冬晴れの土手      13.1.26
見上ぐれば高きところに凧一つありて尾をふる長き尾をふる
いつしかに雲の姿も春めきて電信柱の上を過ぎ行く           13.1.29
現はれて窓を過ぎ行く春の雲ながく見てをり頬杖をつき
古き壺割れずにありて目出度けれ愛でて置かるる床の間の棚(S氏宅)13.1.30
かりそめにコップに活けし水仙花飾りしままの客間なるかな      
妻は今日吾と新渡戸と比べをりいや高きかな妻の願いは       13.1.31
珈琲を飲みつつ見れば窓のそと枯木の枝に春の訪れ(県立図書館)
春来るはうれしけれども寂しけれ日に日に減るや溜池の鴨       13.2.2        一つ咲く藪の椿のまた咲きて近づく春の速さ知らるる(旧作)
春立ちて風まだ寒き土手の道春を見せんと乳母車押す         13.2.3
正直に春立つ山の霞みをり療養所の窓より見れば(回顧)
旅立ちを拒みたるにや二羽の鴨つかず離れず春の流れに       13.2.4
前山に煙の立ちて見渡せば薄く霞のかかる遠山
競いひ咲く白梅紅梅見くらべて紅を嘉せり齢なるかな(七瀬梅林)   13.2.7
梅が香に誘はれくれば国分寺天平伝ふ屋根の反りかな        13.2.10
翻る旗こそ好けれビルの上今日のこの日を祝ふがごとし        13.2.11
ふるさとの軒端の梅も咲きぬらん匂ひおこせよ風のたよりに
出で行けば春の訪れ確かなりポチが見つけしタンポポの花      13.2.13
春一日為すこと行く方なきままに土手を歩きて帰り来るかな      13.2.14
雪降りて景色整ふ梅の花近づく春のためらひのよき           13.2.16
水温む小川かき混ぜ子どもらは声を上げをり春に触れたと       13.2.23
子ども等が春の河原で飛ばす石春の流れを跳ねて飛びゆく      13.2.25
初蝶をついに見かけし散歩道いよいよ春も盛りなるかな         13.2.28
父母の墓に参りて線香焚きただ手を合はすただただ合はす       13.3.3
春霞由布を隠して昼深し菜の花上蝶の飛び交ふ              13.3.8
庭先に一つ転がる落ち椿春の終はりの初めなるかな           13.3.8
アベックが手を繋ぎゆく春の浜ふたりの後に残る足跡           13.3.15
老ひの目にはいと悩ましき桜花咲くを見るとき散るを思へる(開花)   13.3.16
得るはなく失ひゆけることばかり歳とることの祝ははるるとも(誕生日) 
父母の墓に供ふや黄水仙春の至るをしかと告げんと(春分)       13.3.20
大いなる寝釈迦のごとき阿蘇の山霞纏ひて目の前にあり(あざみ台)  13.3.22
来て見れば吾が青春のあざみ台変はることなき眺めなるかな
散りゆけるあまたの命ふと思うふ落花一片手のひらに受け(訂正)    13.4.1
来し方は夢か現か花吹雪舞い散る道をかへり見すれば
花吹雪いかに映るや予科練の死に遅れたる父の眼に(回想)
花の雨降りこめられて篭りをり窓のガラスを幾たびも拭き           13.4.2
花の下浮かれ心の変はらねどいとど落花を受くる盃(故郷花見)       13.4.7
花散りてその下道の侘びしけれ故もなけれど足の急げる          13.4.15
揚げ雲雀頭上高く囀るをしばしは若き心もて聴く                13.4.15
チューリップ咲く公園のこのベンチ座ればしばし若き日の吾
初つばめ早くも来たり鉄橋を門ゲートのごとく先づは潜りて           13.4.17



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