短歌27
秋晴れのまとふ雲なき富士の峰高さを競ふ山もなきかな(豊後富士連想) 12.10.25
秋晴れのまとふ雲なき豊後富士その名よろしき山々の上
四十年時の流れもなんのその会へばはらから杯を手にして(同窓会) 12.11.10
南国の旅の思ひ出作りかなカラオケバーで歌ひしことも
再会をかたく約して別れたり一人ひとりの笑顔焼きつけ
笑顔ふと哀しと思ふ別れ来て遠き旅路に想ひ馳すれば
ゆく秋のなべて色なき眺めかな雲が圧する大阿蘇の山(あざみ台展望所) 12.11.15
阿蘇遥か帽子を脱いで眺むれば招くがごとし白き噴煙(回顧)
日翳れば波のきらめき消えはてて水面寂しき初冬の川 (七瀬川) 12.11.23
踏みゆけば浮世離るる思ひかな紅葉降り敷く霊山りょうぜんの径(霊山寺) 12.11.25
この秋の終はりを告げて散る銀杏舞を舞ふなり夕日の中に(公園) 12.11.29
見上ぐれば時雨の空も晴れ初めて天つ光の雲間を漏るる 12.12.1
師も走る師走となりし確かさに吾が行く前を落ち葉も走る 12.12.3
炬燵にて蜜柑剥きつつ眺むるや窓に納まる由布の初雪(初冠雪) 12.12.8
命あるごとく動ける落ち葉かな踏まんとすればあはれ逃げゆく(即興) 12.12.13
ふと父の顔あるごとし落ち葉焚く炎が照らす夕闇のなか 12.12.18
(ふと父の顔あるごとし落ち葉焚く炎を囲む人顔のなか)
世を厭ふ吾罪深き詩人うたびとか妻に疎まれ子に憎まるる 12.12.19
いつしかに浮世のことも忘れゆき日々の日課の散歩楽しき
屋上の旗のはためき激しくて由布に湧き立つ夕立の雲(拾遺) 12.12.24
庭樹みな裸になりて目を遣れば時雨の雲を纏ふ由布が峰
稲刈りしあとの田圃に立つ案山子あはれなるかな笠も破れて(触目) 12.12.26
また逢ひてまたまた逢へる蝶々かなそぞろ歩きの草土手の径(訂正) (12.3.29)
小夜更けて浮き寝寂しと鳴く鴨に応ふる声のなきぞ侘しき(高尾池) 12.12.28
年逝きてまた来る年もあわただし浮世に響く鐘は澄めども(除夜の所感) 12.12.31
行く川の流れは去年こぞに変はらねど年新しき空の映れる(元旦) 2013.1.1
雲隠れ豊後の富士は日一日姿を見せず暮るる新春
一つ高く凧の揚がるを見て長く空を仰げり久しぶりにて(訂正) 13.1.3
(一つ高く揚がる凧見てやや長く空を仰げり久しぶりにて)
鴨の数数えつつ行く土手の道老ひの日課の歩き初めかな
ひとり飲む珈琲苦し初春の街のカフェにアベック多し
正月も三日を過ぎて吾子去りてもとの夫婦の暮らしとなれり
また咲きて淡き光をまとふかな亡母が植ゑし寒菊の花 13.1.9
亡き母が植ゑし小庭の冬の菊雨にも負けず風にも負けず
連絡船かもめを連れて出で航ゆける豊後水道波高きなか(田ノ浦ビーチ) 13.1.10
冬の海眺めてこころ痛むかな迷へるごとき一羽のかもめ
見渡せど波ばかりなる冬の海眺めて去らぬ男あるかな(自画像)
散歩終え飲む珈琲の温かさ春遠からじと思ひをるかな 13.1.13
冬の空覆へる雲の隈なきもところどころに見ゆる青空 13.1.18
水の音耳を澄ませば聞こゆなり春来とつぐる声にあらずや
冬の虹見し束の間は夢なれや消えたるのちに跡形もなし
ひとり行く枯野のごときこの道や行きも帰りも遇ふ人のなき(散歩)
冬晴れの由布に真向かふ田圃路行く人もなく来る人なし(湯布院盆地) 13.1.19
冬の雲電信柱はただ立てる春待つ木々のこころもなくて
頬寒く風にあらがひ行きゆけば続くと思ふ冬ざれの道 13.1.25