短歌26
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月の出を待たずに去れる白蓮の池にて想ふ月光浄土(少林寺の池)   12.6.18 
雨上がり露のまだ干ぬ紫陽花の花に飛び来る巨き蝶かな        12.6.29
見てをれば巨き蝶きて露啜る雨のあとなる紫陽花の花
雨上がり雨の逃げゆく方見れば街を跨いでかかる虹あり
雨上がり早現れし蝶一羽吾を導く紫陽花の径
雨上がり早現れし蝶一羽花にとまりて次の蝶待つ
雨上がり早現れし蝶一羽畳まずにゆく傘につき行く
蝶一羽はや現れて雨上がり溢るる川を渡り初めたり           12.6.30
頬杖をつきつつ眺む窓の外雨に打たるる紫陽花の花           12.7.3
わが心慰めかねつ紫陽花の花に顕はる父母の顔
雨上がり燕飛び交ふ土手の道幼き児らの傘回しゆく
梅雨明けしことの確かさアドバルーン朝よりあがる街の中空        12.7.7
梅雨明けしことの確かさ豊後富士在りしところにしかとあるかな
つばくろら橋を潜りて飛び競ふ夕かたまけて雨のあがれば       12.7.10
梅雨明けてもののまとへる日の光もっともまとふ向日葵の花      12.7.17
朝曇り今日の暑さの思はるる鳩の発するくぐもりの声          12.7.28
遅れくる音こそよけれ遠花火静かに上がる屋根々々の上
花火終えしばし虚しき夜の空にまた現るる月と星かな(旧作)
暑き日やまたも来たれる原爆忌入道雲の地上見下ろす        12.8.6
てくてくと汗を拭きつつわが影と連れ添ひ行くや夏草の道      12.8.9
終戦日一つ転がる道端の空缶蹴込む夏草の中        12.8.15
雷のあと姿現す由布の峰去りゆく雲の龍に似るかな     12.8.20
ひそやかに秋は来てをり一二枚庭の植木の葉の色づける(改訂)12.8.24
白髪吹く風いとわしく帽深くかぶりゆくなり初秋の土手        12.9.3
秋風の頭撫づるもいとわしく帽子を深く被る晩年(旧作)
吹き込んで暦をめくる秋の風今年も残り少なくなれり         12.9.10
秋風のここちの良さよ土手の道尾をふる犬の追ひ抜いてゆく     12.9.12
阿蘇遥か肥後と豊後の分かれ路野菊の花の風に吹かるる
この道の果つるは何処いづく果つるまで歩いてみたき秋草の路    12.9.14
わが庭に咲きたる秋の花供へ去りがたきかな父母の墓(彼岸)   12.9.22
われ少し熱くなりたる両国の相撲も終り秋の深まる(旧作)      12.9.23
秋の野に咲きし草花摘み供へ立ち去りがたき父母の墓(彼岸過ぎ)  12.9.25
ふるさともすでに異郷や岩に踞し松風を聞く城山の秋
今年またいとど身にしむ秋の風心に開きし大き穴かな         12.9.26
老ひの眼を楽しませんと散る紅葉舞を舞ふなり陽当たりながら   12.9.29
今日の月隠す雲さえ憎くからずともに眺むる人のなければ(中秋の名月)12・10・1
いつしかに独りとなりし歩みかなわが影とゆく名月の道
中秋を四日過ぎたるころに来て想ひやるかな荒城の月(岡城址)  12.10.5
摘みとりて誰が供へしか曼珠沙華峠に近き父母の墓         12.10.6
日は斜め人生も午後一人飲むモカ珈琲の味ほろ苦き         12.10.8
連絡船汽笛鳴らして出で航ける思ひ出すかなあの日あの時   12.10.10
誰がすむや三角屋根の丘の家庭より溢れ咲けるコスモス      12.10.11
一周忌迎へ飾りし父母の遺影まこと遺影となれり(一周忌)     12,10.14     
いつしかに歩み独りとなりにけり落葉踏む音耳に付きくる      12.10.24
登りきて帽子を脱げば下りてくる蒼き空ありコスモスの丘
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