短歌72     前のページへ          次のページへ

 花火終へしばし虚しき夜の空にまた現るる星と月かな    2024.8.15  旧作
 晩夏光浴びて出で航く外国船見えなくなりて汽笛を鳴らす 2024.8.22 田ノ浦ビーチ懐古
 浜晩夏ひとの影なき砂浜に残る無数の足の跡かな
 この世をば仮の宿りと知りながら人のまた逝き虚しさつのる(ある葬儀に2024.9.8 堤家
 さくさくと落葉踏みゆく森の道落葉踏む音耳につきくる    2024.9・10
森深み落葉踏みふみ踏みゆけば行きて帰らぬ歩みなるかと
 齢のみ敬はれるは悔しけど祝はれること他になきかな   2024.9.16  敬老の日
 君無くてなんぞ月見が楽しかろふただ酔ふためぞ今宵の宴は(故人懐古) 2024.7.17 旧作
 ふる里の峠に近き父母の墓花供へんと摘む曼珠沙華    2024.9.21  帰郷
 吾少し熱くなりたる両国の相撲も終はり秋の深まる      2024.9.23  旧作
 明け方のそぞろ歩きの土手の道鳴く虫の音のすずろなるかな  2024.9.24
 秋風の涼しけれども虚しけり己が心の空洞を吹く(Mの命日)    2024.9.29
 いつしかに秋の流れと川なりて流れくるなり落葉つぎつぎ   2024.10.6
 持ち古し傘頼もしくさしゆけど心を濡らす秋の雨かな      2024.10.7  旧作
 落葉掃き終へて人なき寺の庭たてかけたある竹箒かな(嘱目) 2024.10.8 少林禅寺にて
 風蕭々なびく野原のすすきの穂手を振るごとし沈む夕日に   2024.10.10
 窓あけて遠く見やれば天高く姿ただすや久住連山        2024.10.11
*窓開けて遠く見やれば天高く背伸びするかな豊国の不二
 秋蝶の寄るところなく飛びゆけるつひの命の羽ばたきなるか  2024.10.15
 初鴨を見しより心騒ぐかな去年こぞに違はぬ眺めなれども   2024.10.17 初鴨
 阿蘇はるか久住高原真昼時むすび頬張る野菊の前で     2024.10.18 回想 アザミ台
 阿蘇はるか誰が名付けしか野菊晴れリュックおろしてにぎり頬張る      同上
 水澄める池に降りきて眺むるは己が姿か秋の白鷺       2024.10.23 高尾池
 奥山は秋深むらし流れくる落葉の便り紅葉もみじを告ぐる    2024.10.25
 差しゆけば傘の上うつ雨の音こころを濡らす秋の暮れかな(晩秋) 2024.10.29
 黄金なす稲穂は垂れて田を守るへのへのもへじの案山子頼もし 2024.11.1  案山子祭り
*黄金なす稲穂は刈られ立つ案山子へのへのもへじ間抜け顔かな
 晴れわたる今日日の本の文化の日旗のためとて風少しあり  2024.11.3  快晴旧作)
 冬来ることの確かさ日翳れば鴨の鳴くこゑ音色を変ふる    2024.11.14
 黄金なす銀杏落葉を踏みゆけば思ひ出すかな学園の道    2024.11.15
*黄金なす銀杏落葉を踏みゆけば思ひ出すかな学園通り     
 日翳れば音色の変はる川の音耳につきくる冬の土手道     2024.11.17
 冬の虹消ゑゆくときに見しことを夢路の前に思ひ出しをり    2024.11.18
*消ゑなんとするとき見たる冬の虹夢路の前に思ひ出しをり
 冬の虹消ゑゆくまでを見しことを夢路の前に思ひ出しをり(旧作)
 何気なく帽子を脱いで見上ぐれば太陽ニコニコ冬晴れの空  2024.11.20  快晴
 屋上の旗はためきて目をやれば時雨の雲の由布を下れる  2024.11.21
 初時雨傘をうつ音聞きゆけばさびのこころの知られけるかな 2024.11.26
 冬の空鳩かたまりて飛びゆけるそを追ひかける一羽あるかな 2024.11.28