短歌67
秋すでに清き流れに立つ鷺の脛のあたりに落ち葉寄りくる 2022.10.2 七瀬川
*秋すでに清き流れに立つ鷺の脛のあたりをもみじ葉流る
秋さびしベンチにかけて見てをれば眼まなこの中を落ち葉散りゆく 2022.10.3
秋もはや濁り初めたる空のいろひねもす由布をつつむ雲かな 2022.10.5
うつせみの吾が身の秋も知られけり落ち葉一枚手のひらに受け 2022.10.10
ゆく秋を追ひかけ走るサイクリング野辺の穂すすき手をふるごとし 2022.10.11
わけ入りし森深みかもさくさくと落ち葉踏むおと耳につきくる
森深く落ち葉を踏みてゆきゆけば戻ることなき歩みなるかと
セイタカのアワダチソウも咲き添へて日本の秋の景色整ふ 2022.10.13
セイタカのアワダチソウの咲く空き地手のごと動き機械働く 2022.10.15 ユンボ
セイタカのアワダチソウの繁るなか隠れ咲きをり野菊ひとむら 本歌取り
*セイタカのアワダチソウの繁るなか野菊ひとむら隠れ咲きをり
黄金なす稲穂は刈られ立つ案山子へのへのもへじ間抜け顔かな 2022.10.18 旧作
木々の葉の落ち尽くしたる公園に裸婦の銅像顕はに見えつ 2022.10.21 七瀬川公園
*木々の葉の落ち尽くしたる公園に顕はに見ゆる裸婦の像かな
風急に帽子飛ばされ悔しけりあるべき髪もいまはあらなくに 2022.10.22
*風急に帽子飛ばされ悔しけりあるべき髪もいまはあらなく
いつしかに冬の流れとなりぬらし片脚あげて白き鷺たつ(属目・即興) 2022.10.13 興じて
秋もはや濁りそめたる空の下野菊おほかた花びらを欠く(パロディー) 2022.10.28
風急に吹き散らしたる銀杏の葉秋の終はりを告げて舞ふかな
阿蘇遙か久住高原秋深しバイク走らす穂すすきの道(懐古) 2022.11.1
黄金なす稲穂は刈られ稲架はざも終へ待たれをるなり峰の初雪 2022.11.2
*黄金なす稲穂は刈られ冬ちかし待たれをるなり由布の初雪
日の本の今日晴れわたる文化の日旗のためとて風少しあり(旧句) 2022.11.3 今日雲を見ない
蕭々と吹く秋風の身にしみて沈む夕日に尾花手をふる 2022.11.4
ぬばたまの夜のふけゆけば川淀に浮き寝の鴨の憂き音ねぞ聞こゆ(七瀬川)
手にすれば黄金のごとく輝きぬ君が拾ひし銀杏の落ち葉(青春回顧) 2022.11.9
見上ぐれば高きところに凧あがり太陽ニコニコ冬晴れの空 2022.11.11 七瀬の土手
何事も思ふことなく縁に座し老いの日課の日向ぼこかな(回想父) 2022.11.16 小春日
吊り橋をゆらし渡るや紅葉渓見入るところに瀧もあるなり(九重) 2022.11.20 TV・夢の大吊橋
襟首にまづ一粒や初しぐれすなはち心冬に入るなり 2022.11.23
わが宿の門の山茶花咲きそめて窓に待たるる峰の白雪(旧作訂正) 2022.11.30
*わが宿の門の山茶花咲きそめて窓に待たるる由布の白雪
由布ケ峰のまとへる雲も厚くなりいよゝ師走となりにけるかも 2022.12.1
消えなんとするとき見たる冬の虹まなこの中に消え残るかも 2022.12.5
揚がる凧カイトばかりとなりにけり空は昔に変はることなく 2022.12.11
散らばりてまた固まりて群雀むらすずめ冬の雲浮く空を飛びゆく 2022.12.15
紅葉を終へし山々やゝしばし眠りに入るまえの泰けさ 2022.12.18
紅葉を終へし山々しづまりて遠山並の雪を頂く 2022.12.20
たっぷりと湛へて浸かる冬至の湯ユズを浮かべてコロナ恐れず 2022.12.22 コロナおさまらず
冬の雨雪にならむと待ちをるに濡るるばかりぞ庭の山茶花 2022.12.24
*冬の雨雪にならむと待ちをるに濡るるのみかな庭の山茶花
年用意窓拭き終へて目をやれば豊後の富士の姿正せる 2022.12.29 窓ガラス拭き
枯れ枯れて心も枯れてゆくごとし出逢ふひとなき冬の土手道 2022.12.30 七瀬川の土手
ゆく年や消えてゆく灯と残る灯と団地百戸のそれぞれの夜 2022.12.31 旧作微訂正
初詣願ふは世界平和かな今年ことさら強き柏手 2023.1.1 ウクライナに平和を
初御空雲もなければ思ふかな今年違はずよきことあると(雲一つない初晴れ)
ふるさとは人も家並みも違へども変はらぬ空に揚がる凧かな 2023.1.3
あらたまの年改まりいつしかに五日をすぎて寒に入るなり 2023.1.6 小寒
冬ごもり籠りて居れば冬いよゝ響きも寒き寒に入るかな