短歌68
あらたまの年改まり身もあらた心もあらたと浸かる初風呂 2023.元日
初春を言祝げるにや石たたき庭石にきて石をたたける(追加)
窓に見て出でてまた見る由布の峰雪化粧して正月らしき(同上)
糸切れて枯木に懸かる奴凧ひと見向かねばいたく尾を振る 2023.1.12
二三声友呼ぶ声か寒鴉鳴いて静まる電柱のうへ 2023.1.15
大寒おほさむや寒し寒しと着ぶくれてちぢこまり居る吾の老いたる 2023.1.25 最強寒波襲来
寒すでに耐へて春待つ水仙のうつむき咲ける姿よきかな
寒中を耐へて春待つ水仙のうつむき咲ける姿美し
なにごとも思ふことなく腕を組み目を閉づ老いの日向ぼこかな 2023.1.30
耐へ耐へて待ちに待ちゐしごとくなり明日立春の木々の枝々(節分) 2023.2.3
春立つも光は風とともにありマフラー巻きつけ歩く土手道(立春) 2023.2.4
正直に春立つ山のかすみをり養老院の窓より見れば 旧作
一つ咲く藪の椿のまた咲きて近づく春の速さ知らるる(自然公園) 2023.2.5 旧作
ひと冬を咲き続けたる山茶花も名残の花や三四輪(我が家の生垣) 2023.2.8
*ひと冬を咲き誇りたる山茶花も名残の花や三四輪
差してゆく傘うつ雨の音軽かろくしかと知らるる春の訪れ(春時雨) 2023.2.9
建国を祝ひはためく日の丸の旗はたはたと春風のなか(建国記念の日)2023.2.11
屋根のうへ白き雲浮きアンテナのひかるは春を受信するかな(窓)
ふるさとの梅の便りもスマホにて匂ひよこせよ春風吹いて 2023.2.20 パロディー
春浅く犬を連れての散歩道犬が見つけしタンポポの花 2023.2.27 属目
*春浅く犬を連れての散歩道ポチが見つけしタンポポの花
見つけたる小さな春や名も知らぬ小お草花咲く凍て解けの径 2023.3.4
初蝶を今年も見たる散歩道しばし眼に残る黄のいろ 2023.3.5 旧作微訂正
初蝶を見し昂ぶりや帰りきて妻に告ぐるや子にも告げなむ 同上
タンポポの土手に寝ころび見上ぐれば空は下りくる若き日のごと 2023.3.9
飛びたちてこれより遠き旅ならむ北に向かひて鴨の群れゆく 2023.3.10 七瀬川の土手にて
喜寿といふ齢うれしく候へど鏡に映る顔のうとまし(誕生日) 2023.3.16
喜寿といふ齢うれしく候へど鏡に映る顔のしからず
*喜寿といふ齢うれしく候へど鏡に映る顔の皺かな
ふるさとの峠に近き父母の墓掌を合はすれば鶯の鳴く(墓参) 2023.3.20
咲きてはや散るを思へりさくら花落花ひとひら手のひらに受け 2023.3.28
老ひぬれば花の咲くのも楽しめず散りゆくのみの思はるるかな
幼き日幼心の恋心摘みて捧げしクローバの花 2023.3.30
酌み交はす浮かれ心の花の下落花浮かぶも散るを思はず 2023.4.2 高尾池公園にて
窓わかば飲むコーヒーのほろ苦き味こそよけれゲーテ読みつつ 2023.4.29 昭和の日
聖五月苑の噴水高々と季節のめぐり祝ひ虹懸く 2023.5.1
目覚むればすでに来てゐる屋根すずめ今日の天気を告げ知らすかな 2023.5.10 五月晴れ
牡丹寺いづくと問へば指の先若葉隠れに見ゆる大屋根(旧作微訂正) 2023.6.1
由布ヶ峰の峰現れて晴るるかな麓の村を逃げてゆく雨 2023.7.1
遠けれど近き思ひのウクライナ花火揚がるはミサイル撃破 2023.7.30 七瀬の火群祭り
平和の日平和を願ひねがひつつ平和はいとゞ遠くなりけり 2023.8.6
国守る大義と命いづれぞやテレビに映るウクライナ兵 2023.8.15
朝曇り今日の暑さの思はるる何処かで鳩のくぐもりの声
秋きぬと定かならねど驚きぬ落ち葉一枚ボンネットに乗る 2023.8.15
秋風に吹き飛ばされし夏帽子田ノ浦ビーチ人もまばらに 2023.8.25
さくさくと落ち葉踏みゆく森の道戻ることなき歩みなるかと 2023.9.8
われ少し熱くなりたる両国の相撲も終はり秋の深まる 2023.9.27 旧作
カーテンを揺らし吹き込む秋の風残り少なき暦をめくる 2023.9.30 同上
ランドセル背負ひて子らの帰りゆく吾あもゐるごとしふるさとの道 2023.10.1
持ち古りし傘たのもしくさし行けど心を濡らす秋の雨かな 2023.10.8 旧作
飛びゆくか飛ばされゆくかコスモスを離れし蝶の渓渡りゆく 2023.10.30