短歌66
棘ありて人の厭へる花薊蝶の飛びきてキスをするかな
恋なき手つなぎ園児ら並びゆくたんぽぽの花咲ける土手道(旧作改正)
短夜みじかよの明けゆくあかり窓にさし夢をみる子の寝顔やすけき(偶成) 2022.5.21 懐旧 平和
薔薇一輪今年も贈る誕生日齢よわひ重ぬも心老ひずも(洋子の誕生日) 2022.5.26
騎士のごと君に捧げし薔薇一輪いまも心に枯るることなき
*騎士のごと君に捧げし薔薇一輪いまも心に枯るるなきかな
***薔薇一輪ながき旅路の初めかな ***薔薇一輪君にささげむ騎士のごと(結婚式の句)
幼どち遊ぶは恋のはじめかな摘みて捧ぐるクローバの花 2022.6.1 公園にて
*幼どちすなはち恋の初めかな摘みて捧ぐるクローバの花
若葉風カーテンゆらし吹きこみぬパンとミルクの朝の食卓 2022.6.3
若葉風窓より入れて珈琲を飲みつつ開く今日の朝刊
遠方をみるたのしさよ双眼鏡夏の雲わく峰近づくる(窓) 2022.6.7
雨のなかこの土手道の行き帰りつばめ親しも人に逢はねば(梅雨入り) 2022.6.11 例年より1週間遅れ
帰りたる子に食はせんと篭に盛る故郷の枇杷の黄金色かな(旧作) 2022.6.14 里の家を思い出して
おほかたは目にも留めぬも吾が目にはいとゞ親しき姫女苑の花 2022.6.16 平凡を愛す
姫女苑咲くこの道の行きかへり盧生の夢は昔なるかな
夏きたり海へと急ぎゆく川に浮く空缶の旅をしぞ思ふ(属目) 2022.6.21 夏至
*夏きたり海へと急ぎゆく川に浮く空き瓶の旅をしぞ思ふ
暮れてなほあやめの里の水車止まず回るを月ぞ照らせる(懐古緒方) 2022.6.25 旧作改変
梅雨明けて青空透ける玻璃窓を一筋よぎる飛行機雲かな(梅雨明け) 2022.6.28 平年より 21日早い
飛びゆくやてふてふてふとてふてふとただてふてふと大阿蘇の蝶 2022.6.29 草千里浜 懐古
梅雨明けて青く広がる空高く児らはサッカーボール蹴上ぐる(旧作微改正) 2022.7.2 グランドにて
*梅雨明けて青く広がる空高くサッカーボール児らは蹴上ぐる
ホトトギスしば鳴く声を聞きをればふるさと捨てし悔ひぞ湧きくる 2022.7.3
あじさいの葉裏見つけし蝸牛威嚇をかしも角つき出して 2022.7.5
頂上や喉とほりゆくこと確か立ちながら呑む水筒の水(回想登山) 2022.7.10 府内山岳会
思ひ出すあの日あのとき今日もかも蝉喧かまびすし目瞑りをれば(ある訃報) 田中重雄君の命日
一雷雨去りて晴れゆく由布の峰ねを龍のごとくに昇る雲あり 2022.7.13 夕立
梅雨明けて青を競へる空と海水平線をなぞる船あり(海の日) 2022.7.18 田ノ浦ビーチ回想
(晩夏光あびて出でゆく船一艘沖にまだあり汽笛を鳴らし) 旧作訂正 同上
遠花火観る風流や縁に踞きょし蚊遣り焚きつつ団扇あおげり 2022.7.29 回想我が家
(花火終へしばし虚しき夜の空にまた現はるる月と星かな) 旧作
覗きみる阿蘇中岳の噴火口その崖っぷちに咲くやヤマユリ(記憶より) 2022.8.1 古い記憶
窓のそと夏の雲わく豊後富士吾を招くや若き日のごと 2022.8.5
蝉暑しまためぐり来し平和の日平和の願ひいよゝ遠のく 2022.8.6 ウクライナ侵略
老ひの身の早き目覚めの得なるや目を楽します朝顔の花 2022.8.7 早朝散歩
里の方見やれば夏の雲湧ける父のごとしや入道雲は(窓) 2022.8.8
この祈りとどけと空に放つ鳩飛びつづけるや心の中を 2022.8.9 長崎平和祈念式典
花供へ線香焚いて掌てを合はすただただ合はす父母の墓(墓参) 2022.8.13
終戦かはた敗戦かそはとまれ戦なき世は七十余年 2022.8.15 終戦の日
いつしかに川の流れも秋めきて落ち葉一枚芦間浮きゆく 2022.8.16 公園の小川
このごろの朝の散歩の涼しさよいつも会ふ犬尾をふりてくる 2022.8.19
朝顔におく白玉の朝の露消ゆるともよし吾し知れらば(パロディー) 2022.8.23 本歌取り
ながき脚あし流れに浸し立つ鷺のすがた涼しく秋の風吹く 2022.9.1
今日の月玲瓏なるも楽しめずともに眺むる人しなければ(仲秋の名月)2022.9.10
カーテンをゆらし吹き込む秋の風わが禿頭をいたづらに撫づ 2022.9.14
来てみればコスモスの丘今もかも聞こえくるなり母校のチャイム 2022.9.15
草の葉にこのごろしげき朝の露どの一粒も太陽宿す 2022.9.16
ゆきゆけば故郷にたどり着くごとし一筋の道曼珠沙華の道 2022.9.23 秋分の日
曼珠沙華どこにでも咲き秋陽あきび濃く故郷の径を歩けるごとし 2022.9.28
いつしかに冬の流れと川なりて日に日に鴨の増えてゆくなり 2022.10.1