春立つも光は風とともにあり野山の目覚めしばし待たるる 2022.2.5
丘の上への寒き団地のここかしこ日向日陰の水仙の花(ふじが丘) 2022.2.9
梅が枝えに鼻ちかづけて香をかげばいにしへ人の心つたはる(令和に因み)2022.2.11 梅花の宴
電線や児が指さすに目をやれば雀の中にゐる初つばめ(初燕) 2022.2.12 今年は早し
電線に並ぶ雀に混じりゐて今来た顔の初つばめかな
道変へて梅をたづぬる散歩道通り抜くるを許す庭かな 2022.2.19 平野地区
行き帰り目を楽しますものもなし春はまだまだまだの土手道 2022.2.28 今年春遅し
渡りかけ小川のぞけば水底に動くものあり水温むかな 2022.3.1 公園の小川
*二羽の鴨群れをはなれて泳ぎをり仲のよきかも水温む池(旧作) 高尾池
揚げ雲雀頭上高くでさへづるをしばしは若き心もて聞く(旧作) 2022.3.2 初雲雀
せせらぎの奏づる春を聞きながら尾をふる犬と歩く土手道 2022.3.4 いつも逢う犬
せせらぎの音の奏づるアンダンテ眠気をさそふ菜の花の土手 2022.3.4
わが宿の軒端の梅の花咲けばとき至れりと鳴くやうぐひす(初音を聞く) 2022.3.6 里のわが家懐古
*わが宿の軒端の梅の花咲けばとき至れるとうぐひす鳴くも
電線に音符のごとくとまりゐて小鳥らは歌う早春の譜を(旧作) 2022.3.12
一つ咲く藪の椿のまた咲きて近づく春の早さ知らるる(同) 2022.3.13
初蝶を見したかぶりや散歩道しばしは眼まなこに残る黄の色 2022.3.14 初蝶を見る
朝方のそぞろ歩きの土手の道ポチが見つけしタンポポの花
*朝方のそぞろ歩きの土手の道犬が見つけしタンポポの花
ヘルメット光らせながら漕ぎ急ぐ自転車少女菜の花の土手
*春風に髪なびかせて漕ぎ急ぐ自転車少女の素足健やか(旧作)
花椿落ちたる外はこともなし猫にあくびのうつる縁側(平和) 2022.3.15 ミケの思い出に
祝はるることも寂びしや誕生日称へらるるは齢のみにて(76歳) 2022.3.16
おほかたのいにしへ人に勝りける己が手柄の齢なるかな 齢ばかりが古人超え
目覚めよき今日の眠りや大砲に蝶のとまれる夢をみしかば(平和) 2022.3.17 NO WAR
*目覚めよき春の眠りや大砲に蝶のとまれる夢をみしかば ウクライナに平和を
父母の眠りたまへる安けさや墓を洗へばうぐひすの声(彼岸) 2022.3.21 帰郷
咲きそめて散るを思へる桜花今年の春も去年こぞに似たると(パンデミック) 2022.3.25 コロナ禍収まらず
わが前を栩栩くくと飛びゆく蝶ありてしばし連れ添ふ散歩道かな 2022.3.27
花の下しばし憂き世を逃れきし人浮かるるも浮き世なるかな 2022.3,31
山国の春はいかにと人問はば朝日ににほふ山桜花(パロディー) 本居宣長頌
咲けばはや散るを嘆ける桜かな落花ひとひら手のひらに受く 2022.4.2
散る花の下で繙ひもとく文庫本わが青春を読み返さんと(旧作) 回顧定年退職
公園やベンチの憩ひながければ蝶の舞ひきてとまるわが杖 2022.4.9
タンポポの土手に寝ころび見上ぐれば空は近づく若き日のごと 2022.4.13
自転車も寝せて寝ころび若者はスマホをしをりタンポポの土手
花散りてもとのとほりとまたなりて人急ぎゆく葉桜の道 2022.4.16
ながき日を垂れて気怠き藤の花逢魔が時となりて幽かそけし 2022.4.17 おうまがとき=夕方
丘にきて吹けばタンポポ飛びゆくや昔も今も変はらぬ空に 2022.4.18 しあわせの丘
相寄りて蝶の縺るる花のうへ狂ほしきかな春の終はりは 2022.4.20
キューピット恋の矢を射る花の園蝶がキスするチューリップかな(偶成) 2022.4.25
まだながくなりてゆく日の夕間際垂れて気怠き藤の花房 2022.4.30
五月来ぬ苑の噴水高々と季節のめぐり祝ひ虹懸く 2022.5.1
*薔薇五月苑の噴水高々と季節のめぐり祝ひ虹懸く
いろいろのこと思ひ出すこの道や今は古道花あざみ咲く(故郷) 2022.5.3
花いばら昔ながらのこの道や首なし地蔵今もそのまま
窓わかば朝のコーヒーゆっくりと連休なかばゆく所なし(みどりの日) 2022.5.4
若葉風黒髪を吹き白髪しらが吹きわが禿頭をやさしく撫づる 2022.5.5
ふさはしき花瓶なければ花薊コップに飾れる母のごとくに 2022.5.19
*ふさはしき花瓶なければ花薊コップに飾るも母のごとくに