短歌65

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春立つも光は風とともにあり野山の目覚めしばし待たるる         2022.2.5
丘の上の寒き団地のここかしこ日向日陰の水仙の花(ふじが丘)     2022.2.9
梅が枝に鼻ちかづけて香をかげばいにしへ人の心つたはる(令和に因み)2022.2.11  梅花の宴
電線や児が指さすに目をやれば雀の中にゐる初つばめ(初燕)      2022.2.12  今年は早し
電線に並ぶ雀に混じりゐて今来た顔の初つばめかな            
道変へて梅をたづぬる散歩道通り抜くるを許す庭かな           2022.2.19   平野地区
行き帰り目を楽しますものもなし春はまだまだまだの土手道        2022.2.28  今年春遅し
渡りかけ小川のぞけば水底に動くものあり水温むかな           2022.3.1  公園の小川
*二羽の鴨群れをはなれて泳ぎをり仲のよきかも水温む池(旧作)              高尾池
揚げ雲雀頭上高くでさへづるをしばしは若き心もて聞く(旧作)         2022.3.2   初雲雀
せせらぎの奏づる春を聞きながら尾をふる犬と歩く土手道         2022.3.4   いつも逢う犬
せせらぎの音の奏づるアンダンテ眠気をさそふ菜の花の土手      2022.3.4
わが宿の軒端の梅の花咲けばとき至れりと鳴くやうぐひす(初音を聞く)  2022.3.6   里のわが家懐古
*わが宿の軒端の梅の花咲けばとき至れるとうぐひす鳴くも
電線に音符のごとくとまりゐて小鳥らは歌う早春の譜を(旧作)      2022.3.12
一つ咲く藪の椿のまた咲きて近づく春の早さ知らるる(同)        2022.3.13
初蝶を見したかぶりや散歩道しばしは眼まなこに残る黄の色       2022.3.14   初蝶を見る
朝方のそぞろ歩きの土手の道ポチが見つけしタンポポの花
*朝方のそぞろ歩きの土手の道犬が見つけしタンポポの花
ヘルメット光らせながら漕ぎ急ぐ自転車少女菜の花の土手
*春風に髪なびかせて漕ぎ急ぐ自転車少女の素足健やか(旧作)  
花椿落ちたる外はこともなし猫にあくびのうつる縁側(平和)     2022.3.15  ミケの思い出に
祝はるることも寂びしや誕生日称へらるるは齢のみにて(76歳)  2022.3.16  
おほかたのいにしへ人に勝りける己が手柄の齢なるかな               齢ばかりが古人超え
目覚めよき今日の眠りや大砲に蝶のとまれる夢をみしかば(平和)   2022.3.17  NO WAR
*目覚めよき春の眠りや大砲に蝶のとまれる夢をみしかば             ウクライナに平和を
父母の眠りたまへる安けさや墓を洗へばうぐひすの声(彼岸)       2022.3.21  帰郷
咲きそめて散るを思へる桜花今年の春も去年こぞに似たると(パンデミック) 2022.3.25  コロナ禍収まらず
わが前を栩栩くくと飛びゆく蝶ありてしばし連れ添ふ散歩道かな      2022.3.27
花の下しばし憂き世を逃れきし人浮かるるも浮き世なるかな       2022.3,31
山国の春はいかにと人問はば朝日ににほふ山桜花(パロディー)               本居宣長頌
咲けばはや散るを嘆ける桜かな落花ひとひら手のひらに受く         2022.4.2
散る花の下で繙ひもとく文庫本わが青春を読み返さんと(旧作)                  回顧定年退職
公園やベンチの憩ひながければ蝶の舞ひきてとまるわが杖         2022.4.9
タンポポの土手に寝ころび見上ぐれば空は近づく若き日のごと       2022.4.13
自転車も寝せて寝ころび若者はスマホをしをりタンポポの土手
花散りてもとのとほりとまたなりて人急ぎゆく葉桜の道           2022.4.16
ながき日を垂れて気怠き藤の花逢魔が時となりて幽かそけし        2022.4.17  おうまがとき=夕方
丘にきて吹けばタンポポ飛びゆくや昔も今も変はらぬ空に         2022.4.18  しあわせの丘
相寄りて蝶の縺るる花のうへ狂ほしきかな春の終はりは          2022.4.20
キューピット恋の矢を射る花の園蝶がキスするチューリップかな(偶成)  2022.4.25
まだながくなりてゆく日の夕間際垂れて気怠き藤の花房          2022.4.30
五月来ぬ苑の噴水高々と季節のめぐり祝ひ虹懸く              2022.5.1
薔薇五月苑の噴水高々と季節のめぐり祝ひ虹懸く
いろいろのこと思ひ出すこの道や今は古道花あざみ咲く(故郷)        2022.5.3
花いばら昔ながらのこの道や首なし地蔵今もそのまま
窓わかば朝のコーヒーゆっくりと連休なかばゆく所なし(みどりの日)    2022.5.4
若葉風黒髪を吹き白髪しらが吹きわが禿頭をやさしく撫づる         2022.5.5
ふさはしき花瓶なければ花薊コップに飾れる母のごとくに         2022.5.19
*ふさはしき花瓶なければ花薊コップに飾るも母のごとくに

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