短歌64
*拾ひもつ落ち葉一枚手にぞ沁む己が身の秋の思はるるなり
深みゆく秋のしじまと思ふなり妻との会話このごろのなし 2021・10・25
うろこ雲ひろごりひろごり道はるか高速道路アクセルを踏む(懐古) 2021.10.26 博多行
背高のアワダチソウの繁るなか見つけて嬉し野菊ひとむら 2021.10.29 拾遺
ゆく秋を追ひかけゆくやサイクリング野辺の穂すすき手をふるごとし 2021.10.30
カーテンをゆすり吹き込む秋の風残り少なき暦をめくる(旧作) 2021.10.31 微訂正
日の本の今日晴れわたる文化の日旗のためとて風少しあり(旧作) 2021.11.3
この道やひとのくるかと振り向けばいつしかひとり秋の暮かな 2021.11.5
珈琲を飲みつつ見れば峰まとふ雲の厚みも冬隣りかな 2021.11.6
いつしかに冬の流れと川なりて蔭りて変はる水の音かな(立冬) 2021.11.7
行きゆけば心も枯れてゆくごとし歩み急げる冬ざれの土手 2021.11.14
*行きゆけば心も枯れてゆくごとし歩み急げる冬ざれの道
道変へてなほも分け入る紅葉狩りあらぬ処に滝のあるなり 2021.11.20 旧作バージョン
老ひの目を楽しませんと散る紅葉舞ひを舞ふなり夕日の庭に 2021.11.21 少林寺・隠寮
蹴散らせば若き吾あり校庭の銀杏落ち葉の舞ひてかがやく 2021.11.25 母校
手にすれば黄金のごとく輝きぬ君が拾ひし銀杏の落ち葉(相聞)
金色の銀杏落ち葉の並木道かくやとおもふつひにゆく道 2021・11・26
*金色の銀杏落ち葉の並木道かくやとねがふつひにゆく道
学生ら吐く息白く急ぎゆく冬の朝日の当たる土手道 2021.11.29 冬来たる
冬の雲垂れて圧する丘のうへ団地百戸の這いつくばれる 2021.12.1 ふじが丘
冬すでに朝日に染まる小都会ビルより低く鳩の群れ飛ぶ 2021.12.6
草枯るるこの土手道の行き帰り人にあはねば寂ぞ知らるる 2021.12.8 侘び寂び
*草枯るるこの土手道の行き帰り人にあはねば侘びの知らるる
紅葉も見ごろを終はりややしばし山は眠りの前の安けさ 2021.12.15
*紅葉も終はり山々静まれる眠りにはいる前のひととき
冬すでに門を閉ざして住みをれば浮世は遠き山茶花の宿(パンデミック) 2021.12.17 旧作再考
冬川に浮いて空缶流れをりすなはち知れぬ行方なるかな 2021.12.18
たぷっりと湛へて浸かる冬至の湯柚子を浮かべてコロナ怖れず(冬至) 2021.12.22 別府温泉
ガラス拭き終はれば山河新たにて姿正して窓に収まる(年用意) 2021.12.26 窓拭き
見上ぐれば高きところに気球浮き太陽ニコニコ冬晴れの空 2021.12.28 小都会
老ひの身に炬燵よきかな熱き茶を飲みつつ見れば窓に雪ふる 2021.12.29
ひと年の心の垢も落さんとながく浸かれる大晦日の湯(旧作) 2021.12.31 昼風呂
初春や川の流れは変はらねど奏づる音色年を寿ぐ(元日) 2022.1.1
切り取りて額に入れたき眺めかな豊後の富士の初春の景
あらたまの年あらたまり身も新た心も新たと浸かる湯かな
*あらたまの年あらたまり身も新た心も新たと浸かる初風呂
何気なく帽子をとりて見上ぐれば太陽にこにこ冬晴れの空 2022.1.10 成人の日
何ごとも思ふことなく縁に座し老ひの日課の日向ぼっこかな 2022.1.15
行きゆけば心も枯れてゆくごとし出逢ふ人なき冬ざれの土手 2022.1.18 バージョン
*行きゆけば心も枯れてゆくごとし出逢ふ人なき冬の土手道
いざ寝んと部屋の灯りを消し見ればガラス戸に浮かぶ冬の満月(寒満月)
*いざ寝んと部屋の灯りを消し見れば玻璃戸に浮かぶ冬の満月
見上ぐれば紅梅の花咲初めて高きところで太陽にこにこ 2022.1.19 七瀬公園の梅開花
日々ながめ眺めて厭かぬ豊後富士今日のながめの雪化粧佳し 2022.1.20 大寒
空染むる力はなくて冬日落ちしばらくつづく黄なる夕空
寒の雨侘しき庭に降りをれば濡れてうつむく水仙の花 2022.1.23
*寒の雨雪にもならず降りをれば水仙の花濡れてうつむく
飾らんと鋏手にして見つめればみなうつむける水仙の花 2022.1.31
正直に春立つ山の霞みをり自づと見やる里の方角(立春) 2022.2.4
正直に春立つ山の霞みをり養老院の窓より見れば(旧作) 義理の叔母を思い