短歌63

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珈琲を飲みつつ窓の外見れば梅雨もまた好し雨の紫陽花(旧作)
梅雨もまた好しと思へばよしよしとうなづくごとし雨の紫陽花        2021.6.15
紫陽花の葉裏角出すカタツムリ愛らしきかな汝の威嚇
姫女苑手折り懐かし土手の道吾子あこにもたせて手をひき行きし     2021.6.18  懐古
暮れなづむ夏至の日の空夕焼けて豊後の富士のシルエット佳(夏至) 2021.6.21 大夕焼け
梅雨深く家に籠れる吾が妻の隣にかける長電話かな            2021.6.22
今はさて角愛らしき蝸牛若き日の妻ふと思はるる(偶成)          2021.6.28 
仏とは求むものかは父母のほかにあらじと吾は思へる
君居てもゐなくなりても蝉高音たかねまた巡り来し七月十日(田中君命日    2021.7.10
遠方を見やる楽しさ梅雨も明け久住の山に湧ける夏雲(梅雨明け)    2021.7.13
暮れてなほ番匠川の大水車止まず回るに蛍飛び交ふ(懐旧)   ふと 昔、家族で蛍観に行ったことを思い出し
向日葵の庭に妻干す汚れ服子にまだ残る少年期かな(同上)    秀晃の思春期ごろ吾が俳句のパロディー  
梅雨明けて晴れわたりたる空高くサッカーボールを子らは蹴上ぐる(旧作改定) 2021.7.15
梅雨明けて気球を上ぐる小都会ビルのガラスに映る夏雲          2021.7.16
雨あがり遠く虹見ゆ庭さきや紫陽花の葉を這へる蝸牛まいまい        2021.7.19
*雷雨去り遠く虹見ゆ庭さきや紫陽花の葉を這ふ蝸牛           
灯を消せばしかとあるなり窓の月梅雨の明けたることの証に       2021.7.20  枕元
子どもらの姿消えたるグランドで時を刻むは向日葵時計(夏休み)    
掛けおきし麦藁帽子ふと被り鏡を見れば亡き父の顔            2021.7.26
暑き日を沈めて山河安らげるまだしばらくは焼くる夕空(猛暑)       2021.7.28    旧作改定
朝曇り今日の暑さの思はるるどこかで鳩のくぐもりの声(朝曇り)      2021.7.29    俳句の季語
赤とんぼ思ひ出さすや幼き日団扇を持ちて追ひし庭さき(懐旧)      2021.7.31   母の実家
てくてくと日盛りの道ゆく吾についてくるかな己が濃き影         2021.8.5 七瀬の土手を歩きながら
てくてくと行く日盛りの土手の道見つけて嬉し昼顔の花
ヒロシマ忌午前八時の暑き空入道雲のふと恐ろしき(原爆忌)       2021.8.6
終戦かはた敗戦かうすれゆく戦の記憶蝉かまびすし(終戦記念日)    2021.8.15
雷雨去り霧たちのぼり虹たちて現れくるや由布の山容          2021.8.21
早起きの得三文にあらずかな玉と偽る朝顔の露(僧正遍昭に呼応して)  2021.8.25
磯晩夏釣り人ひとり岩に立ちしぶきを受けて長き竿ふる         2021.8.30   田ノ浦ビーチ
晩夏光あびて去りゆく豪華船遠ざかりゆくほどにゆっくり
晩夏光あびて去りゆく豪華船汽笛を鳴らし沖にまだをり
帽子とり丘の径ゆく安けさや髪にある風野菊にもあり          2021.9.10  しあわせの丘
秋風の心地のよさよ帽とれば吹かるる程の髪もまだあり        2021.9.12
秋風の心地のよさよ丘のうへ野菊の花と共に吹かるる
この道や歩み急げる秋の暮ふとふり向けば人のくるなし        2021.9.18  七瀬の土手
仰ぎ観てやがて頭かうべをたるるかなふと想はるるふる里の月(名月) 2021.9.21  仲秋の名月
曼珠沙華咲いて明るきこの道やふと続くかとふる里までも      2021.9.23   彼岸の中日
丘にきて帽子を脱げばすがすがし頭かしらを撫づるコスモスの風    2021.9.29   しあわせの丘
*登りきて帽子を脱げば丘すがし頭を撫づるコスモスの風
秋の窓眺めてをればゆく雲や来し方知らず行方知らえ(れ)ず       2021.9.30
森深み落ち葉ふみふみ分け入れば行きて戻らぬ歩みなるかと   2021.10.1    自然公園の森幻想
ランドセル背負ひ子どもら戯れ帰る曼珠沙華の道秋の陽の濃し   2021.10.3
カーテンをゆらし吹き込む秋の風心地よきかな吾が頭かしら撫づ    2021.10.8
秋風を厭ひて窓を閉むるかな吾が禿頭をいたづらに撫づ        2021.10.10
曼珠沙華あちこちに咲き畦に咲き黄金なすかな稲穂のみのり    2021.10.15  秋たけなわ
黄金なす稲穂は刈られ立つ案山子へのへのもへ字まぬけ顔かな
拾ひ持つ落ち葉一枚指に沁む己が身の秋思はるるかな        2021.10.20  公園の森にて
天高し丘にのぼれば秋もはや野菊の花の欠ける花びら        2021.10.22


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