短歌60
いつしかに冬の流れと川なりて蔭れば変はる水の音かな(微訂正) 2020.11.11
散り際はせめて優雅に夕紅葉かくやと思ふ老いの眼まなこに 2020.11.12
*散り際はかくあるべしと夕紅葉舞ひを舞ふなりわが目の前で
*老いの目を楽しませと散る紅葉舞ひを舞ふかな夕日の庭に
去年こぞの径変へて分け入る紅葉狩りあらぬところに瀧のあるなり(九酔渓) 2020.11.15 逆コース回顧
*吊り橋を渡り分け入る紅葉狩りあらぬ処に滝のあるかな(九重大吊橋) 滝二つ
黄金なす稲穂は刈られ立つ案山子へのへのもへ字間抜け顔かな(案山子祭り中止を告げる案山子)
蹴散らして児らが遊べる銀杏の葉まぶしや黄金のごとく輝く 2020.11.19
*子どもらが蹴上げて遊ぶ銀杏の葉舞いてかがやく黄金のように
行きゆきて心も枯れてゆくごとし足早にゆく初冬の土手 2020.11.23
*行きゆきて心も枯れてゆくごとし足急ぎゆく冬ざれの土手
初冬の流れとなりし浅川にこの頃多し白鷺の数(七瀬川) 2020.11.28
何事も思ふことなく縁に座し猫を撫でつつ日向ぼっこかな(偶成) 2020.11.29 空想
向こふよりやってくるひと近づくにつれて小さき冬晴れの土手 2020.12.1
若者ら護送車を追ひ駆けてゆく涙ぐましや終つひの闘争(周庭氏ら禁固刑) 2020.12.2 香港弾圧ほぼ完了
逢ふひともなく行きをればうら枯れて侘びぞ知らるる初冬の土手 2020.12.4
黄金なす稲穂は刈られ稲架はざも終へ雪装ふを待たる由布ヶ峰 2020.12.5 湯布院回想
見てをれば競ふがごとく着地して落ち葉をかしく皆裏返る(中学生が観察解明)2020.12.6 TVで
わが宿の山茶花の花咲初めて今年は早し由布の冠雪(初雪) 2020.12.15
冬深むことの知らるる珈琲の湯気の温みの鼻に触さはるに 2020.12.16
(冬深むことぞ知らるる珈琲の湯気の温みの鼻にふるるに)
ゆったりと首まで浸かる冬至の湯柚子を浮かべてコロナ恐れず(冬至) 2020.12.21 TV
寂しさに耐へたる声か寒烏一声啼くや電柱の上 2020.12.26
ランドセル背負ひ子どもら群れ急ぐ冬の朝日の染むる土手道 2020.12.27
ガラス拭き終ふれば山河新たにて姿正して窓に収まる(年用意) 2020.12.28
一年ひととせの心の垢も落とさんと長く浸かれる大晦日の湯(旧作) 2020.12.31
大年の夜空見上げて洟すする星またたけど地球は寒し(同) パンデミック
冬川のたつる瀬音はかそけきも流れつぐなり去年きょねん今年と(元日) 2021.1.1 令和3年 日が昇るこの尋常の尊けりご来光とてかくぞ思へり(パンデミック)
目に馴れし眺めなれども今日の由布正月らしき雪の装ひ
*目になれし眺めなれども今日の由布正月らしや雪化粧して
*初春を祝ふ姿や由布の峰雪化粧して窓に収まる
枯れかれて人めも離かるる枯野道獣のごとく通りねけをり(詠題・枯) 2021.1.4 詠み初め
マスクして主ぬしこそ知らねいつも会ふ犬にあひけり初春の土手 2021.1.5 パンデミック
初鴉と言へば目出度く聞こえけるポりの容器にゴミを漁るも 2021.1.6
起きぬけにカーテンをひき目を遣れば久住の山は雪の曙 2021.1.7
積るかと思ひをりしがはや溶けて水仙の葉に残る初雪(初雪)
降る雪や眺めてをればいつしかに老いの眼まなこのなかに降りゐる 2021.1.8
冬灯ふゆともしともす団地の家々のなかの一つに帰り着きけり 2021.1.10
冬籠り炬燵よきかな蜜柑など食べ温まるからだと心(つれづれ3首) 2021.1.14 ステイホーム
窓の由布眺め炬燵に入りをればわが家よろしき老いを送るに
凜としてその姿よし由布の峰富士のごとくに雪をいただき
飾らんと鋏はさみ手に持ち眺むればみな項垂るる水仙の花 2021.1.15
(飾らんと鋏手に持ち眺むればみな俯ける水仙の花)
聞くすらもいたく厭はし寒といふ寒き響きの寒に入るかな(大寒) 2021.1.20
春来るはまだまだ遠し空染むる力もなくて夕日落ちゆく
寒の雨雪にならんと待ちをれど濡るるのみなる水仙の花 2021.1.23
しめやかに枯れ木を濡らす寒の雨の垂れる雫にほのかな光
いくたびも友呼ぶ声や寒鴉返す声なく山河静まる 2021.1.25