短歌59

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法師蝉ツと鳴き出でておどろきぬ秋の訪れかくも突然         2020.8.25  全国的な猛暑続く
晩夏光あびてこぎゆく自転車の遠ざかるほど光るヘルメット      2020.8.29
(晩夏光あびて出でゆく白き船見えなくなりて汽笛を鳴らす)               旧作・田ノ浦ビーチ
朝顔の露こそ好けれよく見ればどの一粒も宿す太陽          2020.9.1
消ゆるとも消ゆるとも良し消ゆるとも今を輝く朝顔の露         2020.9.2
磯晩夏魚釣る人の岩にたち糸光らせて長き竿振る          2020.9.5  七瀬で釣り人を見て   
*磯晩夏波うち寄する岩にたち魚釣る人の長き竿振る
秋風に飛ばされゆくか乗りゆくかコスモス離れ蝶の飛びゆく     2020.9.10
(秋風に飛ばされゆくか乗りゆくか花を離れて蝶の飛びゆく)
秋風の心地のよさよ帽とれば吹かるる程の髪もまだあり       2020.9.14
マスクして人みな距離をおいてゆくコロナの巷秋の風吹く      2020.9.15
見はるかす夕焼け空の彼方にて十万億土君と隔たる(微訂正)  2020.9.16 Mの命日に夕焼けを見て
敬老と敬はれるはうれしきも老の字を見て思ひ乱るる(祝敬老の品) 2020.9.21  ふじが丘自治会
新しきふる里の道よろしきも古道愛かなし曼珠沙華咲き(帰郷)   2020.9.22  春分の日
ふる里はすでに異郷と思へども動かしかねつ父母の墓(墓参)
(ふる里の峠に近き父母ふぼの墓誰が供へしか曼珠沙華の花)
(花供へ線香焚いて手を合はすただただ合はす父母の墓)
曼珠沙華咲きて明るきこの道や続くがごとしふる里までも      2020.9.25
*曼珠沙華咲きて明るきこの道やふとふる里に続く道かと
コロナ怖じ籠る月日の過ぎゆきて虚しきままに秋も深まる      2020.9.26
吾少し熱くなりたる両国の相撲も終はり秋の深まる(旧作)      2020.9.28
深みゆく秋のしじまといふべきか妻との会話この頃のなき      2020.9.29
持ち古りし傘頼もしくさしゆけど心を濡らす秋の雨かな(旧作)     2020.9.30
秋の蠅手をすりをるを打ち殺しあはれ命と不意に思へり        2020.10.1
電線を潜りてのぼる名月をひとり見やるや缶ビール手に(仲秋の名月)
(君なくてなんぞ月見が楽しかろふただ酔ふためぞ今宵の宴は)
カーテンを揺らし吹き込む秋の風残り少なき暦をめくる
羊雲ビルのガラスを埋めつくし都会の秋の今したけなは        2020.10.3
阿蘇さやか御立ち見所芒ゆれ外輪山の秋は深まる(昭和天皇展望所) 2020.10.7  回顧
秋晴れの土手の道ゆく自転車のみなマスクしてヘルメット着く    2020.10.9  パンデミック
うろこ雲広ごりひろごり道はるか高速道路握るハンドル(博多行)   2020.10.10  旧作微訂正
いつしかに風土に根付き背高のアワダチソウも秋を彩る       2020.10.12
見えねどもたびたび見遣る阿蘇の方今ひとたびと思ふ心に     2020.10.13  阿蘇を恋う
(天高く外輪山は今もかも杖突き見やる阿蘇の噴煙)
秋晴れの由布を眺めて部屋に居りコロナの巷恐れおそれて     2020.10.14
天高くそびえる窓の豊後富士峰のあたりを隠す雲あり
秋雨のそぼ降る景色よろしけれ木々の葉色を染むる雨かと     2020.10.17
さくさくと落ち葉踏みつつ分け入ればこの森道の戻るなきかと    2020.10.18 公園の森妄想
秋風を厭ひて閉めし窓なれや早おもはるる冬のおとづれ       2020.10.20
この頃や雲も粗雑になりにけるビルのガラスに映る晩秋       2020.10.24
この道や遇ふひともなき秋の暮目的地まで暮れゆくなかれ     2020.10.30  晩秋の土手道
うろこ雲ひろごりひろごり市まち遙か湾岸道路アクセルを踏む(別府行)          旧作改正
今日のこのかく晴れわたる文化の日風ややありてなびく日の丸(即興) 2020.11.3
(晴れわたる今日日の本の文化の日旗のためとて風少しあり)              旧作
秋の池澄めるを覗き嘉よみすれど映りて悔し己が白頭(高尾池)  
秋の水覗いて心澄みゆくも映りて悔し己が白頭
ゆく雲に手をふるごとき芒の穂秋もいましか終りなるらむ(冬至)    2020.11.7
初鴨を見るやくしくも冬至の日季節のめぐりしかと見定む(初鴨)            七瀬川にて5、6羽
いつしかに冬の流れと川なりて翳りて変はる水の音かな       2020.11.10

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