短歌58
(窓わかば飲むコーヒーのやや冷めて朝食長き連休初日)(補遺)
愁ひつつ丘にのぼればタンポポの絮を飛ばすも春への別れ 2020.5.10
☆愁ひつつ丘にのぼりてタンポポの絮を飛ばすも春への別れ
牡丹寺いづこと問へば指の先若葉隠れに見ゆる大屋根(英雄寺) 2020.5.11 懐古
淋しきは淋しきままにまたをかし人生所詮ひとりの歩み(偶成) 2020.5.13
御仏の深き教へもなんのその今日の知らせに心乱るる(光子叔母逝去) 2020.5.14
訃を聞くもしばしいたらぬ涙かなまことならずと思ふ心に
世の中の苦しきことを逃れんと丘にのぼれば海の近づく 2020.5.18 パンデミック
霞みなき青海原を白き船夏を運ぶがごとく近づく(田ノ浦) 回想
薔薇の花今年も贈る誕生日齢よはい重ぬも思ひ変はらず(洋子69歳) 2020.5.26
五月尽空の映れる窓ガラス夏初めての雲の湧きをり 2020.5.28
雨やんで八つ橋渡る菖蒲園池の真中まなかに浮かぶ日輪(神楽女湖花菖蒲園) 2020.6.2 回想
☆日傘さし八つ橋渡る菖蒲園日輪はいま池の真ん中(妻)
☆雨傘を日傘に変へてゆく妻の前を蝶飛ぶ白き蝶飛ぶ(参考) 花菖蒲園
姫女苑咲く土手道を走りゆく自転車少女ヘルメット光らせ 2020.6.8
帰りたる子に食はせんと盆に盛る故郷の枇杷の黄金色かな(旧作微訂正) 2020.6.10 懐古
☆帰りたる子に食はせんと篭に盛る故郷の枇杷の黄金色せり(旧作)
部屋ごもる雨のひと日のつれづれの目を慰むる窓の紫陽花(梅雨入り) 2020.6.11 北九州・大分
愛めづれども人に棘ある花薊揚羽蝶きて長きキスする(属目) 2020.6.13
ほととぎすしば鳴く声を聞きをればふる里捨てし悔ひぞ湧きくる 2020.6.14
由布の峰ありし姿でしかとあり梅雨の晴れ間の窓を開くれば 2020.6.16 晴天
吊り橋を揺らしわたれば渓深く聞こえくるなり郭公の声(旧作訂正) 2020.6.20 公園の吊り橋にて
雨もよし梅雨またよろしと思ひつつ傘をさしゆく紫陽花の径 2020.6.21 公園の森径
ふる里もすでに異郷や人代はり棘とげもて迎ふ花いばらかな(故郷疎遠) 2020.6.24 いばらの花を見て.
春の月見たるところにたまさかや梅雨の晴れ間の月のあるなり 2020.7.1
濡れ燕しだれ柳を掠めきて土手ゆく吾の傘に飛びくる 2020.7.3
コーヒーを飲みつつ窓の外見れば梅雨もよろしと雨の紫陽花(梅雨深し) 2020.7.5
遠方をちかたの民の悲惨はをさまらず時に非情や五月雨の河(河川氾濫) 2020.7.9 いたる所で大災害
雨あがり子どもら傘を回し行く遠く虹立つ通学の路 2020.7.13
人界のことはよそ事世に荒ぶコロナは知らに初蝉の声(初蝉) 2020.7.16 去年とほぼ同じ
ひさびさの梅雨の晴れ間の空仰ぎ帽子を取りて大気吸ふかな(散歩) 2020.7.17
ひさびさに姿現す豊後富士しかとおさまる窓の額縁 2020.7.18 長梅雨
一雷雨過ぎたるあとの水たまり空の映りて蝶の羽浮く(旧作訂正) 2020.7.21
梅雨明しことの確かさビルの上笑顔の戻る看板の顔(梅雨明け) 2020.7.30 例年より11日遅れ
梅雨明けて最も纏ふ日の光わが家の庭の向日葵の花(連作)
(梅雨明けてものみな纏ふ日の光最もまとふ向日葵の花) 旧作
愁ひなき花にてあるか向日葵の大輪どれも太陽に向く
愁ひなき花と見をれどふと哀し炎の画家の愛めでし向日葵
目覚むれば朝より繁き蝉の声今日のひと日の暑さ思へり 2020.7.31 猛暑
梅雨明けて空気一杯吸ひたきもコロナの巷マスクしていく 2020.8.1
阿蘇遙か久住高原秋早し牛を追ひゆくコスモスの道(立秋) 2020.8.7 回想
聞こえねど耳のうちにて鳴り響くあの刻とき告ぐる長崎の鐘(11時2分) 2020.8.9
夏雲湧き日に日に増ゆる感染者コロナの巷マスクは暑し 2020.8.11 パンデミック第2波
終戦日子らは氷菓を舐めてをり平和の味と知りて舐めるや 2020.8.15
*終戦日子はアイスクリーム舐めてをり平和の味と知りて舐めるや
川中の岩に佇む白鷺に日は射そそぐも水影は秋 2020.8.20
暑き日を沈めて山河安らげる尚しばらくは続く夕焼け 2020.8.21 記録的猛暑
(暑き日を沈めて山河安らげるまだしばらくは焼くる夕空) 真っ赤な夕焼け
秋風の心地のよさよ帽とれば今まだ少し残る髪吹く 2020.8.25
コロナ怖じ家に籠りしこの夏や海にも行かず山にも行かず 2020.8.26