短歌57

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電線に音符のごとくとまりゐて小鳥らは歌う早春の譜を(旧作)
春来るは嬉しけれどもかつ淋し日に日に減るや川淀の鴨       2020.2.18  旧作微訂正
初つばめ早くも見たりランドセル背負い指さす子の指の先(初燕)   2020.2.20 今年は早い       
冬朝日まだ覚めやらぬ都市まちを染めビルより低く鳩の群れ飛ぶ   2020.2.22 小都会
新しき御代の天皇誕生日日本晴れとは天慮なるかな(天皇誕生日) 2020.2.23 雲一つない快晴
二羽の鴨群れを離れて泳ぎゆく付かず離れず水温む池        2020.2.24  高尾池
春浅きそぞろ歩きの土手の径数へつつゆくタンポポの数       
自転車を寝かせて人も寝ころびてスマホをしをりタンポポの土手   2020.2.25
初蝶を見し昂ぶりのたまゆらや夢のごとくに見失ひけり(初蝶)     2020.3.6  七瀬の土手
揚げ雲雀囀る美空見上ぐれば己が魂そこにあるかと          2020.3.7
揚げ雲雀頭上高く囀るをしばしは若き心もて聞く(旧作)
ひさかたの光は風とともにあり野にも山にも春の訪れ(郊外)     2020.3.11  風光る
川奏づ春の流れのアンダンテ聞きつつ歩く土手の道かな      2020.3.14
嬉しともまた寂しとも誕生日生きながらえて歳ぞ重ぬる(74歳)   2020.3.16 親友に次々先立たれ
(嬉しともまた寂しとも誕生日皺のみ増えて歳ぞ重ぬる)
ふる里に帰り来たりし安けさよ信号なき道菜の花のなか      2020.3.19 帰省
遠き日の己が姿もあるごとし子どもら帰るふる里の道
(遠き日の己が姿もあるごとし子どもら帰る夕焼けの道)
ランドセル背負ひ通ひしこの道や小石拾えり何とはなしに
ふる里の辻の地蔵は今もかも人も眺めもいたく変はれど
花供へ線香焚いて掌を合はすただただ合はす父母の墓(彼岸)
春風に髪なびかせてこぎ急ぐ自転車少女ヘルメット脱ぎ      2020.3.20  春分の日
ぽつぽつと山の桜の咲初めて麓の桜しばし待たるる        2020.3.21 霊山
遠眺めして近づかぬ花見かな山桜愛し山の子なれば      2020.3.25  少林寺隠寮にて
春うらら新聞開き読みをれば猫のあくびのうつる縁側        2020.3.27  懐古 ミケ
花の雨もしや止むかと思はれて幾たびも寄る今日の窓かな    2020.3.30  桜満開
☆花の雨さては止むかと思はれて幾たびも見る今日の空かな
春風の心地よけれど悔しけれ髪薄くなり帽子吹かるる        2020.4.2
桜花命いっぱいに咲きをれどあはれ寂しき観るひともなし(パンデミック) 2020.4.5 パロディー
(咲きみちて今を盛りの花の下盃を手にして散るを思はず/当座)           去年
散りゆきしあまたの命ふと思ふ落花ひとひら掌に受け
咲き満ちて今は散りゆく桜花散るのもみごと花の吹雪ける      2020.4.10
花吹雪き舞ひ散る中に佇みて眼閉づればあの日あの時  車椅子の父を花見に誘ったとき
花の雨そぼ降るなかを帰りきて傘をたためば落つる花びら     2020.4.13
春雨に妻がさしゆく持ち古りし傘の花柄ふと眼に沁みる(追加)
(花散りて繙く西行歌集かななほもこころに花を愛でんと)                
花散りてしばし淋しくなりし目をまた楽しませんと藤の花咲く     2020.4.15
☆花散りてしばし空しくなりし目をまた慰むる藤の花房
まだ長ふなりてゆく日の暮れ間際垂れて気怠き藤の花房      2020.4.17
藤の房垂れて気怠き昼下がり蜂の羽風に花びらの散る
縺れ飛ぶ蝶に乱るる思ひかなさても空しく春のすぎゆく(パンデミック) 2020.4.18
(縺れ飛ぶ蝶に乱るる思ひかな空しきままに春の過ぎゆく)
☆縺れ飛ぶ蝶に乱るる心かな目の当たりはや春の過ぎゆく(再考)
いつまでも窓を離れぬ春の雲ながめてをれば母に肖てくる     2020.4.20
また元の通りとなりて行く人の自づと急ぐ葉桜の道           2020.4.27
(また元の通りとなりて足早に人の過ぎゆく葉桜の道)
ランドセル背負ひ通ひしこの道や今は古道いばらの咲ける(故郷)  2020.5.1  追加
窓若葉朝のコーヒーややながく連休初日行くところなし(外出自粛要請)2020.5.2 パンデミック
草わかば運動靴に履きかへて大地踏みゆく日曜の朝(みどりの日)  2020.5.4  旧作
母すでに亡き母の日のカーネーションなほも買ふかな今は妻にと  2020.5.9


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