短歌55

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手のひらに落ち葉一枚受けとめてふと身に染むや己が身の秋       2019.8.27
(手のひらに落ち葉一枚受けとめてふと思はるる己が身の秋)
赤とんぼ吾がゆく前を飛びかひて帰り急げる夕焼けの道(懐旧)       2019.9.1  再掲載
季節なき都市にも秋は知らるなりビルのガラスに映る鯖雲         2019.9.2  
秋風とともに増えたる法師蝉減りてゆくなり秋風の中            2019.9.5  虚子句より
秋風の心地よけれど悔しけり吾が禿頭を悪戯に撫づ(旧句改正)
秋風に髪なびかせて走りゆく自転車少女ヘルメット脱ぎ          2019.9.7
寂しさは酔ひ中にも知られけり独り眺むる月にしあれば(仲秋の名月)   2019.9.13
カーテンを揺らし吹き込む秋の風わが禿頭を悪戯に撫づ          2019.9.18
秋の窓眺めてをれば思はるる流るる雲と人のゆく末
杖ついてそぞろ歩きに出でゆけば草木は招く秋風の中           2019.9.19
暮急ぐ今日の名残りや由布ヶ峰に細くたなびく夕焼けの雲                  日が短くなる
父母の墓を洗へばたまさかや二羽連れ立ちて蝶の舞ひくる(彼岸の入り) 2019.9.20また蝶がくる不思議
曼珠沙華咲きて明るき野の道を子供ら帰る吾も居るごとし(帰郷)
台風の過ぎたる朝の空晴れて陽はまた昇るいつものごとく(台風17号)  2017.9.23
吾少し熱くなりたる両国の相撲も終はり秋の深まる(旧作)
駅前に立つ厳めしき銅像も近づきやすし秋風の中(宗麟像)         2019.9.25  大分駅
登りきて帽子を脱げば青き空下りてくるなりコスモスの丘(しあわせの丘)  2019.9.26  空とコスモス
うろこ雲広ごりひろごり道遙か高速道路アクセルを踏む(博多行き)     2019.10.1  回顧
天高く運河の岸に沿ひ行けば野菊一群ひとむらアワダチソウの中      2019.10.2  平和公園裏
(天高く運河の岸に沿ひ行けば野菊一群泡立ち草の中)
秋深くひとり分け入る森の奥落ち葉踏む音耳につきくる(県民の森)     2019.10.3
深みゆく秋のしじまといふべきか妻との会話この頃のなき          2019.10.5
秋見んと窓を開きて見渡せば久住の山も背伸びして見ゆ          2019.10.7
ステッキをつき秋晴れの土手をゆく何とはなしに芒折持ち          2019.10.10
ステッキをつき秋晴れの土手をゆく何気なきかな芒折持つ(訂正)
後の月待てども雲のはれぬままただ酔ふための酒となりぬる(十三夜)   2019.10.11
秋深き森に分け入り行き行けば戻ることなき歩みのごとし          2019.10.13
深みゆく秋のしじまの露けさや珈琲カップに触るる唇             2019.10.20
(ゆく春の海を見下ろす喫茶店コーヒーカップに触るる唇)     拾遺・青春回顧  十文字原
カーテンを揺らし吹き込む秋の風残り少なき暦をめくる(旧作)
立ちのぼる霧のなかより現るる山色づきぬ秋雨の後             2019.10.24
持ち古し傘頼もしくさしゆけど心を濡らす秋の雨かな(旧作)
秋の雨そぼ降るなかを帰りきて傘をたためば落つるもみぢ葉(同)
初鴨を見しに心の昂ぶりぬまた次からも次からもかな(初鴨)        2019.10.25
いつしかに冬の流れと川なりて日に日に増ゆる鴨の数かな(旧作)
秋の雨草木を枯らし降れるなか独りの吾や傘をさしゆく           2019.10.29
(秋の雨草木を枯らし降るなかを独りの吾の傘をさしゆく)
阿蘇遙か肥後と豊後の国境殊に野菊の吹かれをるかな(回顧)     2019.10.31 アザミ台展望所
(天高く双眼鏡で眺むれば阿蘇は近づく野菊の前に)                    旧作
川中の岩に降り立つ白鷺の影に知らるる水の澄かな(立冬)       2019.11.8
この道や別れ見送る秋の暮君振り向かず消えてゆくなり(夢にT君をみて) 2019.11.10 故田中重雄君
稲刈られあとに残され立つ案山子へのへのもへ字間抜け顔かな(旧作改正)        案山子祭り
冬ごもり独り炬燵で寛げば一杯の茶ぞ今日の御馳走           2019.11.16  炬燵を入れる
わが門の山茶花の花咲初めて窓に待たるる峰の白雪(旧作)
この道やわが青春の並木道いまは杖つき落ち葉踏みゆく        2019.11.19  人生の並木道
紅葉狩り去年こぞの径変へわけ入ればあらぬ処に滝のあるなり(九酔渓) 2019.11.22 逆コース回顧
冬兆す遠山並の鎮もりて待たれをるなり由布の初雪           2019.11.23
濡れ急ぐひとをしり目に差し行けば傘頼もしき初時雨かな        2019.11.28

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