短歌53

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ぽっぽっぽっと山の桜の咲き初めて麓の桜咲くを待たるる(霊山)     2019.3.20
墓洗ふ後の孝行せんなきも生ある限り弔はんとぞ (墓参)         2019.3.21 春分の日
春来たと告げてやらまし黄水仙添へて供へし父母の墓
春風に散る線香の煙かな洗ひて拝む父母の墓
遠眺めして近づかぬ眺めかなこの眺め好し山桜花(少林寺・隠寮)     2019.3.24  山桜満開
浮かれ見る花にあらざる山桜吾は愛せり山の子なれば
しばらくは蝶と連れ添ふ土手の道行方定めぬ歩みなるかな       2019.3.25
亡き義母ははが庭に植ゑたる桜の木思ひ出せとて花を咲かせり(開花) 2019.3.26  旧作訂正
注ぎ足して飲む珈琲の生ぬるきひとりの時間春灯のもと         2019.3.27
うす霞みして昼近き眺めかな由布をあなたに咲ける菜の花       2019.3.28
咲き満ちて今を盛りの花の下もと盃を手にして散るを思はず(花見)
梅が枝に鼻近づけて香を嗅げば伝ひくるかな万葉の宴(新元号決まる) 2019.4.1 令和・万葉集より  
梅が枝に顔近づけて目つむれば香りは伝ふ万葉の御代                梅花の宴
老ひぬればただ酔ふのみぞ盃さかづきに落花を浮かべ宴うたげたけなは  2019.4.5
散りゆきしあまたの命ふと想ふ落花一片ひとひら手のひらに受け(旧作)
花吹雪くなかを押しゆく車椅子ふと亡き父の乗れると思ふ         2019.4.6
散るさまの潔きかな惜しみなく昼一頻り花の吹雪ける
さくら花散るを嘆かふ老ひの目に今年の春もまた早く過ぐ
風に乗る落花の行方ふと思ふ即ち知れぬ行方なるかな
花散りて繙く西行歌集かななほも心に花を愛でんと            2019・4・10
また元の通りとなりて人々の足ばやにゆく葉桜の道            2019.4.13
ネクタイを締めて前行く人の後杖を突きゆく葉桜の道
鞄手にネクタイのひと足早に通りすぎゆく葉桜の道
恋なき手つなぎ園児ら通りゆく一人遅るるタンポポの土手        2019.4.16
咲くよりも落つる椿となりにける眼まなこに見えて春の過ぎゆく       2019.4.17
藤の花垂れて静かな昼下がり蜂の羽風で揺るる一房          2019.4.21
まだ長ふなりてゆく日の夕間暮れ垂れて幽かそけき藤の花房
まだ長くなりてゆく日の夕間際垂れて気怠き藤の花房(暮春)  
気がつけば励ましてをりタンポポのつぎつぎ飛んで川を渡るを     2019.4.24
春霞消えて広がる空と海水平線をなぞり船ゆく(田ノ浦)         2019.4.26
夏兆す園の噴水高々と季節の巡り祝ひ虹掛く              2019.4.28 
夏兆す明るきひかり園に満ち噴水高く虹をかけをり
多かりし天災人災越えてきし平成の代の平和尊し(退位)       2019.4.30
新しき御代を祝いて髭を剃る鏡の中の己変はらず(令和元年)     2019.5.1
新しき御代はじまると髭を剃る鏡の中の己変はらず
丘に来て見遣れば四方の霞解け久住の山に夏の雲わく(しあわせの丘) 2019.5.3
丘に来て見遣れば遠く見ゆる海霞の解けて白き船ゆく 
窓若葉注ぎ足して飲むコーヒーの二杯目ぬるき朝の食卓(みどりの日) 2019.5.4
ふと覗く通りすがりの薔薇の門女主あるじの名札気をひく          2019.5.5
丘を越え海に着かんと上りゆく坂道の上夏の雲わく           2019.5.10
初夏の青海原を傷つけてモーターボート沖に出で航(旧作)
行き行きて戻ることなき思ひかな分け入りてゆく新緑の森       2019.5.14 
聖五月苑そのの噴水高々と薔薇の季節を祝ひ虹掛く(香りの森博物館)  2019.5.15 回顧
牡丹寺何処いづこと問へば指の先若葉隠れに見ゆる大屋根(英雄寺)  2019.5.16 回顧
一弁もまだ失はぬ日の牡丹眼まなこに収めカメラに収む                  小都抄より
クローバを摘みて捧ぐる幼き子すなはち恋の初めなるかな       2019.5.20 七瀬の土手
不如帰しば鳴く声を聞くときぞ捨てしふる里いとど懐かし         2019.5.24
(不如帰しば鳴く声を聞きをれば捨てしふる里いとど懐かし)

               

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