空染むる力もなくて冬日落ちまだまだ遠し豊国の春 2019.1.21
空染むる力もなくて冬日落ち消されゆくなり玻璃窓の景
見上ぐれば寒紅梅に日の匂ひたまたま空に昼の月見ゆ(早春) 七瀬公園の梅林
見上ぐれば梅の蕾に日の匂ひたまたま空に昼の月見ゆ(早春・白梅)
見上ぐれば老いの眼に太陽は微笑むごとし冬晴れの空 2019.1.24
若者ら吐く息白く走りくる朝日に向かふ冬ざれの土手 2019.1.25
若者ら掛け声高く走りくる朝日に向かふ雪解けの土手(初雪) 2019.1.26 バージョン
降る雪に傘差し行けばこの道や別れし友の姿の今も 回想M
降る雪を眺めてゐれば来し方や想ひだすなり青春の日々
降る雪を眺めてゐれば来し方や想ひ出すなり流離さすらひの日々 宮崎回顧
遠き日も昨日のごとく思はるる雪の降る日はこころ子どもに
冬ごもり独り炬燵で蜜柑剥く己も似るか父の晩年 2019.1.31
寒の雨雪にもならず夜に入り物を濡らして心を濡らす
冬ざれの曠野あらの走れるバスの旅心の中うちも枯れてゆくなり(博多行き) 2019.2.2 回想
窓を開け遠く見やれば正直に春立つ山の薄く霞める(立春) 2019.2.4
立春や風寒けれど光あり春を尋ねて土手の道行く
立春や風寒けれど光あり春を見せんと押す乳母車 旧作改正
目にも見ゑ春の訪れ知らるなり藪の椿の一つ咲きたり 2019.2.5 公園の森にて
一つ咲く藪の椿のまた咲きて近づく春の速さ知らるる(旧作)
大空に光のあれば枝伸ばし春待つ木々と心通はす(待春) 2019.2.8
水温む流れに長き脚浸し立つ白鷺のながく動かず
たはやすく直ぐに至らぬ春なれや名残りの雪をいとど降らする 2019.2.10 北日本記録的大雪
雪とけて声のあふるるグランドや鉄棒の児に峰のさかしま 2019.2.12
ぶり返す冬の寒さも憎からず耐へて春待つ水仙の花 2019.2.13
コーヒを飲みつつ見やる由布の峰今日また今日の眺めなるかな 2019.2.14 窓
冬帽子持ち古したる旅かばん送りたかりしかかる晩年
春浅く頬被りして花植ゑるひと眼の中で母と重なる 2019.2.15 散歩途中花畑あり
水温む小川を渡る児らの影飛び石伝ひ跳ねてゆくなり 2019.2.17 自然公園の小川にて
今日の月知る人ぞ知るスーパームーン団地百戸を隈なく照らす 2019.2.19 スーパームーン
後戻る春もまた好し北に去る鴨との別れしばし留まる 2019.2.22
梅咲いて平成の代もあとわづか戦なき世の鶯の声(天皇在位30年) 2019.2.24
初蝶を今年も見たる散歩道しかとまなこに留む黄の色(初蝶) 2019.2.25 七瀬川土手
初蝶を見し昂ぶりの老ひてなほひと日まなこに残る黄の色
落ち椿道に転がりおもしろし踏まれずにあり帰り路にも 2019.2.28
咲きてはや落つる椿ぞ疎ましき春の終はりの始めなるかな
春光を浴びて土手行く自転車の走り去りゆくほどに輝く 2019.3.1
*春うらら土手を漕ぎゆく自転車の遠く去りゆくほどに輝く(改定)
春ひとり飲む珈琲のほろ苦き味に思へり若き過ち 2019.3.3
飲み干しし珈琲カップの手にありて永き春日を眺め暮せる
春かすみ薄くかかりて昼深し菜の花のなか一両列車ゆく 2019.3.5 久大線
春かすみ薄くかかりて昼近し菜の花のなか列車過ぎゆく(車窓)
乳母車春を見せんと押しゆけば蝶現れて前を飛びゆく 2019.3.8 七瀬の土手にて
蒲公英の花見出でてまた見れば名もなき花も咲かす道草 2019.3.9
取り出でて運動靴を履きゆけば若き吾あり若草の径 2019.3.11
春光をまとひふり撒きヘリコプター天地の間を音立てて飛ぶ 2019.3.13 七瀬公園に飛来して去る
祝はるることも寂しき誕生日敬はるるは齢のみにて(73歳) 2019.3.16
老ひぬれば浮世の恨み消えゆきて心に映る景色美し 2019.3.17
世の中は常なきものと思へども寂しきままになほも生きなん
老ひてまた子供に戻るこころかな雲雀聴きつつ土手の道行く 2019.3.19