短歌51

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稲刈られなほも田圃に立つ案山子へのへのもへじ間抜け顔かな     2018.10.24
己が身の秋も深まる思ひかな落ち葉踏みゆく木漏れ日の道                 公園の森
注ぎ足して飲むコーヒーの三杯目秋の夜長の灯火ともしびのもと       2018.10.26 灯火親しむ
鴨の数日に日に増えてゆくなへに冬の流れとなりてゆく川 (七瀬川)    2018.10.28  
己が身のことを思へば今年また寂しさまさる秋の暮かな           2018.10.29    
深みゆく秋のしじまといふべきか妻との会話途絶へがちにて        2018.10.30
秋深むゆゑにやあらむこのごろの妻との会話途絶へがちなる
飛びゆくか飛ばされゆくかコスモスを離れし蝶の谷を渡れる
去年こぞの道変へて分け入る紅葉狩りあらぬところに滝のかかれる(九酔渓)     回顧・逆コース
稲雀群るる刈田になほありて一本足の案山子傾く               2018.11.1
深みゆく秋のかそけさ知らるなり独り親しむ灯ともしびのもと
晴れわたる今日日の本の文化の日旗のためとて風少しあり(旧作)     2018.11.3
見てをればなべて落ち葉のおもしろし着地を決めて裏がえるかな      2018.11.5
老いの目を楽しませんと散る紅葉皆おのおのの舞ひを舞へるも
コスモスの咲く土手道を漕ぎ急ぐ自転車少女の脚の健やか         2018.11.6
日々見やる由布の姿は変はらねど今日見る由布はまた今日の由布(青山常運歩)      
屋上や眺め飽きたる由布の峰登りてみたくなりし秋晴れ(わさだタウン)   2018.11.11
前方に阿蘇の噴煙見えそめて高原道路アクセルを踏む(やまなみハイウエー)         回顧
コスモスや大観峰は今もかも独り眺むる阿蘇の噴煙(追加)
(コスモスや大観峰は今もかも杖つきて見る阿蘇の噴煙)
天高く阿蘇の五岳の隠れなし帽子を取りて望む人あり(旧作微訂正・昭和天皇立ち見処)   津田先生
阿蘇遙か誰が名付けしか野菊晴れ車を止めて見遣る白煙(バージョン)          牧の戸峠
秋の雨そぼ降る中を帰りきて傘をたためば落つるもみじ葉(旧作)      2018.11.12             
日々眺め眺め飽きざる由布の峰心通ふはいはば恋人            2018.11.18
立ちのぼる霧のなかより現るる山ぞ装ふ秋雨の後(彩雨)          2018.11.19 昨夜雨         
五六枚風に抗ふ枝の葉もやがて散らんと思ふ侘しさ  
黄金なす銀杏落ち葉も散り果てて立つ裸木の冬と真向かう         2018.11.21
振り向かば亡き友あとを来るやうな濃き夕焼けの帰り道かな(懐旧)    2018.11.24 牧典功の思い出に  
気が付けばいつか独りの落ち葉道落ち葉踏む音耳につきくる       2018.11.25  公園の森
今年また垣の山茶花咲き初めて己が心も冬に入るかな           2018.11.27
わが門かどの山茶花の花咲き初めて窓に待たるる峰の白雪(旧作)
差し行けば傘のうえ打つ秋雨の寂しき音の耳につきくる           2018.11.28
老いの門閉ざし籠れば山茶花の花咲き継ぎて冬ぞ深まる           2018.12.6
見上ぐれば太陽微笑むごとくなり久しぶりにてながく空見る(退院)     2018.12.25  右肩脱臼2週間入院
阿蘇彼方久住高原秋定かコスモスの道牛の後行く(拾遺)
起きぬけにカーテン引けば豊後富士雪装ひて窓に納まる(初冠雪)    2018.12.29 
(起きぬけにカーテン引けば由布の峰雪装ひて窓に納まる)
大年の夜空仰ぎて思ふかなまた加はりし星はいづれと           2018.12.31
(大年の夜空見あげて思ふかなまた加はりし星はどれかと)
正月も午後は翳りとなりゆきて夕かたまけて風の出でけり(元日)     2019.1.1.
願ひごとさしてなければ初詣世界平和を願ひ柏手(歳神社)         2019.1.2
水仙をコップに活くる妻のくせ今も変はらず朝の食卓             2019.1.5  題詠
拾ひもつ骨の軽さや箸寒し<俳句>                      2019.1.14 叔母の火葬
拾ひもつ骨の軽さや箸の先さしも気丈なひとでありしに (旧ホテル南明荘女将)      神田洋子享年89
梅が枝に鼻近づけて香を嗅げば昔のひとのこころ伝はる(旧作)      2019.1.15 公園の紅梅開花
照るも好し日陰るもまた水仙の花うつむける姿似合はし          2019.1.17
冬ひと日つねの鴉も終に来ず電信柱暮れてゆくなり(窓)          2019.1.19

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