短歌48

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風寒く春は名のみと思へども藪の椿のすでに数輪                 2018.2.13 公園の森にて
(風蕭々春は名のみと思へども藪の椿の数輪の紅)
きさらぎの藪を隔てて聞こゑくる瀬音に交じる春の足音(追加)
義理チョコのほろ苦けれど甘ければふとしてみたき老いらくの恋(バレンタインデー) 2018.2.14 
(薔薇の花血汐のごとく赤ければふとしてみたき老いらくの恋)                    類題追加
梅咲いて平成の代もあと僅か戦なき世の鶯の声                    2018.2.18
梅が枝に鼻近づけて香を嗅げばいにしへ人の心伝はる
山並に雪は残れど燕きて春告げしらす使者のごとくに(初燕)             2018.2.19
春ひとり悔やみつつ飲むコーヒーの味苦けれど過去は過去かな           2018.2.21 ある後悔
(世の中の苦しきことを逃れんと山に入りきて枯れ木折るかな)                    旧作
杖突いて草萌え初むる土手行くや大地の眠り目覚ませるごと
流れきて流れゆくかな春の水橋の上にて見入る人あり(七瀬川の橋にて)      2018.2.22 
二度三度声をしくじりたる後の初音めでたき藪の鶯(初音・訂正)           2018.2.17 公園の藪
春風の心地のよさよ吹かれゆく今日の散歩の足の向くまま              2018.3.1
遠山に雪は残れどランドセル背に児ら急ぐ春風の土手
海に入ることを急がぬ春の水しばらく通る菜の花のなか               2018.3.2
春ひとり飲む珈琲や飲み干せば珈琲カップに溜まるアンニュイ           2018.3.4
傘をさすことの楽しや春雨の頭上でたつる音を聞きつつ               2018.3.5
梅の花にほひて遠き昔かな母が買ひきし鶯の笛                   2018.3.6  梅満開
梅の花にほひて遠き昔かな競ひて吹きし鶯の笛(改正)                        鳥と
紅梅にカメラ構へて近寄れば花ぞ匂へる香は映らねど(追加)
乳母車春を見せんと押しゆけば凍て解け径に萌ゆる若草             2018.3.10  七瀬の土手
読み解きて万葉の歌おもしろし男女の恋の昔も今も                         東歌
河原にて児らが競ひて抛る石春の流れを跳ねてとびゆく             2018.3.11  
初蝶を今年も見たり散歩道老いの眼に沁みる黄の色(初蝶・黄)         2018.3.12   七瀬の土手
初蝶を見したかぶりのなほもかも眼閉じても見ゆる黄の色
初蝶を見したかぶりの今もかも夢路のきはに想ひ出しをり
春風の心地よけれど悔しさよ髪少なくて頭かしら撫でらる
(春風の心地よけれど悔しけれ帽子とばされ頭撫でらる)
若草や運動靴を履きゆけば軽くぞなれる老いの足取り              2018.3.14
(草わかば運動靴に履き替へて大地踏みゆく日曜の朝)                     旧作
グランドの大き時計の刻とき過ぎて球蹴る児らの夕影長し(日脚のぶ)     2018.3.15
齢のみただ目出度しと祝はるることにも慣れてまたも年寄る(誕生日)     2018.3.16 72歳
(齢のみただ目出度しと祝はるることにも慣れてまたも年とる)
ふる里の通ふひとなき峠路に車停むればスミレ花咲く(旧道)          2018.3.18 彼岸の入り
(ふる里の通り寂れし旧道に車停むればスミレ花吐く)
父母眠る墓を洗ひて手向くれば線香の煙春風に散る(墓参)
父母眠る墓前にて掌を合はすれば線香の煙春風に消ゆ
仏とは見えて見えざる真まことをば失せて気づきぬ母と父とに(追加)
芽吹かんと春を待つ樹の枝々に小鳥らとまりさへづり渡る(春後戻り)      2018.3.21 彼岸
差しゆけば雨もまた好し春雨の傘の上うつ音のたのしき
雨あがり霧たちのぼる山襞を龍のごとくに昇る雲あり(旧作微訂正)            雨後の山を観察
菜の花に蝶の飛びかひ昼深し聞こえくるかな遠き波音(しあわせの丘)      2018.3.24
わが庭の義母が植えたる桜の木想ひ起こせと花を咲かする(一周忌を前に)   2018.3.25  庭の桜
春風に散りて乗りゆく花びらのまなこのなかを長く飛びゆく            2018.3.26
カーテンの透き間を漏るる月の影隣りの妻の寝顔を照らす(春月)        2018.3.27 偶成
咲き満ちし花を眼まなこに留めおきて酒酌むわれや散るを思はず         2018.3.28  老いを楽しむ
朧月夜桜並木の路行けば今宵遭ふひとみな知るごとし              2018.3.29  満月
(朧月夜桜並木の路行けば知るも知らぬも親しきごとし)
移る代も山の姿は変はらぬと杖立てて見る山桜花(退位・即位の日決まる)    2018.3.30 昭和・平成・??
                 

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