短歌43

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初燕早くも見たり今来たと橋を潜りて見せにけるかな(初燕)    2017.3.17
乳母車春を見せんと押しゆくに子は眠りをり菜の花の土手     2017.3.19
餌を漁る鴉の黒き濡れ羽の艶えんにぞ見ゆる春の雨かな      2017.3.20
窓の外春の雨降る街見れば傘をさす人濡れてゆく人
春すでに梅の盛りも過ぎければ間のびするかな鶯の声(公園の吊橋)2017.3.21
日永さに落ちて転がる花椿春の終わりの初めなるらむ        2017.3.22
減りてゆく春を思へり落ち椿日に日に多し庭掃きをれば
近づける春を伝へる声ならむ囁き初めし小川の流れ(拾遺)     2017.3.24
足早にスクランブルの交差点渡る人波春遠からず(トキワ前・拾遺)
シャボン玉空の映りて飛んでゆく屋根より高く春風に乗り      2017.3.27
(シャボン玉空の映りて飛んでゆく次から次に春風に乗り)
春真昼一両列車の過ぎてゆく出湯の里の菜の花のなか(湯布院) 2017.3.28
(春真昼赤き電車の過ぎてゆく豊後平野の菜の花のなか)      
春すでに梅の盛りとなりにけり戦なき代の鶯の声(天皇退位の噂)  2017.3.30
花椿落ちて転がることの外こともなき庭椿また落つ(椿追加)    2017.3.31
遠くより鐘の聞こゆる春夕べ霞の奥の奥にふる里        
弥生尽土手の斜面の若草に転まろぶ若者自転車も寝す       2017.4.1
(弥生尽土手の斜面の若草に憩ふ若者自転車を寝す)
春霞ビルを覆ひて昼深し窓より見ゆる街の長閑のどけし
春霞街を隠してのどかなり歩を緩めゆくタンポポの土手(追加)
春の夜や女楽しく語りをりコーヒーカップに触るる唇         2017.4.2
春ひとり飲む珈琲のほろ苦き味こそ好けれ今日も暮れゆく
山桜咲きて定まる己おのが春もともと吾は山の子なりき       2017.4.4
年々や庭の桜の咲くころに帰る一児のありて待たるる(庭の桜開花)2017.4.6
(年々や庭の桜の咲くころに帰り来る児のありて待たるる)
年年としどしの桜の花は変はらねど今年は今年今年の桜
家を捨て帰ることなき所かな霞の奥の奥のふるさと         2017.4.8
咲き満ちて早や嘆かるるさくら花落花ひとひら掌てのひらに受け   2017.4.9
花のもと浮かれ心は変はらねど落花目に沁む盃の中
化粧けはひして出でゆく妻の傘をさす姿ゆかしき花の雨かな   2017.4.10
(化粧して出でゆく妻の傘をさす仕草をかしき花の雨かな)
春の夜の鏡の中の己が顔ながめてをれば父のゐるかと     2017.4.14
春霞ビルを隠して昼近し自転車寝せて憩ふ草土手
いづれより聞こえてくるか花の暮れ霞の奥で撞ける鐘の音    2017.4.15
(遠くより鐘の聞こゆる花の暮れいづれの寺の撞く鐘ならん)
花吹雪散るを急げる花のもと宴うたげをすれば回る酔ひかな    2017.4.16
立ち尽くす河原の鷺の濡れ姿優しと見るや春雨のなか      2017.4.17
春灯下気づけば深きもの思ひ珈琲カップを手に持ちしまま    2017.4.18
ブラックで飲む習はしの珈琲の味ほろ苦く春の暮れゆく
去りてゆく春を愁ふる声ならむどこかで鳩のくぐもりの声
落ちてより掃かれずにある苔の上乙女椿の朽ちてゆくかな(安友庭園)
薔薇の苑勢ひづきし噴水の季節の巡り祝ひ虹架く        2017.4.19
春灯下地球儀ながく見てをれば想ひは巡る帆船の旅      2017.4.20
花の雨もの憂く窓を見てをれば曇りガラスに映る顔かな(追加) 2017.4.25
落ち椿掃き集むれば春深し箒を立てて我が身憩はす(訂正追加)
(落ち椿掃き集むれば春深し箒を立てて煙草銜へる)
飛ばし行く若き自転車遠ざかるほどに輝く初夏の土手      2017.4.26
永き日も逢魔が時となりにけり垂れて気怠き藤の花房     2017.4.29
まだ長ふなる日に垂れて藤の花黄昏時の気怠さ誘う

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