短歌41

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二三ふたみ声鴉の鳴きて飛び行くに続く声なく冬の深まる           2016.12.1
(二三声高き梢で鴉鳴き続く声なく冬の深まる)
散る紅葉あはれと観るも老ひの目を楽しませんと舞を舞ふなり       2016.12.2
冬晴れの空に揚がれる一つ凧をかしと見るも将はた寂びしとも        2016.12.3
移る世も空は変はらぬ思ひかな高き所に凧の揚がれる
初時雨降りくる中を差しをれば傘の上打つ雨の音かな            2016.12.4
(冬の雨そぼ降る中を差し行けば雨の音する傘の上かな)
わが門の山茶花の花咲き初めて窓に待たるる由布の初雪         2016.12.6
子が掬ひ魔法のようにまき散らす銀杏の落ち葉黄金に変はる        2016.12.7
冬晴れの由布を眺めて畏かしこみてなんとはなしに帽子を脱げり       2016.12.9
久々に帽子を脱ぎて見上ぐれば鳶の舞ひをり冬晴れの空
空門の庭にしあるか現うつつより映る紅葉を愛づる池の面(少林寺)     2016.12.10
樹々もまた冬に構へるごときかな葉を落ち尽くし尖る枝々           2016.12.12
ポーズ決め枯れ木の間あひに立つ銅像顕はに見ゆも人振り向かず(自然公園)
起き抜けに窓のカーテン引けば見ゆ久住の山の雪の曙(久住初雪)       2016.12.16
凧揚がる空おもしろき尾を振れるあたりに雪の豊後富士見ゆ(由布初冠雪)
浄土とて近く思はる冬雲の間より漏れくる光見をれば              
冬晴れの空を飛び行く鴉あり急ぎ飛びゆく何急ぐらん              2016.12.17
嬰児みどりごの手を離れたる嬉しさよよちよち歩く小春日の庭          2016.12.19
無防備に猫の眠れる姿かな遠きテロ聞く小春日の庭(ドイツでテロ)      2016.12.22
聴きをれば遠き記憶を呼び覚まし吹き散らしゆく木枯らしの声        2016.12.23
(聴きをれば遠き記憶を呼び起こし吹き飛ばしゆく凩の声)
冬の海縹渺として波ばかり目を慰むる船影もなし(田ノ浦)           2016.12.26
冬の虹束の間立ちて失せゆけど今日のひと日の心に残る          2016.12.27
冬の虹消えゆくまでを見しことを思ひ出しをり夢路の前に(旧作)
一年ひととせの心の垢も落とさんと長く浸かれる大晦日の湯(旧作)       2016.12.31
大年の星空見上げ洟すするいかなる年の来るか知られず(世界の政情不安)
日の本の年の初めの太陽を讃へはためく日の丸の旗(元日)         2017.1.1
(日の本の年の初めの太陽を讃へはためく屋根の日の丸)
初鏡写るは己が顔なれど父のゐるかとふと思はるる
モナリザに似ても似つかぬ顔なれど微かに笑まふ母の遺影も
平らなる海に荒ぶる波もなし世もかくあれと願ふ初春(田ノ浦ビーチ)      2017,1,2
初春の海に荒立つ波なくも寒き沖には今も艦ふねあり(追加)
目出度きはかかることにも石たたき来て石たたく初春の庭(鶺鴒)           
切り取りて額に入れたき思ひかな豊後の富士の初春の景
(切り取りて額に入れたき思ひかな豊後の富士の初雪の景)
今年また来なくなりたる年賀状命かなしと思ふ年頭               2017.1.6
子守唄聴くがごとくに北風の窓打つ音を聞きつつ寝をり             2017.1.7
移る世に変はることなき眺めかな凧の尾を振るふる里の空          2017.1.9
マフラーを首に巻きつけ街ゆけば風が背を押す吾が子の方へ(福岡市)   2017.1.11
水仙の花を剪りきて飾らんと花瓶を探す母の遺物に              2017.1.14
白き鷺凍てるがごとく動かずに枯れ葦原に冴えて佇む(寒波到来)      2017.1.16
ぬばたまの夜の深けぬれば川中の浮き寝の鴨の憂き音聞くかも     2017.1.19
(ぬばたまの夜の深けぬれば川中の浮き寝の鴨の憂き音聞こゆる)
白き鷺枯れ葦原に降りたちて日々の寒気に冴えて佇む(大寒)        2017.1.20
正月を過ぎて虚しくなりし空賑ははせんと凧の揚がれる(七瀬凧揚げ大会)   2017.1.21
狂ひ咲く一輪なるか春告ぐる先駆けなるか寒中の梅(トランプ大統領就任の日にたまたま梅花を見て)
冬の雲低く垂れたる丘の上百の家々固く窓閉づ(ふじが丘)           2017.1.22
起きぬけに由布を見らんと窓に寄りカーテン引けば峰の新雪        2017.1.24  
春来たることの確かさ梅が下もと深く息吸ひ香吸ひ込む(公園の梅林)     2017.1.28
春来たることの確かさ雪の間の藪の椿の一輪の赤(題詠)
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