短歌40
見てをれば次から次と散る落ち葉着地を決めて皆裏返る 2016.9.9
秋風を涼し嬉しと思へども早やも想へり次に来る風 2016.9.10
晩夏光纏ひ出で航く快速船去りゆく夏を追ひかけて行く(博多港) 2016.9.16
父母の墓を洗ふも嘆かるる虚しかりかり後のちの孝行(彼岸) 2016.9.24
(父母の墓を洗ふも嘆かるる虚しと思ふ後の孝行)
晩夏光浴びて飛び立つ白鷺の広げし翼眼に残る(追加) 2016.9.25
秋風に攫はれゆくか乗りゆくかコスモス離れ渓へ飛ぶ蝶(訂正) 2016.9.27
(秋風に飛ばされゆくか乗りゆくか深き谷間を渡る蝶あり)
上り来て帽子を脱げば下りてくる青き空ありコスモスの丘(しわわせの丘)2016.9.28
上り来て帽子投げだす癖今も遠く海見ゆコスモスの丘
曼珠沙華誰が供へしか道の辺の石に見まがう野仏の前 2016.10.1
持ち古りし傘頼もしく差し行けど心を濡らす秋の雨かな(旧作再考) 2016.10.7
曼珠沙華咲くこの道や行き行けば至り着くかに遠きふる里 2016.10.8
コスモスに蝶寄らしめて丘さやか豊後の富士の近づきて見ゆ 2016.10.10
秋晴れの丘に登れば由布さやか峰の中腹過ぎてゆく雲 2016.10.13
この道やこれより先は連れ無くて独り落ち葉を踏みしめてゆく(所思) 2016.10.14
川中の岩に佇む白鷺の飽かず眺むや己が水影 2016.10.16
玻璃窓を埋め尽くせる鱗雲都会の秋は空にぞ知らる(県図書館) 2016.10.18
いたづらに独りかき混ぜ飲み干しし珈琲カップに残る虚無感(夫婦喧嘩)2016.10.21
日々見遣る由布の眺めの飽きるなし纏へる雲の衣変われば(由布3題)2016.10.24
窓の外見遣ればをかし由布の峰笠のごとくに雲を被れる
暮れてゆく夕焼け空に浮かび出づ今日の名残りのモノクロの由布
銀杏散るなかを去りゆき遠ざかる人慕はしき並木道かな 2016.10.25
すれ違ふ人見知らねど慕はしき朧月夜の土手の道かな(旧作推敲) 2016.10.26
秋風に吹き飛ばされてゆく蝶の哀れなるかな行方も知れず 2016.10.27
ゆく秋の海の寂しさ思ふかな眺めてをれど船現れず(田ノ浦ビーチ) 2016.10.30
日翳れば波音高き秋の海季節の巡り急げるごとし(追加)
川淀に日に日に増えてゆく鴨に近づく冬の速さ知らるる(七瀬川) 2016.11.1
冬来たることの確かさ由布が峰の纏へる雲の厚さまされる(炬燵を入れる)2016.11.2
コスモスは優しく咲けど慰まぬ世を憤り上り来し丘 2016.11.3
(コスモスは優しく咲けど慰まぬ憤りもて上り来し丘)
そのかみの阿蘇の煙は今日もかも一人の吾の杖立てて見る(懐旧津田夫妻)2016.11.7
天高く阿蘇の五岳の隠れなし帽子を脱ぎて眺む人あり(旧作津田先生)
吾よりもモダンな形なりの案山子立つ顔はへのへのもへ字なれども(案山子祭り)2016.11.10
秋風に子らが飛ばせるシャボン玉毀れやすけど次々に出づ(公園にて) 2016.11.12
校庭で遊べる児らの高き声風に乗りくるコスモスの丘 2016.11.13
秋雨や草木を濡らし地を濡らしもっとも人の心を濡らす(旧作微訂正) 2016.11.14
秋雨や傘頼もしく差しゆけど己が心の濡るによしなし
止みぬれば山の紅葉もみぢは勝るらむ晴るるを待たる晩秋おそあきの雨
川中の小岩に立てる白鷺の見つめて久し己が水影(再考) 2016.11.17
秋雨の晴れゆく雲の間より光のさして照る山もみじ 2016.11.19
(秋の雨止みて晴れゆく雲間より現れ出でし山の装ふ)
ため池に俄かに増えて老ひらくの目を楽します鴨の数かな(高尾池公園)2016.11.20
(鴨の数俄かに増へて老ひらくの目を楽します土手の道かな)
冬の雲重く圧する大屋根に押し合ふごとく鳩の群れゐる(歴史資料館) 2016.11.21
戯れに蹴上げてみれば吾が命輝くごとし銀杏の落ち葉 2016.11.22
(戯れに銀杏落ち葉を蹴上ぐれば老ひの命の輝くごとし)
禅寺の庭の紅葉を観てをれば散るを楽しむごとく思はる(少林寺) 2016.11.26
訪ね来て暫し浮世を忘れんと眺むる庭の夕紅葉かな
分け入りて遭ふ人も無き森の路落ち葉踏む音耳につきくる(公園の森) 2016.11.27
手にすれば黄金のごとく輝きぬ拾ふ女ひとある銀杏の落ち葉 2016.11.28