短歌39
帽子取り軽く汗拭き佇めば薔薇の苑吹く初夏の風(追加)
六月の遠山並みを見渡せば夏の雲湧く郷くにの方角 2016.6.14
一雷雨過ぎたる後のグランドを蟻群がりて蝶の羽曳く 2016.6.15
(一雷雨過ぎたる後のグランドを蟻群がりて蝶を運べる)
由布が峰を俄かに包む雲湧いてビル屋上に旗のはためく 2016.6.19
この頃の心の憂さも流すなり渦巻き流る五月雨の川 2016.6.20
拝むより会ひに来たると言ふべきか蓮はちすの里の大日如来(臼杵石仏)16.6.24
雨上がり霧立のぼる山肌を龍のごとくに昇る雲あり 2016.6.29
人の世のせこき計らひ忘れよと溢れ流るる五月雨の川
帰りたる子に食はせんと籠に盛る故郷の枇杷の黄金色かな(旧作・微訂正)
朝曇り今日のひと日の思はるるどこかで鳩のくぐもりの声 2016.7.6
雨上がり傘畳まずに回し行く若き女ひとあり紫陽花の道(追加)
梅雨明けしことの確かさ見上ぐれば飛行機雲の伸びてゆく空
雨に濡れネオンの映るアスファルト都会の隅に吾が子訪ぬる(博多)2016.7.8
盆に盛る枇杷食ひをれば目に見ゆる田植え終へたる郷くに人の顔 2016.7.10
アジサイの花も大方枯れゆくに戻り梅雨とて続く雨かな 2016.7.13
豊後富士在りし処にしかとあり梅雨明けたりと窓を開くれば 2016.7.18
梅雨明けしことの確かさヘリコプター空飛ぶ鳥を追ひ払ひ飛ぶ
梅雨明けて青く広がる大空をしばらく見をり電線の鳩
校庭の隅に枝張る大き楠杖つき寄ればいよゝ逞し(母校) 2016.7.22
遠き旅終えて汗拭き佇めば駅前噴水虹をかけをり(旧大分駅懐古) 2016.7.24
朝顔の葉に置く露の束の間の宿りと思ふ所詮この世も(所感) 2016.7.26
目覚むれば朝より繁き蝉の声今日の一日の暑さ思へり(全国的梅雨明け)16.7.29
梅雨明くる窓を開くれば久方の朝日を浴びて子等の急げる
抜かれゆくすずろ歩きの土手の道朝の挨拶交はす泰けさ
海原に白き傷つけ冲目指すモーターボート眼まなこに熱し(田ノ浦ビーチ)
花火観る吾が風流や群衆に混じり団扇を使ひをるかな(七瀬の火群祭り)16.8.1
(花火待つ暇の暑さや群衆とともに団扇を使ひつつをり)
花火観る心はいとも華やげど後のちの寂しさ去年こぞに勝れり
花火終え暫し虚しき夜の空にまた現れし月と星かな(旧作)
朝の土手若き自転車走り行く旭に向かふ命逞し 2016.8.3
(朝の土手若き自転車飛ばし行く旭に向かふ命逞し)
蓮の葉に一粒残る朝の露大日如来なかに在まします 2018.8.5
入道雲じっと見下ろす地上より鳩舞ひ上がるヒロシマの空 2016.8.6
爆心地いまは憩ひの公園となりて噴水虹をかけをり(平和公園) 2016.8.9
道の辺の椋の大樹の濃き木陰いまは杖ひく吾あを憩はしむ(樹齢500年)8.11
父母の生きし証の淋しけれ名のみ刻まれ墳墓に眠る(墓参) 2016.8.12
早起きは得と語りし亡き母の教え肯うべなふ朝顔の花 2016.8.13
英霊に捧ぐる思ひ違はねど戦の記憶薄れゆくかな 2016.8.15
南風に髪吹かれ佇つ若者の沖を見詰むる眼ぞ燃ゆる(田ノ浦幻想)16.8.20 伊東マンショ頌
熱き海眺めてれをれば波間より南蛮船の現るるかに
月の出を待宵草のひっそりと草葉の陰に昼を眠れる(七瀬の土手)2016.8.25
夕風に草葉の戦ぐ土手道を自転車漕げば秋ぞ知らるる 2016.8.26
遠花火静かに開く屋根の上遅れて届く音のをかしき 2016.8.27
吹き込んで暦を捲る秋の風今年も残り少なくなりし 2016.8.29
晩夏光浴びて浅瀬に佇つ鷺の水面に映る影の秋色(七瀬川) 2016.8.30
秋風の厭はしきかな吹き込んで白髪頭をいたづらに撫づ 2016.9.2
(秋風の厭はしきかな吹き込んで禿の頭を悪戯に撫づ 自嘲シゲハゲ)
秋告げる速達便と思ふかな落ち葉一枚掌に受く(追加)
目瞑れば吾に残れる人生の白紙のページ捲る秋風 2016.9.6
秋風の厭はしきかなぽっかりと心に空ける穴に吹き込む 2016.9.9