短歌38
初蝶を見し昂ぶりを目つぶりて思ひ出しをり夢路の前に(訂正)
石垣や城荒れたるも武士もののふの心もて観る山桜花(岡城址) 2016.3.20
(石垣や城失ふも武士の心もて観る山桜花)
シャボン玉飛ばしトラック運転手昼を憩へりタンポポの土手(嘱目) 2016.3.23
春浅く人の影なき砂浜に一筋続く足の跡あり(田ノ浦ビーチ) 2016.3.25
春霞薄くかかれる昼下がり菜の花の中列車過行く
走り来し自転車一台遠ざかるほどに輝く春風の土手 2016.3.26
わが庭の桜咲きしと妻の声朝の障子を隔て聞こゆる 2016.3.28
山を恋ふ山の子なればわが目には咲くを誇れる山桜花(霊山) 2016.3.31
乳母車春を見せんと押しゆくに子は眠りをり菜の花の道(訂正)
人妻の出でゆくときに傘を差す仕草ゆかしき花の雨かな 2016.4.2
花の雨そぼ降るなかを戻りきて傘を畳めば落つる花びら(微訂正)
戻るなき若き日思ひ盃を満たし飲み干す散る花の下 2016.4.4
風誘ふ花に紛れて蝶一羽飛ぶは現うつつか幻か 2016.4.5
菜の花と彼方に霞む由布の峰豊後の春ぞ今ははたけなは(微訂正)2016.4.6
(山桜ああ山桜山桜豊後の国の春のおとづれ)
春灯下古き代の歌読みをればいにしへ人の歎き伝はる 2016.4.11
春一日庭を観をればおもしろし椿咥えて鳥の飛び立つ 2016.4.17
永き日を慰まんとて手に取りし白秋歌集慰めかねつ
(永き日を慰まんとて手に取ればいよゝもの憂きマンドリンかな)
ゆく水に落ちて流るる花椿即ち知れぬ行方なるかな 2016.4.18
天の為すゆゆしき仕業嘆けども為すすべもなき人の小ささ(4.16 熊本大震災)
春もはや名残となりて暮れなづむ白壁の塀藤の花垂る 2016.4.22
縺れつつ草の上飛ぶ蝶々を荒しと思ふ春の終はりは
ふる里や景色変はるも揚げ雲雀昔ながらの空に囀る 2016.4.23
(ふる里の眺め変はるも揚げ雲雀昔ながらの空に囀る)
誰にやるともなしに摘みためし昔恋しきクローバの花 2016.4.25
やすやすと塀を越えくる蝶々を猛しと思ふ春の終わりは 2016.4.26
夏来たることの確かさ塀越えてくる蝶々の落とす影濃き 2016.4.29
ゆく春の宿場の址の石畳己が影連れ歩くひそけさ(今市)
急ぐべき歩みならねど花散りて何か急かるる葉桜の道 2016.4.30
草若葉運動靴を履き行けば蝶の飛び来て吾を誘ふ(ハイキングコース)2016.5.4
(草若葉運動靴を履き行けば誘ふごとく前を蝶飛ぶ)
里若葉風を孕んで鯉幟元気よきかな屋根屋根の上(子どもの日) 2016.5.5
春深き窓に浮かべる白き雲心の中を流れゆくかな(追加) 2016.5.8
頬杖をつき眺むれば窓の雲母に見えきて父にも見えて(母の日)
ふる里や青葉若葉の山々を統べて豊後の富士の聳ゆる 2016.5.13
(峠路や青葉若葉の山々を統べて豊後の富士の聳ゆる)
あやめ池雨を湛へて静かなりアメンボのゐて乱す花影 2016.5.15
(あやめ池雨を湛へて豊かなり静かに迫る水の夕暮れ)
寝ころべば丘の斜面の懐かしく帽子を置けば留まる蝶かな(日記)
風五月自転車少女おとめの髪吹かれ行くを見てをり隠れゆくまで 2016.5.17
窓若葉豊後の富士を遠く見て飲む珈琲の一杯の味
見渡せば青葉青葉の吾が故郷西も東も北も南も 2016.5.22
薔薇咲けば苑の噴水勢ひて季節の巡り祝ひ虹架く 2016.5.25
天空のまたは見られぬショーとして火星赤々窓より見ゆる(スーパーマース)2016.6.1
髪吹かれ若き女の見遣る先白き帆の航ゆく初夏の海(田ノ浦) 2016.6.2
あやめ池覗けば映る己が顔見つめてをれば父の見えくる 2016.6.6
時鳥鳴くや五月の田植えどきふる里人の姿目に見ゆ 2016.6.9
雨の日の部屋に籠れるつれづれに愛でて眺むる窓の紫陽花 2016.6.12
ふる里はすでに他郷や不如帰しば鳴く声を徒に聞きをり 2016.6.13
(ふる里はすでに他郷ぞ不如帰しば鳴く声を徒に聞くかな)