詩119

   
        2016.10.5
秋晴れの
丘にのぼって
帽子を脱ぐと
青い空が
下りてくる
風に揺れるコスモスの花
遠くに見える海
丘の斜面に座し
いつものように
帽子を投げだすと
青い海が
近づいてくる


   その2
        2016.10.14
ポケットに
缶コーヒーを
忍ばせて
ひとりやって来た丘

コスモスが咲き
遠くに海が見える
耳を澄ますと
かすかに波の音も聞こえてくる

帽子を投げだして座り
ポケットから缶コーヒーを取り出し
ゆっくり飲めば
近づいて来る青い海──

しばし 静かな午後のひと時を過ごし
飲み干した缶コーヒーの
空き缶を手に握りしめ
丘を後にし

坂を下りつつ ふり向けば
丘の上
コスモスの花は
しきりに手を振る 


反歌
上り来て見遣れば遠く海見ゆる
   誰が名づけしかしあわせの丘
  

    スケッチ
               2016.10.24
風に揺れる
コスモスの花の前を
日傘をさした若い女性が通り過ぎて行く
足取りも軽く
これから進む人生の遠い道のりも
やすやすと気楽に歩き続けていくように

風に揺れる
コスモスの花の前を
日傘をさした中年の婦人が過ぎて行く
少し重い足取りで
これまで来た人生の辛い道のりを
まだまだ先へと歩き続けていくように

風に揺れる
コスモスの花の前を
人生の縮図のように
ふたりの女性が過ぎて行った


  それであれば充分
           2016.11.7
晩秋の並木道
──それは人生の並木道
わたしは、いま
敷き詰めた落ち葉の
絨毯のうえをひとり歩いている
そう
わたしの人生の旅も
終わりに近づいてきている
わたしの行く手にはすでに殿堂が見えている
──それは わたしにだけ見える美しい殿堂
旅はそこで終わり
多分わたしは永遠の安らぎを得ることになる
わたしの旅がどうであったのか
もう わたしは問うことはない
わたしの人生の旅の記録は
わたしが作り続けた
拙い詩
そして
わたしの為の墓は必要でない
わたしの詩がそれであれば充分

    
わたしの墓はわたしのことばであれば充分
                      寺山修司
    2016.11.18 再訂正

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