短歌21
前のページへ
春雨のなかを帰りて傘畳む妻の仕草のふと艶めかし(追加)
春霞街を隠してのどかなり丘の上にて蝶と親しむ(しあわせの丘)    11.4.1
春風のなか自転車を漕ぎ急ぐ少女の髪に光るヘアピン(髪飾りピン)
若人の競ひ漕ぎ行く自転車の車輪の光る春風の土手
公園の午後のベンチの安けさよ蝶と親しむ待つ人もなく       11.4.2
人目には今を盛りの桜花わが眺めには軈て散る花(公園の桜満開)  11.4.4 
桜花早も一花の散りゆけり今を盛りと思ふ眺めに
青信号渡る人なき昼下がり渡る蝶あり恐れ恐れて           11.4.5
何処よりか落花一片飛び来たり植木にとまる蝶のごとくに
ヘルメット脱いで工夫の憩ひをり傍らに咲くタンポポの花       11.4.6
咲き満ちてこれより落ちてゆく椿落つる速さに春は過ぎ行く     11.4.10
チューリップ観て目つぶれば風車見ゆ即ち暫し目をば瞑れる    11.4.11
観てをれば蝶来てとまるチューリップふと思い出す若き日のキス
年たけていよいよ春の惜しまるる落花一片手のひらに受け     11.4.15
散りゆきし数多あまたの命ふと思ふ落花一片手のひらに受け(鎮魂)
咲くよりも落つる椿となりにけり掃かれずある庭土の上
ストローを牛乳パックにさし込みて飲みつつ思ふ春の深きを     11.4.16
花椿落ちたる外は事もなし猫の欠伸のうつる縁先           11.4.18     遅れ咲く牡丹桜のよかりける華やぎ過ぎしあとの安けさ(隠寮)   11.4.20   
空青く子どもに還る丘の径天道虫の吾を呼びとむ(しあわせの丘)
花椿落ちたる外は事もなき庭を眺めて一日暮らしつ(改訂)     11.4.25
春の夕街の灯しの増えゆくに引くをためらふ窓のカーテン      
春惜しむ花と思へり藤の房たそがれ近く色おぼろめく
小さき児は棒もて池を乱しをり水面に映る初夏の雲          11.4.30
鯉幟風を飲み込み元気よし復興誓ふ五月の空に            11.5.1. 
老ひの身に親しと思ふ藤古木静かに垂るる千の花房(西寒田神社)  11.5.6
女名の表札をかしこの家の塀より垂るる白藤の花
藤の房静かに垂れて昼近し大き蝶きて巡り飛ぶかな(陣屋の村)   11.5.7
藤の房静かに垂れて昼深し太き蜂ゐて羽音奏づる
藤の房垂れて気だるき昼下がり蜂の羽風に花の散るかな
里若葉寺の上のも寺があり睦むがごとく競ふがごとく         11.5.10
グランドをボール追ひかけ走る児らのシャツの汚れの眼につく五月
万緑やこれより下る峠道いよいようねる豊後への道          11.5.16
暮れてなほあやめの里の水車止まず巡るを月の照らせる改訂緒方町)11.6.1
万緑やああ万緑や病棟の窓より見れば天地勢ふ(医大西病棟7階)   11.6.3
何時しかに夏の流れと川なりて豊葦原をくねり流るる(七瀬川)  
乱暴に傘を畳みて傘立てに突き刺す妻や梅雨に入りけり(梅雨入り11.6.5
万緑や双眼鏡で眺むれば阿蘇の方位に見ゆる白煙         11.6.7
あやめ池若き女の覗きをりあやめの花と映るその顔         11.6.8
あやめ池雨を湛へて静かなりアメンボのゐて花影を乱す
雨に観る花とおもへば差す傘も軽し思ふ花菖蒲苑          11.6.14
雨晴れて心も晴れて渉るなりあやめの池に架かる八つ橋
このところ心に宿る鬱屈も流し去るなり五月雨の川         11.6.19
傘畳み雨の逃げゆく方見れば街を跨ぎて架かる虹あり       11.6.30
見上ぐれば吾を見下ろす入道雲次第に父に見えてくるかも    11.7.12
雨上がり傘を畳みて振り回す児が撒き散らす草の葉の露     11.7.16
       

次のページへ