短歌22
雨上がり燕飛び交ふ土手の道傘畳まずに園児ら帰る
夏の雲魔人のごとく湧き立つを屋根で見つむる鬼瓦かな 11.7.22
懐かしき小学校のグランドの向日葵の花顔あるごとし 11.7.25
大阿蘇の覗けば怖き噴火口あらぬ所にユリの花咲く(記憶より) 11.7.27
<南海の荒波寄する岬ばなあらぬ所にユリの花咲く(同)>
海の絵を掛けて眺めて今年また海に行かざる夏を過ごしぬ(デュフィの絵)11.8.3
夕風の渡る川面に波たちて涼しと思ふ蜩の声(七瀬の堰)
蚊遣香焚きつつ縁に腰掛けて団扇を使ふ余生よろしき
朝曇り朝より繁き蝉の声眼鏡を拭いて空を見上げる 11.8.6
色褪せし己が心の嘆かるる一輪飾る薔薇の赤さに(テーブル) 11.8.7
<色褪せし己が心の嘆かるる飾りて赤き一輪の薔薇>
世の中に楽しきことを求むれば馬鹿になるより楽しきはなし(花の下) 拾遺11.4.5
大方は車が運ぶ荒神輿笛や太鼓の音こそ変はらね(ふる里の祭り) 拾遺11.4.23
秋風のここちの良さよ帽子とり手をポケットに髪吹かれ行く 11.8.16
味気なく早く目覚むる老ひの眼に映りてすがし朝顔の花 11.8.17
蝶一羽風に驚き飛び立ちちぬ目にはさやかに秋は見えねど 11・8.25
蝶一羽窓に寄りきて吹かれ去る季節の巡り告げ知らすごと
つれづれに眺めて寂し庭の景落葉一枚落つるも大事 11.8.29
ひそやかに森の泉に影落し手折る人なき白百合の花(男池)
白き鷺太陽めざし羽ばたきて光をまとひ飛びてゆくかな 11.9.3
秋風に飛ばされゆくか乗りゆくか蝶々一羽谷を越え行く 11.9.5
今朝の由布雲の衣を脱ぎ捨てて霞のベール薄く纏ふも 11.9.6
赤とんぼ出でて変はりし空の色暑さはいまだ草に残れど
赤とんぼ舞ひ飛ぶ空となりにけり遠くの雲に暑さ退け
暮れてゆく姿麗し由布の峰夕焼け雲を一つ離さず 11.9.7
夏終へし空に一筋尾を引ける飛行機雲の白く輝く 11.9.11
見え隠れして現れぬ今日の月くもる心に空も曇れる(名月) 11.9.12
影踏みて遊びしことも思ひ出づ眺めて飽かぬ十五夜の月(夜半雲晴れる)
開け放つままに入りくる秋の風淋しき窓と思ふこの頃 11.9.13
吾が母の痛む体のこと聞けば心の痛み耐へがたきかな
夏終る空を眺めておもしろし上ゆく雲と下ゆく雲と 11.9.15
母見舞ひ帰る道々見上ぐれば夕焼け空の血の色に見ゆ(病重し) 11.9.18
をりたてば芙蓉の花も散り果てて落ち葉増えしと思ふ庭先 11.9.20
秋の蝶わが行く前に現れてしばし舞飛ぶ幻のごと
ふるさとの丘に上りて見下ろせば小川の流れ月日の流れ 11.9.25
老ひの目に映り流るる秋の雲眼閉づるも消えず流るる 11.9.26
曼珠沙華咲けば慕はし古さとの段々畠落日のころ 11.9.28
こっそりと秋は来てをり一二枚庭の植木の葉の色づける(追加)
晴れゐても曇るも同じ秋の空母見舞ふ日のわが心には(病状悪化) 11.10.7
侘しげに人に近づく秋の蝶暫し連れ添ふ吾も独りぞ 11.10.11
鯱の逆立つ寺の屋根の上白き雲ゆく里の秋かな(白雲山念相寺)
コスモスなど優しく咲けど慰まぬ母を見舞ひて帰りゆく道 11.10.13
由布の峰ねに分厚き雲のかかる日に空を飛びくる初鴨を見し(初鴨)
ポッキリと折れてをかしき曼珠沙華抱くほど採れどいとど淋しき(追加)
命二つ互ひに強く結ぼれて母のあと追ひ父も旅立つ(母18日、父21日逝去)11.10.23
父母の煙けぶりとなりて上りたる空見上ぐれば雲に顔ある 11.10.30