短歌17
今日終ふることを急がぬ春の日のその暮れ際の華やぎ長し 10.3.22
咲き満ちて今を盛りの桜花愛でて酔ゑひなん散るは思はず(花見)
永き日を愁ひ頬杖つきをれば白雲悠々窓の空しき(春愁) 10.3.26
河原に子どもら二人石投げて春の流れを確かめてをり 10.3.27
寝転んで子どもに還る草の上眺めて飽かぬ空と雲かな
皇国もいまは幻花吹雪杖つく父の眼の前を舞ふ 10.3.30
咲けば散る花の習ひと知りながら落花一片散るを嘆ける
花の下ひとりの弁当食べ終はり落花を入れて蓋をするかな 10.3.31
子ども等が蹴りて遊べるボール逸れ転がりゆくや蒲公英のなか
散る花を日の照るなかに見上ぐれば儚く散れる花と思はず
散る花を空の青さのなかに観る吾が子はいまだ愁ひ解さず 10.4.1
風さそふ花びら数多散りゆきて蝶のごとくに飛びにけるかも
花の雨降りこめられてガラス窓なでて拭きをり蝶の形に 10.4.9
傘の中孤絶の吾とふと思ふ独りまた良し春雨の道 10.4.10
バンパーに留りて憩ふ蝶のあり外輪山に車停めれば(改訂)
花散りてうかれ心の鎮まればネクタイ締めて出でんとぞ思もふ 10.4.13
一巡りしてきて憩ふ薔薇の園いま日輪は噴水の上(花公園)
ゆく春の花となりたるチューリップ蝶の留りて長く憩へる
立ち止まり長く眺むる人のあり白き雲浮く春の川面を(拾遺) 10.4.20
花椿あまた落ちたる処過ぎ歩み俄に重たくなれり(拾遺)
菜の花の彼方に見ゆる青き海いつもの時刻白き船航く(訂正)
草に寝て眼鏡を外しまた掛けて五月の晴れし空を愉しむ
人訪はぬこの山寺の寂しけど仏とともにゐれば安けし(三国境地福寺) 10.4.30
藤の花豊かに垂れて静かなり夕映え残る白壁の塀(今市)
垂れ具合愛でて眺むる藤の花怖き蜂来て廻り飛ぶかな(陣屋の杜) 10.5.4
藤の花垂れて気だるき昼下がり太き蜂ゐて羽音奏づる
いつしかに蒲公英の花絮となり仰げば高き空のあるかな
靴捨てて歩けば土の柔らかく裸足楽しき蒲公英の庭
草若葉運動靴を履きゆけば白き蝶々の前を飛びゆく 10.5.18
野に山に皐月のひかり満ち溢れ遠く近くで鳴く時鳥(庄内久住ライン展望所)
五月尽白き花咲く土手の道自転車少女髪吹かれ行く 10・5.31 吊橋の上より見れば渓深く処明かさぬ郭公の声
薔薇の花飾れる妻の誕生日己が祝ひに己が剪りきて(5月26日)
庭の薔薇剪られて今は壺にあり即ち妻の「祝誕生日」
朝からの青葉曇りという曇り少し晴れしと窓を開けをり 10.6.4
この頃の青葉曇りといふ曇り窓を開くれば蝶の舞ひ込む
船一艘水平線を越えゆくを飽かず眺むる初夏の浜(田ノ浦ビーチ) 10.6.11
南風や沖航ゆく船を見てをれば水平線の彼方見ゑくる
行く先を白きてふてふの飛びゆくを魂たまかと思ふ納骨の道(叔父四十九日)10.6.13
梅雨すでに傘頼もしく差しゆけば見知らぬ犬の雨に濡れ来る(梅雨入り) 10.6.14
晴れも好し雨もまた好し花あやめ八つ橋渡る傘の彩いろどり 10.6.18
世の中を少し離るる思ひあり八つ橋渡る花菖蒲苑
雨に観る花と思へり花あやめ傘さす人の長く佇む
先急ぐこともなければ行き帰り歩み緩める紫陽花の道 10.6.22
日一日雨に打たるる花あやめ濡れて艶めく花と思へり 10.6.24
梅雨深く雨を溜めたるあやめ池月の浮かぶや花影の間に